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突然、私のもとに悪質業者がやってきた!皆さんなら、どう追い返す?撃退の三本の矢を放った、その顛末は?

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:Paylessimages/イメージマート)

突然の訪問者がやってきた時には、インターフォン越しに、断る。それが一番、良いのですが、つい扉を開けてしまって、そこに見知らぬ業者の男が立っていたとしたら。

皆さんなら、どうやって追い返すでしょうか?

これは実際に、先日私の身に起きた出来事です。

この時のやりとりから、いかなる撃退法が有効なのかを、身をもってお伝えしたいと思います。

悪質業者を追い返すためには、キーとなる3つの言葉(三本の矢)があります。

一本目の矢を射れば、たいがいは立ち去るものです。

しかし、先日、私のもとにやってきた男性は、この言葉にひるまず、一歩も退きませんでした。こうした人間もいるものです。

久しぶりに、悪質な訪問者を撃退するということが、いかに大変であることを実感しました。

今、訪問した業者から執拗に契約を迫られたというトラブル相談が各地の消費者センターに寄せられています。国民生活センターの発表では、「点検」を名目に家にきた業者から「工事をしないと大変になる」などと言われて、高額なリフォーム契約をさせられたというケースがあります。最近では、自然災害による停電も多いことから、家庭用蓄電池の設置を謳ってやってきた訪問業者とのトラブルも報告されています。

「無音」が悪質業者の第一手

夕方、ゆっくりとコーヒーを飲んでいる平穏な日常に、それは突然やってきました。

「ピンポン!」

インターフォンが鳴ります。

「はい、どちら様ですか?」

「……」

無音です。

「どちらさまですか?」と再び、尋ねても、答えが返ってきません。

いつもならば、ここでインターフォンの受話器を置くところですが、今回は、数日前にテレビ通販で電動シェーバーを注文しており、それがちょうど届く時間帯だったのです。

それで、色々と考えてしまいました。

「配送業者が、何かの事情で話せないだけなのかも?あるいは、インターフォンの調子が悪い?」

そう思い、扉を開けました。

すると、そこには白ワイシャツ姿の30代位の男が立っているではないですか。

「げっ、営業マンか。しまった!」

そう思った時にはすでに遅く、男は扉を閉めさせないように、足だけでなく体全体で押さえるような体勢を取り、しかも扉を全開にして、私がノブに手が届かないような状態にまでしてきます。

こちらからは物理的に扉を閉められない体勢を即座に取る。

「一筋縄ではいかない」かなりの手練れであることを察知しました。

最近の悪質な訪問ではインターフォン越しの質問に極力、答えず、「無音のまま」扉を開けさせるという手段を使うことが出てきています。この背景には、ネット通販で商品を宅配業者に届けてもらうことも多く、今回の私のように「もしかして、配送業者かもしれない」と思わせて開けさせようとするのです。

この無音の罠に、はまらないようにしてください。

男は玄関先に堂々と立ちます。

「なんでしょうか?」と尋ねると、男は「お約束を取ろうと思い、本日は伺いました」と答えます。

「はい?何の約束ですか?」

しかし相手はそれには答えません。

こちらの質問に正面から答えずに、都合の悪い質問をスルーする。もしこうした言動が見えたら、相手が悪質な訪問業者と思って間違いありません。

そこで、撃退の第一の矢を繰り出しました。

それは「結論を先に言わせる」です。

今の夏の時期ならば、「今日は暑いですね」と、季節の挨拶や日常のことから話し始めて、「〇〇に興味は、ありますか?」など、本来の販売などの勧誘目的を話さず、情報収集からスタートさせてくるからです。

ですので、撃退するためには、「何のために、ここにきたのか?」訪問の目的を先に言わせることが大事です。

実際に、私も数々の訪問業者を、この第一の矢で撃退してきました。

「何の目的できたのですか?」

すると、男は「次回の約束を取りにきました」とはぐらかすように答えます。

「だから、何の約束ですか」

しかしそれには答えません。

「何かの営業ですか?そうであれば、結構です。まず何の目的できたのかを教えて下さい」

強い口調で聞きますが、相手はひるみません。

「ですから、次回のお約束を取りにきました」をただ繰り返します。

たいがいの業者なら、私の強い口調から、対応が難しい客と思い、引き下がります。それを見て「いりません」と一気に扉を閉めるのですが、男は変わらず、扉を全開にして、体を入れこんだままです。

そこで、撃退の第二の矢を繰り出すことにしました。

それは身元確認です。

自身の名前、会社名、住所を聞き、それをおさえることです。

悪質な勧誘を受けて、もしこれがマンションなどの販売をする不動産業者であれば、免許の交付先に通報することもできます。

「あなたの会社名と名前を教えてください」

すると、男は「先ほど話しました」と言います。

インターフォンでは無音だったはずなのに、「自分は会社名を名乗った」というのです。

まるで私が聞いていなかったのか、インターフォンの調子が悪く、こちらに非があるように言ってきます。

もしかすると、人の良い方だと「自分が聞きもらしたかも」と一歩引くかもしれません。しかし、それをしては、相手の思うツボにはまります。

「いいえ、あなたは言っていません」

「私は言いました」

男は平気で嘘を繰り返し、言った言わないの論争になります。

高齢者の方に特に多いのですが、ここまでになると「相手は引き下がってはくれない」とあきらめの気持ちから、「相手の話を聞けば帰ってくれるのではないか」と思い、応対してしまいますが、それは絶対にしないでください。状況が悪化するだけです。

私は厳しく糾弾しました。

「嘘をつかないの!あなたは、会社名を言っていないでしょ。正直に言いなさい!」

それでも男は答えません。

撃退の第三の矢を繰り出しました。

それは「帰ってください!」です。

「嘘を話すようなあなたとは、まともに話せないので、帰って頂けますか?」

それでも男は一歩も引きません。

そこで「ここから出て行って下さい!」と強い口調で退去を促しました。

怒鳴り声がマンションじゅうに響いたと思います。

この大声は、わざと行いました。

誰かが聞いていれば、「私が帰ってください」と話した言葉の証拠となるからです。

大声は確かに、マンションの住民に迷惑にはなりますが、こうした悪質業者がこの場所に入りこんでいる危険を知らせることにもつながります。

それでも、男は「次回の約束を取るだけですよ」とノラリクラリ、その場を立ち去りません。

こちらが根負けするのを狙っているのです。

「いいですか!私は、あなたに『出て行ってください』と言いました。不退去罪に問われますよ」

すると、男も声を荒げます。

「はあ、何がですか。私はあなたの玄関先に入っていませんよ」

「玄関先に入っていなくても、すでにあなたは、マンション内に立ち入っています。管理会社の許可は得ているのですか!」

すると、少しだけ男が後ずさりしましたが、それでも扉から離れようとはしません。

そこで「わかりました。警察を呼びますね」と最後通告を突きつけました。

近くにあったスマホを手に取り、「110」を入力した画面を男に、見せました。

あとは、通話ボタンを押すだけです。

「いいですね。押しますよ。管理会社の許可なくマンションに侵入して、退去要請にも応じません。不退去なので、警察を呼びます」

そして、通話ボタンを押しました。

やっと立ち去る訪問業者

すると、男はふて腐れた顔をして、一気に階下へと足早に立ち去っていきます。

「おい、待て!」と呼ぶも、逃げていきます。

そこで一端、電話を切りました。もしかすると、110番へのワン切り電話になってしまったかもしれません。すみません。

しかし防犯上、このままで終わらせるわけにはいきません。

たいがいこうした悪質な業者は別なフロアーにも入り込み、同じ行為を始める傾向があるからです。

私は急いで、玄関の鍵を閉めて、男を追いました。

やはり、他の階の住民のリストを物色しているのか、1階のエントランスにまだ立っていました。

そして、何かをメモしているようです。

「まだ、いたのですか。何をしているのですか」と詰め寄ると、驚いたような顔をして、振り向き、メモを隠します。おそらく「〇号室の人間は、訪問したらすぐ警察を呼ぶ」などの私への訪問状況をメモしていたのでしょう。

実はこうして強く撃退しておかないと、もし「押せば、落ちる」「インターフォンで無音にすれば、何かと思って扉をあける人の良い人物」などと書かれて、他の悪質業者にもこのメモがまわれば、さらなる訪問の危険にさらされることにもなりかねません。

「まだ、他の階の人のところに行こうとしているのか」と迫ると、やっとエントランスから出ていきました。

しかし外に出たと見せかけて、戻ってくる恐れもあるので、私はさらに男を追います。

すると男は、別のマンションの駐輪場に止めてあった自転車に乗ろうとしています。

そこに会社名は書かれていませんでしたが、案外、近所にいる業者なのかもしれません。顔も自転車の特徴も覚えたので、後日、もう少し周辺を調査しようと考えています。

そして、男が遠くへ去るのを見送りました。これで、本日のひとつの脅威が去りました。

私は詐欺・悪質業者との数々のやりとりをしてきた経験から、撃退法として三本の矢を保持していたから、追い返せましたが、撃退の術を知らない人であれば、おそらくこうした悪質訪問業者にやりこめられて、契約をさせられてしまったかもしれません。

不審な訪問業者を撃退する矢は3つです。事前に、心に用意しておいて下さい。

「目的を先に聞く」「身元を確認して、通報できる態勢を整えておく」そして最後は、「出て行ってください」と言い、応じなければ、「警察」へ通報ということになります。

実は過去に、こうした悪質業者からの訪問を受けた高齢男性が、不必要なリフォーム契約をさせられて、息子さんが何とかクーリングオフして事なきを得たにもかからわず、その後、振り込め詐欺の被害に遭ったケースもありました。悪質業者と、詐欺犯がつながっている可能性も否定しきれません。

悪質業者は、体良く断ろうとしても去ろうとはしないものです。

毅然とした態度で接して、それでも「退去」しないようであれば、ためらわずに警察へ連絡してください。その後のことが心配であれば、訪問業者の特徴を伝えて、警察に付近のパトロールをお願いしても良いかと思います。

新型コロナウイルスが首都圏を中心に蔓延しつつあり、家にこもりがちな時期が続きますが、しっかりと断ること。それが身を守ることにつながります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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