森保Jの4-2-3-1が4-2-3-1に見えない理由。問われる中島、堂安と両SBの関係性

写真:岸本勉/PICSPORT(本文中も)

 パラグアイ戦。メンバー交代枠は6人の設定だった。そして両軍の監督はそれをフルに活用した。GKの交代はなかったので、フィールドプレーヤーだけで、20人中12人(各10人中6人)が後半の45分間に入れ替わった。

 後半はまさに親善試合らしいテスト色の強い試合となった。すなわち、結果としての価値があるのは前半で、後半の戦いは結果としての価値が低い。これは、親善試合は親善試合として割り切って考える習慣がある欧州で、浸透している捉え方でもあるが、そうした視点でパラグアイ戦に目をやると、日本の完勝ぶりはより際立つ。スコアは2-0で、得点が入ったのは前半だった。

後半右ウイングとして登場した久保建英
後半右ウイングとして登場した久保建英

 しかし、日本の強さとパラグアイの出来の悪さと、そのスコアはどちらを色濃く反映したものになのかと問われれば、後者であると言いたくなる。

 パラグアイ戦に先発した11人は、森保監督が考える現状のベストメンバーと見ていい顔ぶれだ。それだけに心配になる。この前半の戦いを手放しで喜ぶ気にはなれない。出るところに出れば逆に撃たれる。相手がそれなりの強者なら、カウンターの餌食になりそうなサッカーを日本はしていた。

 カシマスタジアムの眺めのいい2階席から俯瞰すれば、日本の4-2-3-1の3の両サイド(中島翔哉/左、堂安律/右)は、バランス的に内側に入りすぎているように見えた。4-2-3-1は、いまではすっかり見かけなくなった中盤ボックス型4-2-2-2と化していた。ボールを奪われる位置はおのずと真ん中寄りになる。逆襲を食いやすいのは外より内。すなわち日本はその危険性の高いサッカーに陥っていた。

 パラグアイのエドゥアルド・ベリッソ監督は、高い位置からプレスを掛けるサッカーを好む今日的な監督として知られる。試合後の会見でもそうしたサッカーがしたかったと述べている。やりたいことができなかった理由として監督が挙げたのは長旅の疲れだ。日本も19人が海外組なので、似たり寄ったりだと言い返したくなるが、そうは言っても日本選手にとっては勝手知ったるホーム戦だ。説得力という点ではやはり、冬の南米から高温多湿の日本に遠路駆けつけたパラグアイ側に軍配は挙がる。

 2022年11月~12月のカタールが、どれほどの気候になるか、なんとも言えないところだが、ロシアW杯のベルギー戦を戦ったロストフの気候(25度、湿度38%)に照らせば、パラグアイはベリッソ監督の狙い通り、より高い位置からプレスを掛けることができていた可能性がある。

中島翔哉が右足ドリブルで真ん中へ
中島翔哉が右足ドリブルで真ん中へ

 それはともかく、日本の「3」の両サイドは、左の中島が右利きで、右の堂安が左利きだ。いずれも利き足でボールを操作すれば、おのずと進路は内に向きがちだ。

 かつては、左は左利き、右は右利きが主流だった。それが左は右利き、右は左利きが目立つようになった原因は、サイドバック(SB)の攻撃参加と密接な関係がある。SBとウイング(サイドハーフ)によるサイド攻撃の共同作業化が進んだ結果だ。ウイングが少々内に入っても、SBが開いているのでサイド攻撃は成立する。

 その逆でも成立する。ウイングが大外で構え、SBがその内側を突く。アンジェ・ポステコグルー監督率いる横浜Fマリノスはこのスタイルだ。かつてのドイツ代表しかり。たとえばその右サイドは、ウイングのトーマス・ミュラーが大きく開き、その内側をフィリップ・ラームが突くというスタイルだった。

 いずれにしても問われているのは、両者のコンビネーションだ。パラグアイ戦の前半で言えば、中島と長友佑都(左)、堂安と酒井宏樹(右)だ。SBとの関係性の中で、中島と堂安が内にポジションを取ったのなら問題性は低いが、両者にはその時、SBの存在がイメージできていないように見えた。

停滞気味の堂安律
停滞気味の堂安律

 いっそのこと、中島と堂安のポジションを入れ替えてみたらとさえ言いたくなる。

 後半、出場した原口元気と安西幸輝(左)、富安健洋、久保建英(右)も同様。コンビネーションに難を抱えていた。左の原口には、特にその傾向が目立った。センターバックからSBに回った富安も久保に絡めなかった。はじめからそのつもりがないようにさえ見えた。

 監督采配に、そのあたりのこだわりが見られない。森保監督は、現行の4-2-3-1を、サイドアタッカーが両サイド各1人の3-4-2-1と同じようなノリで使用しているように見える。試合前、サンフレッチェ広島時代に採用していた3-4-2-1ではなく4-2-3-1を使用する理由について訊ねられた森保監督は「3-4-2-1と4-2-3-1どちらを選択するにしても原理原則は同じ」と、事実上、答えを誤魔化すような台詞を吐いている。その原理原則の中身を語らなければ、話は成立しない。

 そのあたりの釈然としない不透明感が、4-2-3-1上のウイングとSBの関係に露呈しているように思う。

 森保監督の4-2-3-1は4-2-3-1らしく見えないのである。西野さんの4-2-3-1方がよっぽど4-2-3-1らしい魅力をピッチ上に表現できていた。ボールをどの場所で、どのタイミングで「失う」か。どの場所、どのタイミングで「奪う」か以上に関心が湧く。W杯アジア2次予選。森保ジャパンの一番の注目ポイントはここになる。勝つか負けるかより心配になるほどである。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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