高評価の久保建英。MFかFWか。分かれ道はポジションに潜む

(写真:西村尚己/アフロスポーツ)

 4-4-2の右サイドハーフは基本的にはMFだ。中盤選手に分類されるが、FW色が少々濃くても布陣のバランスが大きく崩れることはない。4-2-4に近い4-4-2も世の中には普通に存在する。

 Jリーグの開幕週で川崎フロンターレと対戦し、0-0で引き分けたFC東京。その4-4-2のサイドハーフは文字通り中盤的だった。試合を押し気味に進めたのは川崎F。支配率で大きく上回った川崎Fに対しFC東京が引き気味に構え、カウンターで対抗したこともサイドハーフがFW的に見えなかった理由だろう。

 それは、FC東京の右サイドハーフとして78分間プレーした久保建英に対する印象そのものになる。

 FC東京の長谷川健太監督は試合後の会見で、17歳の彼をこう評した。

「風下の前半、ボールが落ち着かず、タメを作らないと攻撃の時間が作れない状況の中、(久保)建英が時間を作ってくれたことで、相手の川崎に嫌な攻撃を仕掛けることができた」

 その中盤的な動きを開口一番、高く評価。久保を称賛する長谷川監督のコメントはなおも続いた。

「DFの背後にいいボールを出してくれた。守備でも穴も作らなかった。子どものメンタルから大人のメンタルに変わりつつある。改めてこの1年間の成長を感じる。堂安(律)が欧州に行く前ぐらいのレベル。Jで経験を積んでU-20W杯でプレーすれば、欧州のクラブから声がかかるぐらいのレベルにある」

 そのプレーは目に見えて伸びている。肉体的に逞しくなり、プレーはずいぶん安定した。しかし、それでも彼はまだ17歳だ。選手としての評価を確定させるには早すぎる年齢だ。

 たとえばメッシ。17歳の頃から将来について何の疑いもないプレーをしていたが、バロンドールを史上最多タイとなる計5回も受賞する選手になるとは思わなかった。17歳のメッシにも驚かされたが、そこからさらに飛躍的な成長を遂げたことは、それ以上に驚かされる。

 思ったほど伸びなかった選手はいくらでもいる。割合はその方が多い。現在20歳の堂安にしても、将来、日本代表のエース格に成長するか、まだ太鼓判を押せる状態にはないのだ。

 久保の場合は近い将来、日本代表レベルに到達するのではないかと勝手に想像するが、問題はその先だ。日本サッカー史に燦然と輝く不世出の選手に成長していくのか。あるいは、ある時期に限り活躍する代表キャップ20~30回程度の選手に終わるのか。

 MFかFWか。それに深く関係するのはポジションだ。希少価値とされるのはFW。得点を奪える選手だ。試合を陰で演出するパッサーではなく、局面を自ら打開し、得点を決める選手は世界的に見て数少ない。世界が求めている選手だ。日本代表が躍進するために必要な素材でもある。

 MFと言うよりFW。久保が目指すべきはこちらだろう。

 メッシはなぜ、予想を超える伸びを示したのか。バルセロナで右ウイングとして登場したことと、それは大きな関係がある。デビュー以来、メッシはずっとFWだ。MFではない。アルゼンチン代表では中盤まで下がり、将軍然とプレーする。パスの出し手に回るが、バルサのメッシはそうではない。高い位置でボールを受け、ゴールを狙う。バロンドールを5回受賞した背景として、その高いポジショニングとそこで身につけた突破力、得点力を抜きにすることはできない。

 中盤選手化しかねない4-4-2のサイドハーフでは、メッシにはなり得ない。そう言いたくなる。MFとして使いたくなる理由は分かる。彼のような高い技術の持ち主が中盤にいれば、それこそタメができる。チームの状態はその結果、安定する。相手のサイドバックと対峙するポジションなので、守備の感覚を養うにも最適な場所だ。経験させるべきポジションかもしれない。4-4-2を採用した時、そのサイドハーフでの起用は妥当な選択になる。

 だがそれが、彼の将来にどこまで好影響を与えるかははなはだ疑問。FWで起用すれば、プレーは数段不確実になる。我慢が求められる。

 試合の途中でサイドハーフに収まるのなら悪くない。アトレティコのグリーズマンのように、1トップも、2トップの一角も、あるいは4-4-2のサイドハーフや4-2-3-1の3の両サイドやその1トップ下をこなす万能型のアタッカーであるなら話は別。選手として高い価値がある。

 中盤選手の概念が変わっていることも見逃せない。フィールドプレーヤーがDF、MF、FWに3分割された布陣はいま、それこそ4-4-2ぐらいだ。主流は4-2-3-1に代表される4分割。MFはその結果2つに分類された。攻撃的MFと守備的MFと言えば分かりやすいが、そう単純に分かれたわけではない。攻撃的MFは、MFというよりFW的になり、守備的MFは、文字通りMFになった。FWが2分割されたといった方が伝わるかもしれない。上がり目のFW(CF)と下がり目のFW。後者が1.5列と呼ばれることもFW的であることをイメージさせる理由だ。

 これは、従来の攻撃的MFがさらに攻撃的になり、FW化していかないと居場所がなくなることを意味している。かつての攻撃的MFのような匂いがする久保が、ピタリとハマるポジションは決して多くないのだ。4-3-3のインサイドハーフぐらいに限られる。4-4-2のサイドハーフも、本来ならもう少し縦への推進力が望まれるポジションだ。対応の幅を広げる必要性を感じる。

 まず、磨いて欲しいのはアタッカーとしての突破力。ドリブルで突き進む推進力だ。その点に関しては、この1年で特段、伸びている印象はない。逞しくなっているがスピード感はいまひとつ。ドリブルも技巧的ではあるがダイナミックではない。17歳の割には大人しい、勝負を積極的に挑まないまさに中盤化した選手になっている。

 岐路に立たされている気がしてならない。

 若干20歳ながら、鹿島アントラーズで今季から10番を背負うことになった安部裕葵も、主に左サイドハーフとしてプレーする。FWなのかMFなのか、彼もまた微妙なところに置かれている選手だ。昨季の終わり頃、訊ねてみた。FWとMF。目指しているのはどちらなのか、と。

「高校時代にやっていたのはトップ下ですが、鹿島にそのポジションはない。まだ19歳なので、これからについては、まだ分かりません」。返ってきた答えはこれだった。「19歳のサッカー選手に、自分自身の将来など分かるはずがない」と、言いたげな様子だった。

 久保や安部、さらに言えば、今季横浜でプレーしている三好康児にも言えることだが、小型で技巧的で、巧緻性の高そうな日本人選手が、外国人から嫌がられていることは明白だ。彼らは日本の武器になり得る、大成してもらいたい若手選手たちである。

 その成長に求められているのは大人の正しい関与である。日本サッカー界が育てるべきはまずFW。点が取れる選手だ。安易に中盤に下げるべきではない。せいぜい1.5列目。4-2-3-1に落とし込むなら3の辺りだ。

 時代が欲しているのは10番ではなく9番に近いアタッカーだ。かつて日本を席巻した「中盤天国」の復活は避けないと、時代から遅れることになる。川崎Fとの開幕戦を経て評価を高めている久保だが、その今後は楽しみでもあるが不安でもある。FWとして大成すれば、日本代表の成績に即、反映されることは見えている。

 日本の切り札になれるのか。その行方にはとくと目を凝らしたい。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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