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「サッカーはSBが活躍した方が勝つ」「サイドを制したものが試合を制す」。天皇杯決勝で再認識したもの

杉山茂樹スポーツライター
天皇杯決勝で切れ味鋭いドリブルを披露した川崎の右SB 山根視来(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 元日に行われた天皇杯決勝、川崎フロンターレ対ガンバ大阪戦。優勝した川崎で、目に付いた選手は両サイドバック(SB)だった。山根視来(右)と旗手怜央(左)。「SBが活躍した方が勝つ」とは、かつて欧州で、監督や評論家等々を取材した際にレクチャーされた、近代サッカーの格言のようなものだが、天皇杯決勝を観戦していると、その言葉が脳裏をすーっとよぎるのだった。

 右の山根は前半2度、右サイドの高い位置でSBというより、ウイングばりの突破力を披露。見せ場を作っていた。切れ味鋭いテクニカルな単独ドリブルだった。

 山根はご承知の通り、大学卒業後3シーズン過ごした湘南ベルマーレから、今季、川崎に移籍してきた選手だ。湘南時代の3年間は3-4-2-1を敷く湘南の、その3バックの一角を担っていた。

 センターバックだった選手が川崎に移籍するや右SBとしてプレー。それがはまり役となった。川崎の優勝を語る時、山根は外せない存在になる。昨季の川崎は、この右SBに問題を抱えていた。清水に移籍したエウシーニョの穴が埋まらなかったことにある。つまり、右SBが活躍しないサッカーに陥っていた。4位に沈んだ理由は解りやすかった。

 山根はまさに穴を埋める活躍をしたわけだ。年末に開催されたJリーグアウォーズでは、ベスト11にも選ばれている。しかし、山根が日本代表級の選手かと言えば、そうだと言い切るだけの確信が筆者にはなかった。評価を確定することができずにいた。

 そのモヤモヤは、元日の天皇杯決勝で披露した、切れ味鋭いドリブルを見て、雲散霧消した感がある。代表チームでも十分に行けると確信した。現在27歳。となると、遅咲きになる。20代後半で代表デビューを果たした選手は少ない。当然それは、20代後半で飛躍した選手が少ないことを意味している。

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スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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