サッカー監督にも「感想戦」を。将棋に学ぶ敗者の振る舞い

(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 将棋で投了後、勝者と敗者に分かれた両棋士が、対局を振り返る「感想戦」。将棋に特別、詳しいわけでもないが、つい見てしまう。勝者が大喜びしたい感情を堪えているように見える表情より、目は敗者に向く。悔しさを堪え、対局を振り返る敗者の、なんとも言えぬ表情が画面に大写しになる。他の勝負事ではあまり見かけない光景だが、そこに将棋の魅力を見る気がする。

 サッカーの試合後は、両監督が軽く握手を交わす程度だ。テレビカメラは対照的な感情が交錯するその瞬間を捉えようとする。だが、それぞれには映されているという意識があるのか、そこで何かが浮き彫りになることは滅多にない。感情を抑えた大人の態度に徹しようとする。

 試合後に行われる監督記者会見は、別々に行われる。ひな壇に座り、各々記者からの質問を受ける。日本の場合、質問は概して優しい。敗者の内面を鋭くえぐるような、えげつない質問が投じられることはない。

 両監督に感想戦をさせたくなる。関心を寄せたくなるのは、勝者より敗者だ。敗者のその立ち振る舞いに興味を覚える。敗者の定義は様々だが、優勝者以外を敗者とすれば、参加者の中で1人を除く全員が敗者となる。

 様々な声が聞こえてくる。単純にがっかりする人もいれば、タラレバ話、言い訳をする人もいる。判定にケチを付ける人もいれば、相手を素直に讃える人もいる。全力を出し切ったと、清々しい表情の人もいれば、いつまでも引き摺る人もいる。感情が時間とともに変化することもある。無念さがいっそう押し寄せてくる場合もあれば、落ち着いてくる場合もある。

 ラグビーの「ノーサイド」はどうなのか。勝者と敗者が試合後、お互いに境界を作らず、仲間となって讃え合う。ロッカーに戻ると、ビールを酌み交わすこともあるそうだ。

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たかがサッカーごときに、なぜ世界の人々は夢中になるのか。ある意味で余計なことに、一生懸命になれるのか。馬鹿になれるのか。たかがとされどのバランスを取りながら、スポーツとしてのサッカーの魅力に、忠実に迫っていくつもりです。世の中であまりいわれていないことを、出来るだけ原稿化していこうと思っています。刺激を求めたい方、現状に満足していない方にとりわけにお勧めです。

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スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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