Jクラブが今すぐ獲得に動くべき、付加価値の高い欧州組とは

写真:岸本勉/PICSPORT

 ドルトムントからトルコのベシクタシュへレンタル移籍した香川真司。買い取りオプション付きということだが、来季はどこでプレーすることになるのか。移籍金はおそらく高額だ。香川を買い取る財力がベシクタシュにあるのか。ベシクタシュをその気にさせるプレーを香川は披露することができるのか。

 間もなく30歳。サッカー選手として微妙な年齢を迎えている。ドルトムントよりレベルの高いチームへの移籍は現実的に難しい。用意されている階段は昇りではなく下り。そこをどのようにいい感じで降りていくか。

 その時々に応じたプレー環境が用意されているのがサッカーの特徴だ。昇りの階段のみならず、下りの階段もある。

 その下りの階段を最大限有効に活用しているのがカズこと三浦知良だ。間もなく52歳。頭は白くなるばかりだがJ2横浜FCという居場所を見つけ、プロ選手としてまさに枯れた味を発揮している。

 いまからおよそ20年前、30歳を過ぎたカズは、クロアチア・ザグレブ(現ディナモ・ザグレブ)に在籍していた。だが、出場機会は少なく、翌シーズンもザグレブにいることは難しい状況にあった。その一方で、一流選手としてのプライドは健在で、上昇志向を漲らせるその姿と、現実との間に隔たりを感じたものだ。妥当な選択は日本に戻りJリーグでプレーすることだが、カズの場合はその姿が都落ちに見えた。

 日本を離れ、欧州へ意気揚々と旅立っていった選手が、居場所をなくし帰国する姿は、都落ちという言葉が似合ってしまう。だがそれが、マイナスイメージに見えない選手もいる。

 キャラクターとそれは大きな関係がある。

 カズはクロアチア・ザグレブ退団後、京都、神戸を経て横浜FCでプレーすることになるが、都落ちを思わせた期間は、ほんの一瞬だった。直ぐにJリーグに溶け込んだ。

 そしてこう述べた。「引退は全く考えていない。自分を受け入れてくれる場所がある限りどこでもプレーする」と。ボロボロになっても僕は簡単には引退しませんよという、その泥臭く気取りのない姿によって、都落ちというある種の格好悪さはかき消されることになった。近寄りがたいキャラから、愛されキャラに変身を遂げることに成功。スターでありながら、身体の力がいい感じで抜け、自分の境遇を半分笑うような余裕が見て取れた。

 中田英寿はカズとは対照的だった。Jリーグに戻らず29歳の若さで引退。世の中を驚かせた。高額の移籍金がネックとなり身動きが取れなくなった影響かと思われるが、仮にそうでなくても、彼がJリーグで、たとえばその出身地のクラブであるヴァンフォーレ甲府のユニフォームに袖を通してプレーする姿は、想像しがたいものがあった。

 中田と同じ時代に活躍した小野伸二、中村俊輔、稲本潤一は、日本にソフトランディングをはたした。違和感なくJリーグに舞い戻ることができた。そして3人ともいまなお現役を貫いている。

 もう1人の大物、本田圭佑はどうだろうか。ミラン退団後、メキシコのパチューカを経て、昨年メルボルン・ビクトリーFCに加わったが、従来の大物と異なるところは、欧州でも日本でもない世界に居場所を求めたことだ。

 カズ的か中田的かと言えば中田的。庶民的ではないスターだ。ミラン退団後、直ちに日本でプレーしていれば、逃げ帰ったような印象を与えた可能性はあるが、メキシコ、オーストラリアでプレーすることで逆に、前例のない希少さを宿らせることに成功した。

 一方で昨年、カンボジア代表監督に就任。1人の現役選手が、ある国の代表監督に就くという過去に聞いたことがない行動に出て世間を驚かせた。カリスマ性は増すばかりだが、庶民性はそれと同じくらい失われているので、日本に戻りJリーガーとしてプレーした際の違和感は、はてしなく上昇したと言える。

 本田と同い年の岡崎慎司は、カリスマ性では本田に劣るものの、庶民性という点では断然、勝る。Jリーグでプレーすることになっても哀れを誘うことはない。むしろ、人気は上昇すると見る。Jリーグの人気にも貢献すると思う。

 こう言ってはなんだが、けっして巧い選手ではない。小野伸二、中村俊輔とは違う。魅力は馬力。技術とは異なり、これは年齢と共に衰える要素だ。賞味期限は迫っていると言うべきだろう。

 所属のレスターで出場機会が激減。苦戦を強いられている様子だが、幸いにも契約は今季で満了とのこと。移籍金が不要ならば、一刻も早く帰国すべきだろうし、そうあって欲しい選手だ。

 本田、岡崎、そして長友佑都も現在32歳。同い年だ。彼も売りは技巧ではない。どちらかと言えば岡崎似だ。すばしっこさを一番の拠り所に、ここまで地位を築いてきた。帰国してJリーグでプレーするつもりがあるなら早い方がいい。庶民性にも溢れている。人気に貢献すること請け合いだ。

 長谷部誠はどうだろうか。彼も特段、巧い選手ではない。日本代表では密集地帯でプレーをするとコントロールを乱しがちだった。Jリーグでプレーすると、カリスマ性が失われる心配がある。一方、所属クラブ(フランクフルト)では、センターバックという日本代表とは異なるポジションを獲得。これがはまり役で、欠かせない選手となっている。海外組の中においても一番と言いたくなる活躍ぶりだ。

 元日本代表主将でもある。人格者にも見える。将来、この世界で有力者になる可能性を秘めた人物であるならば、日本に戻らず国際感覚にいっそう磨きをかけて欲しい。

 そして冒頭で触れた香川真司だ。タイプはどちらかと言えば中田英寿、本田圭佑に近い。いい意味で自分をケラケラっと笑える性分には見えない。鎧を身に纏うスター。いま、Jリーグに戻れば都落ち感を発露させることになるだろう。ベシクタシュで結果を残し、買い取り契約を結ぶことが最善の道ではないだろうか。

 選手に問われているのは、行くタイミングだけではない。現役を長く続けようと思えば、帰国のタイミングも重要になる。Jリーグにとってもそれは貴重な存在で、ソフトランディングを決める選手の数が多いほど盛り上がる。

 岡崎はそうした意味でとりわけ旬な選手だ。欧州で通用するのか。これまで輩出した欧州組の中で、日本を離れる際、最も心配された選手の1人かもしれない。付加価値たっぷりの成功者。Jクラブには早々、獲得に動いて欲しい。獲得したチームの客足が伸びること請け合いである。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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