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あなたの郵便受けが、詐欺犯らに狙われている!?今すぐ、チェック!情報を盗み、モノを盗む手口が迫る。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

なんとも怖い事件がありました。しかし案外、これを怖いとは思っていない人の方が多いかもしれません。なぜなら、自分自身には実害がないからです。ですが、様々な危険をはらんでいます。それは、情報を盗み、そのうえで、モノを盗む手口だからです。

今月、40代男性が電子機器を詐取した疑いで警視庁に逮捕されました。

男性は、ネットから不正注文を行い、その際、勝手に実在するマンションの住人を受け取り人にしています。そして住人不在の時間帯を狙って配送させて、注文した商品をマンションの宅配ボックスに入れさせます。

そこで、宅配業者が郵便受けに投函した「不在票」を郵便受けから取り出して、そこに載る暗証番号でボックスを開けて、商品をだまし取っていました。

本人の供述では、3年前から行っており、900枚もの不在票があったということですから、転売目的の行為と見られ、余罪は相当なものでしょう。

確かに、マンションの住人が気づかないなかでの犯行ですので、当人には実害はありません。しかし郵便受けから、不在票が盗まれている。

これはとても恐ろしいことです。

不在時に配送させる訳ですから、住人が家にいない時間帯は知られており、この情報をもとに、空き巣に入られる可能性もあるわけです。

さらに、ダイヤルロックも解除されて、郵便受けから不在票を抜き取られたと思われますので、他の重要な郵便物も盗まれていないとも限りません。

まさに今、私たちの郵便受けが犯罪者に狙われているのです。

では、この手口は、この男だけが行っていたのでしょうか?

いいえ、そうではありません。

数年前から、不在票をポストから取り出し、その情報をもとに犯罪を行う手口は横行しています。

2年前にも、次のような事件がありました。

男女の犯罪グループが、他人名義のクレジットカードで高級腕時計をだまし取った疑いで警視庁に逮捕されています。

この時も、犯人らはダイヤルロックを解除して、マンションの郵便受けから公共料金の請求書などを盗み出していました。そして、その情報をもとに運転免許などの身分証明書を偽造し、その人物になりすまして銀行口座を開設、そのうえでクレジットカードを入手していたのです。

当然、クレジットカードが家に郵送されてきますが、その頃に犯人らはマンションで待ち伏せて、不在票をポストから抜き取り、郵便局で偽造免許証を提示してカードを受け取っていたといいます。

当時の報道では、犯行グループのパソコンには500人ほどの住所、家族の名前や勤務先などの個人情報が入力されており、2017年以降、約1600万円以上の不正利用があったとみられています。

つまり、住人の郵便受けを悪用した手口は、4年前から今に至るまで延々と続いているわけです。そして、今もどこかのマンションの宅配ボックスが悪用されていたり、郵便受けから個人情報の載った郵送物が盗み取られていることは充分に考えられるのです。

では、自分の郵便受けが悪用されないためにはどうすればよいのでしょうか?

まず犯人が、「この郵便受けは、悪用できない」と思わせることが大事です。

私も、日に何度も郵便受けを覗き、チラシが入っていれば、すぐに取り出すようにしています。毎日のように入っているチラシにうんざりして、取り出すのが面倒だから「まとめてから」と思い、放置しておくと「この郵便受けはこまめにチェックされていない」と詐欺犯らに思われて、狙われてしまうことになります。

常に、郵便受けは空に近い状態にしておいてください。

それは何より、郵便受けをチェックする警戒心のある人物であることを犯罪者に伝えることにもなります。

なかには、郵便受けに家の鍵を入れる人もいますが、これは絶対にやめてください!

これにより空き巣に入られることもありますが、セキュリティ意識のない人だと思われて、犯罪者から様々な手口で狙われることにもなりかねません。

特に狙われがちなのは、郵便受け周りが、見た目に汚い状況の郵便受けです。

最近は、マンションのエントランスに管理人が常駐していないこともあり、チラシが散乱している光景も見かけます。管理の目が行き届かず、住民があまり郵便受け周りに意識を払っていないところは、容易にエントランスに侵入しやすく、犯罪を行いやすい状況にあります。

私も外出先から戻るたびに、郵便受けをこまめにチェックしますが、この時、ある効果を感じています。

それは住人とのコミュニケーションです。

ダイヤルロックを解除して、不要なチラシを取り出すと、「こんにちは」と後方から声をかけられることも多くあります。そして「こんにちは」と挨拶を返します。

こうした、住人同士のコミュニケーションがある状況を、犯罪者が見れば、犯行がしづらいマンションだと思い、彼らを遠ざける効果もあります。

マンションは個人宅に比べて、防犯カメラもあり、セキュリティがしっかりしているように思われますが、多くの人が行き交うために、見知らぬ第三者の侵入も容易にできてしまいます。また隣人とのコミュニケーションが取りづらくなっているところにも、隙ができてしまうので、悪事をたくらむ者たちはそこに入り込んできます。

自宅だから安心というわけでもありません。

闇バイトの募集で集められた者たちが、組織的グループの指示で空き巣、強盗などを行うこともあり、最近は、相手の情報を得てから、何かしらの犯罪を行う傾向があります。その時、事前にその人物の情報を収集するために、郵便受けを探ることも考えられます。

また昨今は、不正アクセスなどを通じて、個人情報が流出しやすい状況が続いていますので、心当たりのない郵便物が投函されていないかなど、もう一度、自分の郵便受けに危険の芽が潜んでいないかの再点検をお願いします。

手口公開は犯罪を広める。この考えはもう古い。

こうした犯罪者らの巧妙な手口を伝えると、次のようなことを話す人がいます。

「詐欺の手口を公表することは、その手口を別な犯人に教えるようなものだ」と。

未だに、このような考えを持っている人がいますが、それはまったくもって、古い考え方といえます。

振り込め詐欺が10年以上前に出始めた頃、警察も模倣犯を懸念して、手口の公開を控えてきました。しかしそれが逆に、手口を知らない多くの人たちが被害に遭うことにつながってしまいました。

今は、日々、詐欺が進化するなか、警察も新しい手口が出てくれば、すぐに公開して身を守るように注意を促してくれています。

つまり、テレビやニュース報道などで手口を公表しようとしまいと、裏の犯罪組織の世界では成功した詐欺の情報はすでにまわっているのです。知らないのは、表の世界の私たちだけなのです。つまり、手口を知らない人たちだけが、詐欺の毒牙にかかってしまっているわけです。

今は、詐欺犯らの最新の手口をいち早く知って、対策を打ち身を守ることが、とても大事な時代なのです。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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