J1自動昇格圏内に順位を上げた横浜FC。三浦カズはどうする?

(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

「地域に根ざしたスポーツクラブ作り」を目指しスタートしたJリーグ。現在、J1からJ3に在籍するクラブは55を数える。また、将来Jリーグ入りを目指しているクラブも多数存在する。

 クラブ数は依然として増加の傾向にあるが、そのほとんどが育成型だ。選手がユースチームからトップチームを目指すプロセスは構築されていても、トップチームから降りていく下部組織はない。昇りの階段はあっても、下りの階段は用意されていない。戦力外になった、階段を降りなければならなくなった選手の選択は、移籍か引退かに限られる。

 欧州でも名のある大きなクラブは大抵この形態になるが、その国のトップリーグで戦うことを特段、目標に掲げていないアマチュア的なクラブになると、たとえば一線を退いたシニア選手がプレーする場所は、確実に用意されているのである。

 かつて訪問したオランダのアマチュアのトップクラブは、1軍から10軍まで備えていた。それぞれは年齢というより能力に応じて分類されていて、1軍チームには、かつてオランダリーグでプレーしていたプロ級選手もいれば、将来プロリーグでプレーする機会を狙う若手の有望選手もいた。

 2軍の内訳も同様で、来年は1軍かという伸び盛りの選手もいれば、3軍に落ちそうな下降線を辿ろうとしている選手もいた。来季は仕事が忙しくなりそうだから3軍に落としてくれと、自らクラブ側に申し出る選手もいるそうだ。

 各チーム内の年齢の幅は広く、学生であったり社会人であったり、様々な立場の選手がバラエティに混在している点にカルチャーショックを覚えたものだ。10軍チームに至っては、70歳以上の選手がゴロゴロいるとの話だった。「サッカー選手に引退はない」を地で行く環境がそこには広がっていた。

「サッカー選手に引退はない」は、引退について問われた三浦カズが、その度、口にしてきた台詞でもある。「アマチュアとしてプレーしたとしても構わない」とも述べている。欧州のみならず南米、ブラジルにもそうした社会は構築されていて、カズはかつてそうした環境に身を委ねていた経験があるからだ。

 現在52歳9ヶ月。いまなお横浜FCで現役生活を続けているその姿は、スポーツ選手の在り方を考えようとした時、画期的で進歩的かつ模範的に見える。

 しかし選手は出場してなんぼの職業だ。出場機会が減少すれば、次の居場所を見つけようとするのが本来の姿になる。カズの今季これまでの出場機会は、わずかに2試合。106分間に限られる。2016年20試合、2017年12試合、2018年9試合と徐々に減り続けてきたが、今季はついに2試合になった。0に近づく可能性が高い来季のことが心配になる。出場機会を求めようとするのであれば、階段を降りる必要性に迫られている。

 一方、所属クラブの横浜FCは昇り調子だ。昨日の試合は、J1昇格を懸けて争う徳島ヴォルティスとアウェー戦だった。もし勝利を飾れば2位。試合前3位の立場で臨んだ横浜FCにとって、これはまさに大一番だった。結果は1-0。大宮アルディージャと同勝ち点ながら、横浜FCは得失差で自動昇格圏内にポジションを上げた。

 残りは2試合。依然として予断は許さない状況だが、もし横浜FCがJ1に昇格すれば、カズの出番はさらに減ることが予想される。

 移籍のタイミングが訪れているような気がする。「アマチュアとしてプレーしたとしても構わない」と、生涯現役の姿勢を貫こうとすれば、遅かれ速かれ下りの階段を降りなくてはならない。来季のJ1で53歳になった選手が、出場機会を求めようとする姿も美しく映るとはいえ、下りの階段を綺麗に降りていく姿の方がより鮮やかで美しい。

 なにより日本のスポーツ界にとって画期的だ。出場機会に恵まれそうな場所がJ2の下位なのか、J3なのか、はたまたJFLなのか、なんとも言えないところだが、新たな居場所を見つけ、試合に数多く出場してもらった方が、ファンにとっても観戦機会が増えるわけで、歓迎すべき選択とは言えまいか。カズには他に類を見ないスポーツ選手像を極めて欲しいのである。その動向に目を凝らしたい。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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