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日本人監督には無理なのか。スパーズ監督に就任したポステコグルーが眩しく痛快に映るワケ

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ロイター/アフロ)

 これまでに伝わってきた移籍話の中で、筆者に最も強いインパクトを与えたのは、アンジェ・ポステコグルーがトッテナム・ホットスパーの監督に就任するという報道だ。横浜F・マリノスからセルティックに渡り2シーズン。国内リーグでチームを連覇に導き、2年目の2022-23シーズンはチャンピオンズリーグ(CL)本大会にも駒を進めた。

 ついこの間までJリーグで采配を振っていた監督が、古橋亨梧、前田大然、旗手怜央ら日本人選手とともに、前シーズンの覇者で欧州一の名門クラブ、レアル・マドリード相手に向かっていく姿にも2階級特進をはたしたような感激を覚えたが、プレミアの強豪スパーズ監督の座に就くことは、それにしたがえば3階級特進をはたしたことになる。

 世界的にも珍しい華々しい出世話である。2シーズン前までJリーグでともに采配を振っていた日本人監督に、ポステコグルーのこの姿はどう映るだろうか。気がつけば、日本代表監督を簡単に頼める相手ではなくなってしまった。

 そのジャンプアップの要因を考えたとき真っ先にくるのは、攻撃的サッカーを志向するそのブレないサッカー哲学だ。それが上手く噛み合ったことで弾みが付いたと見る。それは、横浜FM監督時代以前のオーストラリア代表監督の時から貫かれている。

 成績は安定していたわけではない。2019年にはJリーグ優勝を飾っているが、初年度の2018年シーズンは残留争いを繰り広げ12位に終わっている。優勝した翌シーズン=2020年も9位に沈んでいる。シーズン途中で退任した2021シーズンは3位で後任にバトンを預けたが、Jリーグで采配を振ったその3年半、ポステコグルーは浮き沈みの激しい成績に悩まされたことも確かである。

 その攻撃的サッカーには実際、穴が目立った。それでも筋を曲げなかったことがセルティックでの成功に繋がったと見る。

 攻撃的サッカーという哲学を前面に押し出す監督は、欧州では普通に見かける。今季のCLを制したマンチェスター・シティのジュゼップ・グアルディオラ監督はその最たる存在だ。それだけにその優勝には重みがある。

 なにより監督へのカリスマ性が増す。そうした意味でポステコグルーはグアルディオラ的である。成績以上に魅力的な監督に見える。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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