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【実録】悪徳マンション販売勧誘員は、婚活アプリからこうしてやってきた!AI婚活、コロナ禍ゆえの危険性

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

婚活アプリが、悪徳な勧誘者たちの草刈り場に

婚活・マッチングアプリは純粋に結婚や出会いを求めている人だけが利用しているのではありません。悪徳な勧誘者たちの草刈り場にもなっています。

コロナ禍でアプリを利用する人が急増しているなか、恋愛感情を抱かせたところで、騙そうとする人たちが続々、現れてきています。

昨年の秋、婚活アプリで40代女性は、30代の男性と出会いました。プロフィールには、「年収が1500万円以上」と書かれています。

初めて会ったその日に、男は「美容や人材関係の会社の会長をしていて、1億円の資産があるんだ」と言い、彼女を都市部のマンションの前まで連れて行きます。

そして、自慢げに「ここが自分の家だ」と話します。

彼女が「部屋を見たい」と言いますが、男は「今は、だめだ」と拒否します。この時は、何か理由があるのだろうと思い、彼女は一歩引きました。

デートを重ねて3回目の時でした。

男は「家賃を払うのはもったいないから、マンションを購入した方がいいよ」と切り出します。おそらくそれまでのデートで、彼女の年収がそこそこあり、賃貸マンションに住んでいることを把握したためでしょう。

特に、彼女がマンションを買いたいとも言っていないのに、男は「知り合いに不動産屋の社長がいるから、紹介するよ」と電話をかけて、40歳位の男性社長を強引に連れてきました。デートをしているなかでしたので、彼女はむげに断ることもできずに話を聞くことになります。

不動産の社長を名乗る男は、間取り図と値段の書かれたチラシを見せながら、話を始めました。この時は、マンションの説明だけで終わりましたが、なんと4回目のデート中にも、この社長がどこからともなく現れてきました。

「こんにちは。今日は、物件を案内しますから見てみましょうよ」

 男とともに車へ乗せられて現地に連れて行かれます。

そこは、昭和60年頃に建てられた中古の3LDKのマンションでした。

内装はリフォームされていて綺麗でしたが、築年数が古いこともあって、なんとも昭和の臭いのするマンションで、あまり彼女の好みではありません。

それにも関わらず、不動産社長の男は「このマンションは1500万円の価格です。どうでしょうか」と勧めてきます。ついには「ローンを組みたいので、次回までに源泉徴収票を出してくださいね」と話してきます。

デートしていた彼も「ぜひ買おうよ」と勧め「もし契約をしてくれたら家具や家電を誕生日プレゼントで買ってあげる。まずはローンが通るかどうかの審査を受けてみよう!」と執拗に迫ります。

何とか断って帰った彼女でしたが、その後も、男からはしつこく「君に会いたい。会いたい」と言われます。断り切れなくなり、やむなく会ってみると、またもや不動産の男を連れてきました。そして「あのマンションは、住むのにはいいですねえ」などと言ってきます。

この時の心境について、「私、マンションを買いたいなんて一言も言ってないんですよ。それにも関わらず、マンションに連れて行かれて、月額6万円のローンで買えというような話されて、頭に来ました。これは、もはやデートではなく、2人がかりのマンション販売の営業ではないですか!」と彼女は憤ります。

男らは、執拗にマンションの購入を勧めてきましたが、彼女は応じることなく、申し込み用紙をさっと手に取り「必要があれば、家に帰ってから、書いて連絡します」と言って、その場を後にしました。

男と別れた瞬間に、自分のメッセージアプリから男をブロックしました。そして婚活アプリにもこの件を通報すると、すぐに強制退会されました。間髪入れずのサイト側の対応に、「もしかすると、他の女性にも同様な行為をしていて通報されていたのではないか」といぶかしげな表情を浮かべます。

彼女は幾つかのマッチングアプリにも登録していますが、やはり同じ顔写真の男を他のサイトでも見かけたそうです。こうしたところでは、横の連携がないために、今も男が同様な勧誘行為をしている恐れが十分にあります。

サブリース契約の勧誘を持ち掛けられる

その後も、彼女は真剣に結婚を考えて、婚活・マッチングアプリを利用していると、年齢の近い男性と出会いました。そして飲みに行ったり、野外の食事イベントに参加するなどしてデートを重ねていた、ある日のことです。

男性が「発電した電気を電力会社に買い取ってもらえる太陽光発電事業に投資をしてはどうかな」という話をしてきました。彼女が若干、興味を示すような表情をすると、「知り合いの不動産投資の社長さんがいて、紹介するから、話を聞きに行こうよ」と提案してきます。そしてその会社に行くことになりました。

しかしその社長は忙しいようで、同い年くらい社員を紹介されました。

「こんにちは」

その顔をよくみると、以前にこの男性に招待されていったで野外の食事イベントで会ったことがある人でした。

すでに、その時点で今回の勧誘が用意周到に仕込まれていたようです。

社員が紹介してきたのは、築35年ほどの中古マンションでした。

「価格は2900万円ほどで、35年のローンになります」と言います。そしてサブリース契約を持ち掛けます。

「購入した賃貸マンションを、不動産会社が借り上げて、入居者へ貸す仕組みなので、安定した賃料が得られます」

すると、横にいる彼も大きく頷きます。

「不動産投資は老後にお勧めなんですよ。僕らの世代は年金を貰えないから、マンションを購入して、それを誰かに貸すことで、不労所得をえる。これをしておいた方が将来のために絶対に良い。ぜひ契約してはいかがですか?」

しかし彼女が「今日のところはちょっと」と、やんわりと断ると「では明日、お電話で説明を致しますね」と言ってきます。

翌日、PDFの形で、契約に向けての資料が送られてきた後に、電話がかかってきました。

社員の話を彼女が静かに頷きながら話を聞いていると、「では、これで進めますね」と、どんどん購入の方向に話を進めようとします。強引さを感じた彼女は、「ちょっと考えさせてください」と一端、電話を切りました。

相手のペースに巻き込まれそうな時には、受話器を置いて、話を断ち切る。

これは大事なことです。

彼女がネットで調べると、同じ物件が1500万円ほどで売りに出されていました。

「リノベーションの代金が1400万円も上乗せされるものだろうか?」という疑問がわいてきました。

すでに、私は最初のマンション勧誘の話は聞き終えていましたが、再度、彼女から別な男から「サブリース契約の勧誘を受けた」ことを伝えられました。

サブリース契約を巡っては、これまで様々なトラブルが発生しています。

そこで彼女には、「サブリース契約に関するトラブルにご注意ください!」(消費者庁)

の注意喚起情報を見るように促しました。

そして、もし本気で契約を考えているのならば、「賃貸住宅(サブリース方式)の契約を検討する方へ」(消費者庁)も参照すると良いとも伝えました。

大きな買い物をする時には、色んな情報を集めてから考えることが大事です。

その後、彼女は以前から保険などの相談をしているファイナンシャルプランナーや、不動産投資をしている会社にも相談をすると、「こんな勧誘での契約はありえないし、金額設定もおかしい」「購入は控えた方が良い」とのアドバイスを受けて、彼女は断りました。

これまで婚活・マッチングアプリを通じての詐欺を中心に記事にしてきましたが、悪徳な勧誘を行う人たちも数多く存在していているのが実情です。

しかも、出会ってすぐではなく、何度もデートを重ねて、相手の心を近づけたところで、勧誘の牙をむき出すといった出口が共通しています。

彼女は周りに相談できる人も多くおり、冷静に対処できたらよいものの、この手口で騙されてしまう人は、今後、さらに増える恐れもあります。

真面目に婚活している人ほど、騙される。AI婚活にも騙しの魔の手が忍び寄る恐れあり

この他にも、20代女性がマッチングアプリで40代の男性に出会いました。ライフプランニングの仕事をしているという男性は、実は「保険会社でも働いていて、いつもトップの成績をあげている」と言います。

そして会ったその日に、「ぜひ僕のプレゼンを聞いてほしい」と言われて、事務所に連れて行かれて、保険の勧誘を受けました。

彼女は「彼のルックスは悪くなく、仕事もできる人で、将来の旦那さんになる人かもしれない」と思い、誘いを拒否できなかったと話します。

真面目に婚活している人ほど、プロフィールに正確に個人情報を書き、メッセージや電話などのやりとりでも正直に自分の事情を伝えてしまいがちです。それだけに、悪徳な勧誘者の格好の獲物になってしまうのです。

AI婚活なども勧めらていますが、こうした悪意ある者たちは婚活している異性の目に触れやすく、出会いやすいような嘘のプロフィールを書いてくことも充分に考えられます。

今や、婚活・マッチングアプリは悪徳な勧誘者たちの草刈り場となっているのです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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