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三笘薫、坂元達裕……Jリーグに大卒選手の割合が増すほど、日本代表は弱体化する

杉山茂樹スポーツライター
ポルトガル1部サンタクララへの移籍が報じられた守田英正(川崎)(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

 J1リーグを制した川崎フロンターレ。顔ぶれを見渡せば、大卒選手が多いことに気付く。中村憲剛(中大)、谷口彰悟、車屋紳太郎(以上筑波大)、山村和也、守田英正(以上流経大)、脇坂泰斗(阪南大)、小林悠(拓大)。

 今季、新人として活躍した三笘薫(筑波大)と旗手怜央(順大)も例外ではない。

 大卒選手が占める割合は年々急増している。高卒選手が圧倒的多数を占めたかつてと様相は一変した。Jリーグが軌道に乗った90年代半ばあたりは、新人選手と言えば、高卒が常識になっていた。1996年アトランタ五輪に臨んだU-23チームは、メンバー18人すべてが高卒選手で編成されていたほどだ。

 サッカー選手は30代になればベテランと言われる。選手の寿命は延びる傾向にあるものの、プロ野球選手に比べると、寿命は5歳程度短い。大卒でJリーグ入りすれば、プロ選手としての実働年数は高卒選手に比べてはるかに、短くなる。大学に進学する選手は、Jリーガーというトップ選手になるチャンスを半分、諦めているようにさえ見えた。

 海外でもそれが常識だった。クラブ社会が主流の欧州には、そもそも大学に日本の体育会サッカー部のような組織は存在しない。そしてJリーグには、そうした欧州のクラブ型社会の追究を理念に掲げて誕生した背景がある。Jリーグと非クラブ的な大学サッカーとは、相性の悪い関係にあった。

 それが一転、いまや大学のサッカー部は、Jリーガーの大きな供給源になっている。バブルの崩壊も大きな原因のひとつに挙げられるが、Jリーグが単独で欧州型のクラブ社会を目指すことの難しさを見せられている格好だ。日本のスポーツ界にインパクトを与えたことは確かだが、改革するには至らなかった。

「JFA・Jリーグ特別指定選手」という制度が適用されれば、大学選手が在学中からどこかのJクラブの一員として、試合に出場することは可能だ。他の競技より先進的に見えるが、これはあくまでも仮入部だ。大学のサッカー部を退部しない限り、正式な入部は卒業後となる。

 そこからチーム内でポジションを築いていくことになる。大卒選手は、4年間のロスを抱えながら、その後のサッカー人生と向き合うことになる。日本のサッカー界にとって、これは好ましくない話だ。大卒のJリーガーは3年経てば25歳。1年目でJリーグに慣れ、2年目でスタメンに定着し、3年目でチームの中心選手の一員となれば、これ以上、順調なステップはない。

 川崎で言えば、現在の守田英正がまさにそれに該当する選手になる。報道によれば守田は、ポルトガルリーグ1部(12月30日、現在10位)のサンタクララから声が掛かり、移籍する方向で話が進んでいるという。おめでたい話ではある。しかし一方で、25歳という年齢に引っかかりを感じる。遅い。もう2、3年早かったらという気がしてならない。

 欧州では、選手には活躍すれば、昇りのエスカレータが待ち受ける。サンタクララより上のクラブに移籍する道が開ける。だが、条件付きだ。それは年齢と関係する。若ければ若いほど売り手市場になる。昇りのエスカレーターの角度は鋭くなる。速度も速まる。若い選手の方が、商品価値が高いのである。次のクラブに売りやすい。

 守田がサンタクララでどれほど活躍し、何年で上位チームに移籍できるか定かではないが、1年1年、その可能性は狭まっていく。25歳の選手にあまり時間は残されていない。昇りのエスカレーターが30歳に近づいた選手に用意される可能性はまずないのである。

 19歳の久保建英との違いだ。実際、欧州でプレーする日本代表経験者は現在、40人弱いるが、大卒選手は伊東純也(神大)、シュミット・ダニエル(中大)、室屋成、長友佑都(以上明大)、武藤嘉紀(慶大)ぐらいに限られる。高卒選手が8割方を占めるが、それには大きな理由があるのだ。

 その一方で、欧州で活躍できそうな大卒選手は増えている。古橋亨梧(中大・神戸)、昨季のMVP仲川輝人(専大・横浜FM)、そして今季大活躍した三苫薫だ。三苫が川崎を卒業する日はいつ訪れるのか。来年なのか。守田と同様、3シーズンが経過する再来年になってしまうのか。

 セレッソ大阪の右ウイング(サイドハーフ)として、魅力的なプレーを披露した坂元達裕(東洋大)も、欧州で活躍できるレベルにあると見る。昨季、モンテディオ山形に入団。1年で卒業し、今季C大阪にやってきた。大卒2年目なので、すでに年齢は24歳。ものすごい才能の持ち主だとしても、将来、チャンピオンズリーグ級のチームに辿り着けない可能性がある。

 欧州組の数は増える一方だが、チャンピオンズリーガーの数は頭打ちだ。今季、舞台に立ったのは酒井宏樹、長友佑都(以上マルセイユ)、南野拓実(リバプール)、奥川雅也(ザルツブルグ)、中島翔哉(ポルト)の5人ながら、満足な出場時間が与えられた選手は酒井1人に限られる。日本代表がW杯で好成績を収めるためには、この現状を打開する必要がある。

 三笘は本来ならば、川崎で2年目のシーズンを送らずに、直ちに欧州へ参じるべきなのだ。Jリーグに大卒選手が増えるほど、日本代表は伸び悩む。そうした心配をしたくなる理由である。

スポーツライター

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、プレスパス所有者として2022年カタール大会で11回連続となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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