「M-1グランプリ2020」の優勝後、自ら制作したNintendo Switch用ソフト「スーパー野田ゲーPARTY」の販売本数が5万本を突破するなど、常に注目を浴び続けているマヂカルラブリーの野田クリスタルさん(34)。

そんな人気芸人が、駆け出し時代から「師匠」とあがめているのがモダンタイムスのとしみつさん(42)と川崎誠さん(43)だ。今年に入って『中居正広の金曜日のスマイルたちへ』(TBS系)や『アメトーーク!』(テレビ朝日系)に出演するなど、マヂカルラブリーの活躍とともに露出を増やしていた。

ところが、今年6月に所属事務所のソニー(SMA NEET Project)を退所。その要因は、24時間365日ライブ配信を行うYouTubeチャンネル「かわさんの部屋 -LIVEMAN-」をスタートさせたことにあるという。彼らはなぜリスクを負ってまでフリー芸人の道を選んだのか。ライブ配信中の「かわさんの部屋」に潜入し、取材を敢行した。

冷静に考えてマネージメントできるわけない

――お元気そうで何よりです。“おじさんブーム”もあって、調子も上がってる時期だったじゃないですか。それが「かわさんの部屋」が始まって、すぐに一時中断して間もなくフリーになって……。展開が早過ぎてちょっと驚きました。

川崎:前はソニーに入ってる時に取材していただいたんですもんね。

としみつ:本当に心配してくださってね。しばらくしてフタ開けてみたら、フリーになってるから「大丈夫?」って。まさかこうなってるとはって感じですよね。なんかありがとうございます本当に。

――いえいえ、期待もあって来ましたから。ライブ配信が一時中断していたのは、やっぱり事務所側とのすれ違いがあって?

としみつ:7月3日に投稿した動画(「This is LIVEMAN 【かわさんの部屋】」)の通りなんですけど、冷静に考えて24時間365日芸人をマネージメントできるわけないっていう(笑)。それはどの事務所もそうだと思います。

川崎:どこでも無理ですよ、ずっと僕の生活を監視するなんて(笑)。

としみつ:その点があったのと、野田クリスタルの出資から始まってAmazonの企画(Amazonの「ほしいものリスト」に反映させて、視聴者から川崎さんに自由にプレゼントを贈るというもの)で、この部屋にいっぱい商品が届いたんですよ。

――最初の殺風景な部屋から様変わりしましたね。

川崎:徐々に増えていってダンボール100個以上開けましたから。腕がパンパンで腱鞘炎になりましたよ。

としみつ:この場を借りて感謝します。こんなにたくさん本当にありがとうございます!

多摩川の土手で缶ビール飲んでどっちがうまいか

――届いたプレゼントの中では何が一番嬉しかったですか?

川崎:布団ですね。最初は地べただったので、一発目の布団はすごく助かりました。本当言うと、氷結ZEROを送ってほしかったんですよ。ただ、体に悪いんじゃないかと気遣ってくれたみたいで一向に届かない(笑)。僕としてはぜんぜん送っていただいて構わないんですけどね。

としみつ:まぁね、お酒飲ましたら面白いからね(笑)。

川崎:氷結ZEROはぜんぜん体にいいので。冷蔵庫に入ってると嬉しいですね。

――ここまで支援してもらうと、ちょっと簡単にはやめられないですね。

川崎:これで「やめました!」なんて言ったら大変なことになりますよ。

としみつ:本当ですよ。それと、芸人人生で「あれやってたらな」っていう「たら、れば」は絶対に言いたくないなと思ったんですよね。60過ぎて多摩川の土手で缶ビール飲んでたとしても、「やって飲む酒」と「やらないで飲む酒」とどっちがうまいんだろうって。それで、やるほうを選んで。16年間お世話になったソニーさんに、「すみません」って退所の意向を伝えたんですよね。

――退所にあたっては、かなり話し合いを重ねたんですか?

としみつ:めちゃくちゃしました。ただ、もうどうあっても無理だなって感じでしたね。ものすごい俺らのことかわいがってくれてたんですけど。

川崎:企画が通ると思ってたから、ライブ配信を始めた当初はぜんぜん辞める気もなかったんですけどね。実際に退所したのは、6月の頭の週。いろいろ考えて事務所と折り合いをつけようとしたんだけど、最終的には「ライブ配信をやるんだったら、ちょっと1回離れようか」となりました。

「あ、ヤバいな」って(笑)。読みが浅かったですね

――野田クリスタルさんを待ち伏せする動画がアップされてますけど、出資のお話は本当にぶっつけ本番だったんですか?

としみつ:そうです、そうです。あの時は50万出してくれるとなって喜んだんですけど、今思えばもっとほしいぐらい。実際、金策に走ってるぐらいのレベルなんで。

川崎:正直、この企画は50じゃ足らなかった。初期費用と毎月の家賃考えたらすぐなくなるし。このままだと、3~4カ月で畳むしかないよね?

としみつ:水道やら電気やらの光熱費とか、生活を維持するってトコまでは考えてなかった。後になって「あ、ヤバいな」って(笑)。読みが浅かったですね。

川崎:電気消しちゃうと、動きがないってことでBANされちゃうんですよ。それで、ずっと点けたままだし……。ってことは、365日電気を点けながら寝なきゃいけない(笑)。

――電気代もけっこうかかりそうですね。お金が尽きたらどうするんですか?

としみつ:その時は……この企画が終わるってことでしょうね。もちろん多少のマイナスは背負いますけど。本当に困ったらアルコ&ピースもいるし、マヂカルラブリーも村上にはまだ手をつけてないですからね。

川崎:なるべくこの企画の中で何とかしたいですけど、金借りれば延々にできますから。

――その方向はよくない気がしますね(笑)。

としみつ:よくない、よくない(笑)。本当言うと、部屋のランクを上げていきたいんですよ。今は「事故物件篇」としてここを借りてますけど、そこについてはもっと先を見据えています。

川崎:一応、今年の夏にはここを引っ越して、次はもう少しいいフローリングの部屋とかに移ろうと計画してます。実際にどうなるかは、ちょっと先が読めないんですけど。やっぱり出来るなら「この企画を当てて生活できるんだ」ってトコをお見せしたいですよね。

海外で僕らの企画が当たらないかなって

としみつ:もともとマヂカルラブリーの野田クリスタルが飼ってるハムスター“はむはむ”の動画を見た時に、「かわさんでこれをやったら面白いんじゃないか」と思ったのがきっかけなんですよ。上野動物園のパンダを見て楽しんでもらう感覚というか。ただ、周りはこれをどう思うんだろうと。それで実際にやり始めてみたら、意外とみんな見てくれてるんですよね。

川崎:たぶん、日本では誰もやってないからね。24時間ずっと部屋を撮ってるって、すごく実験的ではありますよね。

としみつ:僕、最近Netflixに入ったんですけど、海外で僕らの企画が当たらないかなって考えてるんですよ。たぶん、海外の方って日本人の普通の暮らしをあんまり見たことないと思うんで。

川崎:海外の方がアジア人の生活を覗き見るって感覚ですよね。日本人の生活ってこんな感じなんだ、みたいな。そこが俺らの最終目標だよね。かわさんの部屋は、その第1弾って感じにしたい。

としみつ:Netflixでかわさんの部屋がバンッて出てくるって、僕の夢でもあるんですよ。「全裸監督」も話題になりましたけど、ロバート・秋山(竜次)さんの「クリエイターズ・ファイル GOLD」とかも見られるじゃないですか。やっぱり、ああいうのを作れるようになりたいですね。

僕らの生み出した何かが、世界的なコンテンツになるぐらいまでいったらすごいじゃないですか。僕はそこまで持っていきたんですよね。ただ、かわさんは何も考えずにベビースターラーメン食っててもらえればと(笑)。

川崎:最近、本当にそれしか食ってない(笑)。まぁ気付かないうちに世界進出できるならそれでいいかなと。言葉もいらないし、俺はカップラーメン食ってりゃいいだけの話だから。

YouTubeチャンネル「かわさんの部屋 -LIVEMAN-」の収益化を記念し、突如ライブ配信中に行われたゲリラ単独ライブの模様。

夜中にランジャタイの国ちゃんに泣いて電話してた

――そんな壮大な企画だったんですね……。ちょっと驚きました。ただ、寝るところまでずっと監視されてるのってストレスにならないですか?

川崎:もう爆睡です(笑)。風呂がないのも、サウナが好きなんで銭湯に行くのも苦じゃないし。まぁ夏場に上半身裸になれないことぐらいですかね、さすがにライブ配信だとそれはできないんで。

としみつ:そういう細かいストレスは心配なんですけど、まぁ“やれるヤツ”なんでしょうね。この企画は、「かわさんしかできない」って部分も大きいと思います。

川崎:この企画の話が出た時って、ホームレスだったんですよ。いろんなところを渡り歩いてたから、「まぁいいかな」っていう安請け合いでやったところもあります。そしたら、どんどん展開が変わっていくんで、もう明日何が起きるかわかんないみたいな(笑)。

としみつ:もう逃げられない、あなたは(笑)。かわさんには普通に生活してほしいから、撮影してるカメラとかYouTubeのコメント欄は見ないでくれって伝えてるんですよね。動物園のパンダって自分がどう思われてるとか気にしないじゃないですか。

川崎:だから、僕は配信中に何が起きてるかわかってない。コメント欄が荒れていようが、僕にはまったく関係ないって感じなんですよね。

――よく布団に寝そべってスマホを触っていますけど、あれは何を見ているんですか?

川崎:Netflixです。最近入ったので、「梨泰院クラス」をずっと見てます。としさんに勧められたんですけど、めちゃくちゃ面白くて。

としみつ:2人とも今更のようにハマってる。正直、そっちを見てるから、かわさんの部屋は見てないんですよ(笑)。やらせっ放しの放置状態。まぁ酒飲んで酔っ払って、配信が止まっちゃうようなことだけは気を付けてもらえればと思ってます。そういえば最近、泣きながら電話してたんですよ。

川崎:空きっ腹でストロングゼロを2本飲んだら、記憶が飛んじゃったんです。そしたら、夜中の3時か4時にランジャタイの国崎(和也)に泣いて電話してたみたいで(笑)。

としみつ:真夜中にイカそうめん食いながらね(笑)。

川崎:朝起きてスマホ見たら履歴があったんで、「え?」と思って国ちゃんに連絡したら「泣いてましたよ」って言われて。ぜんぜん覚えてないんですよね。40過ぎてから、酒飲むとスパーンと記憶がなくなるようになりました。

としみつ:それを見て笑う人もいるし、心配する人もいる。そういうのもまた楽しいじゃないですか。ただ、ちょっとスパーンは怖いな。

川崎:それもあって、最近はちょっと量も減らしてるんですけどね。

としみつ:心配な部分もあるんですけど、ただ寝っ転がってるのも面白味がないじゃないですか。そこは飼育係がエサを調達するように、いいタイミングでビールの数を増やしたりして、うまく壊れてくれるように仕向けたいと思います(笑)。

登録者数1万人になったら野田さんを呼びたい

――7月11日にあぁ~しらきさん、ウェンズデイズのお二人が訪問していました。なかなかほっこりする配信でしたね。

としみつ:しらきさんは面白いですよね、面倒見のいいお母ちゃん感が出ていて。ああいう飼育員いいなと思います。

川崎:しらきさんは東京のお母ちゃんだからね。

――今後、定期的にゲストを招く予定なんですか?

としみつ:あんまり……まぁ野田(クリスタル)さんには来てほしいなっていうのはありますけどね。ただただ、かわさんと昔の話するだけでも面白いかなって。

川崎:修学旅行みたいなね。ぜんぜん泊まってもらってもいいし。一応、登録者数1万人になったら来てくれるとは言ってます。

としみつ:野田さんはお忙しいと思うので、なかなかスケジュール押さえるのが大変でしょうけど。

――ゲストを定期的に呼ぶというよりは、あくまでも川崎さんの生活を配信していこうと?

としみつ:それが一番いいんじゃないですかね。かわさんキッチンにしろ、ずっと食材がもやしと小麦粉ばっかりじゃないですか(笑)。もうめちゃくちゃ笑っちゃって。

川崎:今まで作ったレシピの半分はまずかった(笑)。一回食べながら、「うわ、まずい」って言いかけたんですよ。

としみつ:言っていいんだよ、面白いから(笑)。今後もかわさんには、底辺のオリジナル料理を作り続けてほしいですね。あとコメント欄に「かわさんかわいい」って書き込まれるような予想外のことも起きていて、そういうのも新鮮だなって。いろんな人に広まって、普通に数千人が見てるとなったら笑っちゃいますけどね。

川崎:目指すところはそこだよね。何もしないで大勢の人に楽しんでほしいんですよ。

この企画をやり続ける以上はずっとフリーです

――お二人が主催の「としかわトーク」は継続していくんですか?

としみつ:「どうしても続ける」っていう僕のこだわりで、退所後もなんとか200回までもっていこうとしてます。今は会議室を借りて無観客の配信のみですけど、なんとか続けていきたいですね。

川崎:場代は「モダンタイムス公式チャンネル」で入ったYouTubeの収益から支払ってます。マジでギリギリですけどね。

としみつ:さすがにフリー芸人になって「Beach V」(びーちぶ・ソニーのライブハウス)を借りるわけにはいかないですからね(笑)。もちろんゲストとして呼んでいただければ行きますけど。

――ゆかりの深いマヂカルラブリー、アルコ&ピースの2組とテレビで共演する夢も捨てていない?

川崎:最近、2組は『脳天カルパッチョ』(テレビ朝日系)でも共演してましたよね。ただ、3組でやるには僕らの名前がもうちょっと世間に浸透しないとね。

としみつ:まぁそこはあきらめずに口に出していこうと。モダンタイムスとマヂカルラブリー、アルコ&ピースで番組やれるように、いろいろと頑張りたいですね。あと、僕らはもう世界ですよ。かわさんの部屋で海外のマーケットを狙います。

――フリーになったお二人ですが、今後もしばらく事務所には入らず?

としみつ:たぶん、もう入らないと思います。ネタやって、としかわトークがあってっていうベースは変わらないですけど、この企画をやり続ける以上はずっとフリーですね。

川崎:ネタを当てたいって思いはフリーでも同じなんですよ。賞レースでもテレビでも出られるものは挑戦していきたいし。このライブ配信が急に終わったら、「あ、事務所に入るのかな」と思っていただければと(笑)。「もう無理だ!」ってなった時が畳む時ですね。

としみつ:その時は「金が尽きたんだな」と思ってください。畳む時は金が尽きた時ですから。

川崎:やるんだったら、もう僕の最期まで見せたいですけどね。フリーだし、我々は何でもできますから。

としみつ:見続ければかわさんの最期を看取れます(笑)。もしかすると、この企画の最終回ってそれかもしれないですね。

■モダンタイムス

2001年4月コンビ結成。としみつ、川崎誠は小学校時代からの同級生。ともに青森県出身。活動当初から多くの地下ライブに出演。2004年から主催ライブ「としかわトーク」をスタート。かつては、マヂカルラブリー、アルコ&ピースや夙川アトム、ゴー☆ジャス、THE GEESEなども参加していた。現在は、YouTube「モダンタイムス公式チャンネル」にて無観客配信を行っている。「キングオブコント2018」準決勝進出。2021年6月、SMA NEET Projectを退所しフリーに転向。ラジオアプリGERAにて「モダンタイムスの家なしブサイクラジオ」を毎週月曜20時に配信中。

取材・文:鈴木旭

撮影:スギゾー