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高島屋をかたる偽サイトに要注意!SNS広告をクリックすると、カード情報詐取ではない意外な手口が!?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
知人のもとに出てきたSNSでの広告

「この手の高島屋の免税店が閉店するという広告が、最近よく出てくるんですよね」

知人に、大手SNSを閲覧している時に出てきたという通販サイトの広告を見せてもらいました。

「高島屋傘下の免税店はコロナウイルスの影響で、全体売り上げは去年より90%も落ちており、東京県内(原文ママ)の免税店を閉店することを発表しました」とあり、在庫商品のスーパーセールを行うというのです。

コロナ禍により、デパートの売り上げが減少しているというニュースはよく耳にしますので、そうしたセールもあるかもしれないと思わせる文面になっています。

SNSに出てきた広告
SNSに出てきた広告

「今すぐ注文するにはクリックしてください!」とあります。大手のSNSに出てきた広告とはいえ、こうした閉店を謳い文句にした偽通販サイトの可能性は十分にありますので、確かめてみることにしました。

「これまでのようなクレジットカードの情報の抜き取るのが目的なのだろう」と思いながら、先に進んでみました。

しかし意外にも、この二つが目的ではなかったことが、後にわかります。

案外、この手口でだまされてしまう人もいるかもしれません。

サイトを開くと出てくるのが、高島屋のロゴと「2個限定、期間スペシャルオファー」の文字です。

通販サイトに出てきた高島屋のロゴとセール品の写真
通販サイトに出てきた高島屋のロゴとセール品の写真

高島屋のお墨付きを得ているかのような通販サイトのつくりになっており、しかも2個しか注文させないようにしています。

このサイトの真偽はどうなのでしょうか。

高島屋の公式HPからこの通販サイトについて、問い合わせをしてみました。しかしながら返事がくるまでには、時間がかかります。

そこで筆者の方でも、サイトを隅々までみてみることにしました。

この販売サイトでは、有名ブランドのバックや財布などの商品が格安で販売されています。

あるバッグには、307,780円の定価に線が引かれて、17,500円の値段がつけられています。そして「配送料は購入手続き時に計算されます」となっています。

230,700円の定価の財布は、13,500円と、かなり激安です。

激安を謳う通販サイト
激安を謳う通販サイト

偽通販サイトの特徴である「定価に線を引いて、激安価格を表示する」にあてはまりますので、かなり黒判定が濃くなってきました。

次に、この通販業者の所在地が、どこにあるかです。サイトをくまなく調べましたが、住所、電話番号は載っていませんでした。

連絡先はメールアドレスのみです。

メールでしか連絡が取れない。これもまた、危険なサイトの特徴です。

本来、特定商取引法に基づいて、代表者名、住所、電話番号を載せなくてはなりませんが、それがありません。ほぼ高島屋の名をかたった偽サイトとみて間違いないでしょう。

何を目的にした偽サイトなのでしょうか?

そこで、17,500円のバッグを注文する形で、購入手続きに進んでみました。

まず連絡先情報として、「Eメール」「氏名」「配送先住所」などの記入を求められます。

わざと書かずに先に進むと、さすがにエラーとなり、有効な情報を入れるように赤字で指示がなされます。

注文をクリックして出てきた連絡先の入力画面
注文をクリックして出てきた連絡先の入力画面

そこで、住所は番地まで、電話も適当な数字を入れて先に進みました。

すると、「支払い項目」の確認の画面が出てきます。

ここで、この偽通販サイトの狙いがわかりました。

支払い方法には「代金引換」とあります。

他の選択肢も出るのかと思って、クリックしてみましたが、他の項目は出てきません。

「代金引換」の項目しか選択できないようになっていたのです。

代金引換しかできない通販サイト
代金引換しかできない通販サイト

つまり、家にやってきた配送業者にお金を支払うことで、商品を受けとれる代金引換を使った手口と考えられます。

おそらくお金を払い商品を受けとって、包みをあけてみたら、それが偽ブランド品で「だまされた!」という結果になることでしょう。

今年7月6日から、法律が変わり、身に覚えのない商品が送り付けられても、即処分してよいことになりました。もちろん、お金を払う必要はありません。

しかし代金引換ですと、すでにお金を払っています。

これまでのこの種の手口をみても、もし商品の返金依頼をしようとしても、配送伝票に書かれた住所はたいがい噓で、電話番号にかけても通じません。

そもそもサイトにも所在地は載っていないのですから、連絡の取りようがなく、返金は極めて難しくなります。メールで「返品したい」の記載をして送っても無視されることでしょう。

さらなる懸念は、個人情報を知られてしまっていること

もっとも懸念しなくてはならないのは、記載してしまった住所やメールや電話番号が相手の詐欺業者に伝わっていることです。

これを知られることで、様々な詐欺メールやフィッシング詐欺のSMS(ショートメッセージ)が送られてきて、さらに、新たな注文していない商品が送り付けられ、料金請求をされることもあるかもしれません。

今、日本の税関では偽ブランド品とわかった大量の商品が処分されています。それゆえに、商品が届かないこともあるでしょう。

「でも、代金引換で、お金を払っていないから、大丈夫!」

このように思う方もいるかもしれませんが、そうではありません!

詐欺業者は商品を送ったことを盾にして、電話をかけてきたり、請求書などが送られてくる可能性もあるからです。

もしもの時に備えて、対策を考えておきましょう。

困ったときには「188」(消費者ホットライン)に相談です。

さて、高島屋から答えがありました。

このショッピングサイトは「弊社の運用するものではございません」とのことです。

これにて、偽サイトが確定しました。

高島屋の公式アカウントからも「偽アカウントにご注意ください」との注意がなされていますので、ぜひとも参考にして気をつけて頂ければと思います。

2個しか注文させないことにも裏がある

厄介なことに、代金引換となると、注文して商品が送られてくるまでに一定の時間がかかりますので、広告を掲載する大手のSNSの側でも、ここが偽サイトであるかの判別がすぐにできないことになります。

詐欺行為だとバレるまでのタイムラグを使い、悪徳業者は1件でも多くの注文を取り付けようとします。

しかも、2個だけしか注文させません。

この辺りも巧妙で、数十万円を超える高額な被害にならないため、泣き寝入りする人もいるでしょうから、被害の発覚が遅れがちになります。

それを狙ってのことでしょう。

その間に被害が広がってしまうことになります。

偽通販サイトのだましの手口は日々、巧妙になってきています。

今、この瞬間にも注文しようとしている人がいるかもしれませんので、いち早く記事にしてお伝えしました。

一人でも多くの人が被害に遭わないよう、今後も、その裏にあるカラクリを暴いていきたいと思います。

【10月5日・追記】

もう一点、注意喚起が抜けていましたので、追記致します。

代金引換の可能性以外にも、もうひとつ注意しなければならないことがあります。

それは、後にメールで銀行振り込みの口座番号が送られてくることです。

過去の被害ケースでも、クレジットカード情報を入力させて、それを抜いたところで、急に「クレジットカードが使えなくなったので、銀行振り込みにしてくれ」と入金依頼をしてくるケースがありました。

これと同様に「代金引換」を謳いながら、後に、振込口座記載のメールがきて「事前にお金を振り込んでください」という形に持って行くこともありえます。

絶対にお金は払わないようにしてください。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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