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大舞台で守備的サッカーの誘惑に負け、勝ち点2を落としたFC東京監督クラモフスキー采配を心配する

杉山茂樹スポーツライター
横浜時代のポステコグルーとクラモフスキー(右)(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 国立競技場に48634人の観衆を集めて行われたFC東京対ヴィッセル神戸戦。2-2というその結果を「勝てた試合を引き分けてしまった」と、より残念がったのはFC東京の方だろう。

 東京はこの試合、前半18分にディエゴ・オリベイラのゴールで先制すると、その後もペースを握り続けた。2点目は時間の問題かに思えた。試合は終盤まで1-0のまま推移。時計は後半35分(80分)を回っていた。

 東京のピーター・クラモフスキー監督と言えば、アンジェ・ポステコグルー監督時代の横浜F・マリノスで、ヘッドコーチを務めていた人物である。その後、清水エスパルス、モンテディオ山形で、監督として攻撃的サッカーを展開してきた。前任のアルベル監督に代わり東京の監督として采配を振り始めたのは6月24日の名古屋戦から。成績はこの神戸戦まで4勝2敗1分けで、内容でも前任者に勝っていた。高い位置からプレスが掛けようとする分、サッカーは攻撃的になっていた。

 ところが、国立競技場という大舞台で勝利の2文字がちらついたのだろう。クラモフスキーは終盤にブレた。後半37分、右ウイング仲川輝人に代えセンターバックの木村誠二を投入。布陣を4-2-3-1から事実上の5バックに変更した。攻撃的サッカーの旗を降ろし、後ろに人数を増やす古典的な守備固めに入ると、攻める東京、守る神戸という図式は、予想どおり攻める神戸、守る東京に一変。同点に追いつかれそうな危ないムードを、自ら呼び込むことになった。

 この手の采配は失敗した場合のリスクが大きい。守備固めに入ったにもかかわらず、同点に追いつかれ、勝ち点2を逃せば采配ミスは露わになる。非難の矛先は監督に向けられる。攻撃的サッカーを標榜している監督の場合はなおさらだ。普段「前からプレスを掛けろ!」と口酸っぱく言っている監督が、コンセプトを「後ろで守れ!」に一変させれば言葉の信用が失われる。こだわるポイントではなくなる。サッカーの方向性、チームの根幹が揺らぐことになる。監督のカリスマ性は地に堕ちる。

 後半42分、悪い予想は的中する。ボールホルダーである神戸FWジェアン・パトリッキに、GK野澤大志ブランドンと交代で入ったCB木村が激しく接触。東京のペナルティエリア内で3人が交錯。転倒した。およそ5分という長いVARの結果、PKに判定は覆る。これを大迫勇也が決め、試合は土壇場で1-1となった。クラモフスキーの采配は完全に裏目に出た。

 後半の追加タイムはなんと13分もあった。1点が欲しい東京には布陣を元に戻すという選択肢もあった。だがそれをすれば、采配のブレはいっそう表面化する。5バックのまま、決勝ゴールを狙いに行く東京の姿に痛々しさを覚えたものだ。しかし、サッカーはわからない。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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