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1700万円、1000万円と、今も次々に起きている詐欺、国際ロマンスからの偽サイト被害が止まらない!

多田文明詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト
(写真:アフロ)

「仕事をやめて結婚したい。その思いにつけこまれたのだと思います。詐欺に遭われた方々は、どうやって生きているんでしょうか……」

マッチングアプリで出会ったシンガポール人男性に誘われて、投資サイトに送金し、1700万円を超える被害に遭った、30代女性は深刻な表情で話します。

だまされた手口は、これまでお伝えしてきたものと同じでした。

ステップ1 異性の外国人が「自分は投資で儲けている」と話して、偽の投資サイトに誘導して、ビットコインで、口座に送金させます。

ステップ2 2回ほどは、投資すると儲かったお金を、本人の口座に戻す手順を繰り返します。

彼女も、50万円送金すると、投資で儲かり約55万円になって口座に戻ってきています。

ステップ3 「儲かったら、お金は戻る」と安心させたところで、多額の金を送らせて、最終的には、サイトは突然、消えてしまいます。

もちろん、相手にお金を出させる過程で、外国人の異性は「結婚しよう」「早く君と会いたい」という、ロマンスを感じさせるような愛の矢を放って、心に火をつけてきます。

心の弱みにつけこむ卑劣な手口

彼女は、辛い職場環境ゆえに「やめたい」という気持ちを強くもっていました。さらに、家族からは「早く結婚しなさい」というプレッシャーを強くかけられており、そうしたなかで「やっと運命の人に出会えて、結婚できる」と思わされて、だまされたわけですから、ショックは相当なものです。

「今まで、必死に真面目に働いて生きてきたのに、全てを奪われて、生きる希望を失いました。なぜ私がこんな目に遭わなければいけないのでしょうか」と涙を浮かべます。

彼女が被害に遭ったのは、今年に入ってからで、男と投資サイトのカスタマーセンターと連絡がつかなくなったのが、先月(3月)のことです。今もなお、この手口は多くの人を詐欺の毒牙にかけているのです。

「『おかしいな』という思いは、心のどこかにありながらも、彼の言葉をずっと信じてきました。けれど、連絡が取れなくなって、調べ始めてやっと詐欺に遭ったと気づきました。なぜ『おかしいな』と思っていた自分の気持ちを大事にしなかったのか。なぜ、もっと早く調べなかったのか。後悔ばかりです」

そこで、今回は「詐欺かもしれない」と、いち早く気づくための5つのポイントについて考えます。それは、詐欺師の放つだましの矢を知ることです。

ポイント1 最低限の事実確認

「もっと事実確認をしておくべきでした」と、彼女は後悔を口にします。

男が「都内のタワーマンションに住んでいる」とのことでしたので、「その住所やタワー名はわかりますか?」と尋ねると、首を横に振ります。

詳細を聞いていなかったのです。

「仕事先は?」

「F社というところです」

ネットで調べてみると、確かに会社は実在しています。

「彼の在籍確認はされましたか?」

「いいえ」

実は、彼の話した内容の裏付けを取っていなかったのです。ネットで一度も会ったことがない人と、結婚まで約束しているのであれば、やはり、最低限の事実確認は必要になります。

これはとても重要で、私も様々な詐欺業者と対峙してきましたが、だまそうとする者は、当然嘘をつくわけですが、こちらが事実確認をして、ひとつの嘘を見つけて問いただすと、それを隠すための新たな嘘をつきます。その繰り返しのなかで、必ずや相手のボロがみえてくるものだからです。

ポイント2 疑問をもつ。相手となかなか会えない時には

会う約束をしても会えないのが、この詐欺の特徴です。最近は、異性の外国人が日本国内に住んでいると言ってくるケースも、よく見られますが、会う直前になって、ドタキャンが続くようであれば、「だまされているかも」と思ってください。

彼女も「3回ほど、会う約束をしましたが、全部、すっぽかされた」と言います。

今年1月末、都内で会う約束をしましたが、男は「名古屋への出張が入ってしまい、会えなくなった」と前日にドタキャンの連絡を入れてきます。

「戻ってきたら、すぐに会おうね」

2月初めにも連絡が入り、「実は、一緒にいった仕事仲間の4人のうち一人が新型コロナウイルスに感染していることがわかった。2週間の隔離生活に入るので、名古屋からは出られない」と言います。

さらに2週間後「隔離期間が終わったので帰るよ。君の家まで迎えに行くよ」との連絡を受けますが、「車で東京に戻る途中で、自動車事故を起こした。自分の怪我はたいしたことはなかったけれども、相手の車の人がかなりの怪我になっていて、静岡に滞在している」とのメッセージを送ってきます。この時、事故の様子や、自分の足に包帯がまかれて怪我をしている写真も送ってきています。用意周到に工作しながら、ドタキャンを繰り返すのです。

被害者からの提供写真
被害者からの提供写真

新型コロナ感染や事故に遭うなど、「緊急事態が発生した」といって、だます手法は、国際ロマンス詐欺だけでなく、振り込め詐欺でもよく使われるものです。

ポイント3 「借金をしろ」は、詐欺濃厚!

偽サイトを利用したロマンス詐欺では、まず相手の貯金を使い果させてから、次に借金をさせようとします。そして負債がどんどん膨らみます。

もし「借金をしてでも、投資するんだ」と言われたら、詐欺が濃厚と考えてください。

ポイント4 納税が必要は、詐欺の常とう文句

よく詐欺師が、使う言葉に「納税」(税金が必要)があります。

こちらが出金依頼をすると投資サイトの側は、きまって「儲かった額の10~30%の税金を納めなければならない」と言ってきます。

彼女は、2月に200万円を送金して、総額1100万円以上投資をすると、サイト上の金額は儲け分を含めて、約25万ドル(約2750万円)までになりましたので、全額の出金依頼をしました。しかし、お金は戻ってきません。

サイトに問い合わせると、「あなたは、4万5千ドル(約460万円)の利益にかかる税金を、法律上、払わなければならない」と言われます。彼女にはすでにお金がなく、婚約者の彼に相談すると、「よし僕が2万円ドル(約220万円)を振り込んであげる」と言い、サイト上のお金が増えます。「あと、250万円ほどだから、頑張れ!」と言われて、さらに彼女は借金をして、お金を工面します。

しかし、お金は口座に入ってきません。

すると、事件が起きます。

サイトからの連絡で「あなたと連絡を取っている男性は、シンガポールでマネーロンダリングの犯罪に関わっている人物だ。あなたは、その犯罪者とかかわりがあり、男からのあなたへの入金も確認されているので、1万ドル(約110万円)の「罰金」を払わなければならない!」と言われます。

驚いた彼女が、彼に問い詰めると「バレてしまったか!俺は逃げなければならない」と言って、連絡は途絶えます。彼女は「サイトから、お金が支払われない」ことを警察に相談したところ、詐欺が発覚しました。その後、投資サイトも消えてしまい、結果、1700万円以上の被害となり、半分以上が借金になりました。

知っておいてほしいことは、海外のサイト業者であっても、日本人に向けて投資などを行わせる場合には、金融商品取引業の登録が必要です

サイトの運営会社を金融庁のHPで確認するか、問い合わせをしてください。もし登録されていなければ、違法になりますので、絶対にお金は振り込まないでください。

ポイント5 矢で指示してきたら、怪しむ

取材をするなかで、被害者の方に「どのような投資方法だったかを教えてほしい」と尋ねますが、しっかりとその内容を話せる人はごくわずかです。ほとんどの方が、投資をよく理解していないのが実情です。

そして皆さん「こんな感じで投資をするように指示されました!」と、相手が送ってきた画像を見せてくれます。

彼女からも、男から送られてきた画面を見せて頂きました。

被害者からの提供写真
被害者からの提供写真

赤い矢印は男がつけてきたものです。

被害者からの提供写真
被害者からの提供写真

共通しているのは、赤い「指示の矢」です。

わかりやすい形で「ここのボタンをタップ」「ここに金額を入力」との指示をしてきます。「矢」や「太字の枠」をつけてきたら、「詐欺」を疑ってください。

国際ロマンス詐欺は、恋の矢を放って、愛を燃え上がらせるだけではなく、お金を送金させる指示の矢も放ちながら、だまそうとしてくるものだからです。

偽サイト詐欺に気づくポイントは、5つです。

サ「最低限(サいていげん)の事実の確認は行う」

ギ「疑問(ギもん)をもつ。相手となかなか会えない時には」

シ「『借金(シゃっきん)をしろ』の投資指示は、詐欺濃厚!」

ノ「納税(ノうぜい)しろは、詐欺の常とう文句」

ヤ「矢(ヤ)で指示してきたら、怪しむこと。恋も投資も」

それぞれの頭文字をとって、「サギ師の矢!」(サ・ギ・シ・ノ・ヤ)です。

このひとつにでもあてはまれば、すぐに「188(いやや)」の消費者ホットラインか、「#9110」警察相談ダイヤル、居住地の警察署に相談してください。

ひっきりなしに発生する被害

女性の取材を終えて、家に戻り、原稿を書いていると、30代女性から「もしかして詐欺に遭ったかもしれない」との連絡が入りました。「自分が今回、行った投資内容と、記事の内容がそっくりだ」というのです。

話を聞くと、先月(3月)までに、約1000万円をサイトに送金したけれども一向に「お金が引き出せない」とのこと。彼女の場合は、国内の銀行口座にお金を振り込んでいましたので、すぐに銀行と警察に相談するように話しました。

相手は台湾人の男性で、見せて頂いた投資サイトは、人民元での金額表示がなされていました。これまではドル表示の投資サイトが多かったですが、こうしたサイトもあります。

幸いにも彼女は借金をしていませんでした。約1000万円をだましとられているので、早いともいえないかもしれませんが、できるだけ深入りする前の段階で、詐欺に気が付くことが被害の軽減につながります。

詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト

2001年~02年まで、誘われたらついていく雑誌連載を担当。潜入は100ヶ所以上。20年の取材経験から、あらゆる詐欺・悪質商法の実態に精通。「ついていったらこうなった」(彩図社)は番組化し、特番で第8弾まで放送。多数のテレビ番組に出演している。 旧統一教会の元信者だった経験をもとに、教団の問題だけでなく世の中で行われる騙しの手口をいち早く見抜き、被害防止のための講演、講座も行う。2017年~2018年に消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員を務める。近著に『信じる者は、ダマされる。~元統一教会信者だから書けた「マインドコントロール」の手口』(清談社Publico)

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