Yahoo!ニュース

カタールW杯検証(1)日本がベスト16入りと引き替えに喪失したもの。哲学、コンセプトは誰が決める

杉山茂樹スポーツライター
写真:Shigeki SUGIYAMA

 カタールW杯を戦った日本代表。抵抗を覚えるのは、森保一監督が従来とは大きく異なる方法論で戦ったことだ。厳しいグループを勝ち抜き、ベスト16に進出した。目標のベスト8には届かなかったが、悪い成績ではなかった。前評判を覆す健闘である。しかし監督の評価を、すべて結果に委ねるのはサッカー的ではない。

 結果に及ぼす運の割合が3割を占めるなど、サッカーが不確定要素の上に成り立つ競技であることは、今大会でもしっかりと再確認することができたはずだ。要はバランスだが、日本の今後を考えたとき、かくあるべしとの理想、言うならば哲学は、勝利とクルマの両輪のように追求されなければならない。

 ドイツ、スペインを倒しベスト16入りすれば、他の競技なら森保監督続投でオッケーなのかもしれない。しかし事はサッカーだ。この方法論でいいのか。日本代表のサッカーには常時、複合的な目が向けられる必要がある。

 議論を尽くすことがサッカーらしさだとすれば、続投ムードを醸成する扇動的なニュース記事は世俗的というか、それ以上に罪深い存在に見える。他の競技のコンセプトでサッカーを語るなと言いたくなる。

 ベスト16はこれが4回目だ。2002年日韓共催W杯。2010年南アフリカW杯、前回2018年ロシアW杯。過去3回のうち2002年は、開催国の特権がその大きな要素になったことは間違いない。それを例外とすれば、比較対象は2010年、2018年になる。岡田ジャパンと西野ジャパン。収めた結果は同じ(ベスト16)でも、納得度に差があることに気付かされる。

 この3回に共通しているのは前評判が低かったことだ。岡田ジャパンはW杯イヤーに入り連敗続きで、本大会直前の2018年4月に誕生した西野ジャパンも、その経緯を踏まえると大きな期待を寄せにくかった。そしてご承知のように、今回の森保ジャパンはグループリーグの組分けが厳しかった。まさかのベスト16入り。もう一歩でベスト8だったと事実も、この3例に共通する事項だ。

 西野ジャパンは決勝トーナメント1回戦でベルギーと戦い、後半の途中まで2-0でリードしていた。そこから2-3で逆転負けした敗因は、相手に実力で劣ったこともあるが、内的な要因を挙げるならば西野監督の采配となる。具体的には選手の起用法と交代術。選手交代のタイミングが遅すぎた。

この記事は有料です。
たかがサッカー。されどサッカーのバックナンバーをお申し込みください。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

杉山茂樹の最近の記事