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価値観が一変。途中交代でベンチに下がることが恥ではなくなった時代との向き合い方

杉山茂樹スポーツライター
(写真:ムツ・カワモリ/アフロ)

 チャンピオンズリーグ(CL)準決勝、レアル・マドリード対マンチェスター・シティは、合計スコア5-5となり、延長にもつれ込んだ。選手交代枠はそれと同時に、最大5人から6人にまで拡大された。

 シティのグアルディオラ監督が5人で止めたのに対し、レアル・マドリードのアンチェロッティ監督は6人の枠をすべて使い切った。フィールドプレーヤーとして先発した10人中6人、つまりその半分以上の選手がベンチに下がったことになる。

 これは何を意味するか。ご承知の通り交代枠はコロナ禍以前3人だった。延長に突入した場合、最大4人まで認められたのも2017-18シーズン以降になる。これまで、ピッチに最後まで立ち続ける選手と、交代でベンチに下がる選手の割合は、前者の方が高かった。途中交代は怪我以外では、好ましくない理由に起因していた。ベンチに下がる姿はダメ出しをされたようで、哀れを誘ったものだ。

 それが5人制に変わるや概念は一変した。前線のアタッカーが交代でベンチに下がることは当たり前になった。ベンチに下がる選手が不満を露わにする機会も減った。延長に入り交代枠が6人になると、交代する人数の方が勝るわけで、ピッチにスタメン選手が4人しか残されていない姿を見ると隔世の感を抱く。最後までピッチに立った選手は、罰ゲームを強いられているようにさえ見て取れるほどだ。

 CL準決勝。レアル・マドリードでは実際、モドリッチ、ベンゼマといった看板選手が、途中でベンチに退いていた。彼らのような一流選手を途中で下げても、交代枠5人制の下では、プライドは傷つきにくくなっている。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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