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横行する不正注文の実態を暴く!今、飲食店の電話番号が悪用されている。

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:PantherMedia/イメージマート)

何者かになりすまして、不正にネット注文をして、お金を払わずに商品をだましとる。

コロナ禍で通販利用者が多くなる中、そこに紛れ込むようにして悪事を働く者たちが出てきています。しかも注文の際、不正な購入がバレないようにするために、飲食店の電話番号を記載して、商品の発送をさせると言います。

その手口は巧妙です。

「かっこ株式会社」に、今、はびこっている不正注文の実態について、話を聞きました。

同社は、不正な注文をリアルタイムで検知する「O-PLUX(オープラックス)」にて、なりすましの不正注文かどうかを、ネット通販事業者にアラートを出すサービスを提供していますが、その中で「飲食店の電話番号を勝手に使って不正購入するケースが、2018年に比べて、2020年は2.62倍になっている」と言います。

これはサービスの提供業者だけですので、実際には、もっと多くの通販事業者が被害に遭っていると思われます。

この飲食店の電話番号を使う不正の背景には何があるのでしょうか?

同社の担当者は「ネット通販の事業者側の不正対策への意識の高まりがあって、デタラメの情報では注文が通りにくくなったため、実在する飲食店の電話番号が利用されているのではないでしょうか」と推測します。

「やはり、新型コロナの影響で、休業する飲食店が多くなり、それで不正に電話番号が使われて、これだけ被害の広がりになっているのでしょうか?」と尋ねると、「必ずしも、そうともいいきれません」と、答えます。

実は、この手口自体は、2018年頃(3年前)から出てきています。

「たいがい、新しい手口が出てきても、その手法が通販事業者に知られると、わりと短いスパンでなくなるものです。しかしこの手口は3年前から続いて、徐々に増えてきて、今の状況になっています」

不正を行う者は、効率よく犯罪が行える手立てを見つけると、延々と続ける傾向があります。まさに振り込め詐欺がそうで、十数年以上の長きにわたって、今も続いています。つまり、この不正注文の手口が犯罪者にとっての成功法則になっていることが、うかがえるのです。

「なぜ、注文時に電話での本人確認を徹底しないのだろうか?」

そう思われる方もいらっしゃることでしょう。

その点については「注文を受けた時点で電話確認する通販事業者さんもいらっしゃいますが、つながれば、それでOKとして発送せざるをえない状況がある」と言います。

というのも、飲食店の番号は固定電話で、相手が出るまで執拗にかけ続けて、迷惑をかけるわけにもいかないので、電話が通じれば良しとするのが実情なのです。

「特に、狙われているのは、夜に営業している飲食店の電話番号です」

注文を受けた多くの通販事業者は、日中の時間帯に電話をかけて通じるかの確認を取ります。不正を行う者たちもそれがわかっていて、昼間は誰もいない、夜の営業をしているお店の電話番号を不正注文の際に入力するのです。

「やはり手口としては、他人のクレジットカード情報を使って、不正な注文するのでしょうか?」と尋ねると、「いいえ、ほとんどの場合が、料金後払いになります」とのこと。

これは送られた商品とともに、その中に請求書が入っており、コンビニなどで後からお金を払う形になっています。

この料金後払いでの被害が多いのです。これなら、クレジットカードの不正利用の検知にもひっかからず、確実に商品を手に入れられるというわけです。

通販事業者もお金が払われないので、本人に督促をかけようと何度も電話をかけてようやくつながるも、注文した人物はそこには存在しなかった。そこで、だまされたことがわかります。

詐取された商品は、転売が目的

「比較的、転売しやすい1万円ほどの商品の注文が多く見受けられます」

しかも、受け取る際の住所は、アパートなどの空き部屋になっているところだと言います。

手口は巧妙で、同じことを繰り返していることがバレないように、微妙に住所の記載を変えたり、わざと番地を除いて、マンション名だけを書き、同じ場所に商品を届くようにさせています。

また、詐欺行為が発覚しないように、比較的近い住所の空き部屋に送り先を指定して、商品を受け取ることもあると言います。これらの用意周到な手口から、組織的グループでの犯行が疑われます。

実は、これには私自身、思いあたる節があります。

以前に「アパートの空き部屋で商品を受け取る裏バイト」を募集する人物から話を聞いた時のことです。

「宅配で届いた荷物をアパートやマンションで受け取ってもらう仕事で、2~3時間程度で終わります」それだけで、数万円がもらえると言います。

「違法なものではないのですか?」と尋ねると、「そうではありません。正規の通販サイトに注文して送られてくる商品なので、捕まることはありません。皆さんには、長く続けてもらっています」などと言っていました。

しかもその時、「近い場所のアパート、マンションを3か所ほど、まわってもらいます」との話もありました。

今考えれば、これは、料金後払いの商品を受け取る、裏の仕事だと思われます。

この話を聞いたのは、3年ほど前で、まさにこの飲食店の電話番号が使われて、不正注文が行われ始めた時期とも一致しています。

危惧するのは、この手口が以前に比べて増えてきているということは、コロナ禍で仕事を失い金銭的に困り、こうした商品の受け子に手を染める人が、多く出てきているのではないかということです。

これは犯罪なので、SNSでこうした仕事を紹介されても、行わないようにして下さい。

代金を払わないのですから、詐欺犯たちにとって、仕入れ値は「ゼロ」で、それを転売して、まるまる利益を出すわけです。

もしかすると、私たちがフリマアプリやオークションなどで手に入れた商品が、実は犯罪で手に入れたものであるかも知れず、決して他人事ではありません。

ネットによる不正注文は、購入する私たちにも影響を与えている問題であり、通販事業者の側も「犯罪者は必ずくる」の発想で、不正を絶対に許さない態勢づくりが急務になっています。

不正な方法で商品をだましとる手口は他にもあります。

次回は、一般人である私たちも巻き込んで行われている、非常に悪質な手法についてお聞きします。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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