優勝したザックJとの決定的な違いとは。南野、堂安は8年前の本田、香川級にあらず

写真:岸本勉/PICSPORT(本文中も)

 UAE(アラブ首長国連邦)で開催されているアジアカップ。その初戦で日本は、対戦チームの中で最弱国とおぼしきトルクメニスタンに3-2で勝利した。考えられる中で最大限の苦戦を強いられた格好だ。

 試合後、マイクを向けられた森保一監督は「初戦の難しさ」を口にした。何事も初戦は難しい。それはそうかもしれない。しかし相手はトルクメニスタンだ。それを難しいと言ってしまうと、世の中の事象のほとんどが難題になる。実力的に大きく劣るトルクメニスタンに、日本はなぜひどい戦いをしてしまったのか。

 想起するのは8年前、カタールで行われた2011年のアジアカップだ。日本(ザックジャパン)はヨルダンと初戦を戦い、終盤まで0-1でリードされていた。吉田麻也の同点弾が決まったのは後半のロスタイム。引き分けが精一杯だった。

 ザックジャパンは次第に調子を上げ優勝を飾ったが、時の代表監督、ザッケローニがその大会後に、初戦は難しいと言ったのならば納得する。成果を収めた監督が大会を振り返ったとき、初戦の難しさについて触れたなら腑に落ちる。しかし、トルクメニスタンに苦戦した直後に、初戦の難しさを理由にされてもハイそうですかと簡単に納得することはできない。その台詞を安易に口にすべきではないと逆に忠告したくなる。

森保采配も心配の種
森保采配も心配の種

 ザックジャパンの話を続ければ、アジアカップに臨んだ2011年大会当時は、日本代表が史上最も強く見えた瞬間だった。勝ちそうな気配を漂わせていた。なにより頼りになる中心選手がいた。

 まず、本田圭佑。複数の相手選手に囲まれても、彼はボールを奪われそうもない圧倒的なキープ力を示した。2018年ロシアW杯後、本田は代表チーム引退を表明したが、選手としてのピークはその7年前で、その後、2011年当時を超えるプレーはできなかった。

 ポジションは1トップ下。4-2-3-1の3の真ん中である。森保ジャパンで言うならば、南野拓実のポジションだ。当時、本田は24歳で、現在の南野も、間もなく24歳を迎える。つい比較したくなるが、当時の本田と現在の南野の間には、著しい開きがあるというべきだろう。

 トルクメニスタン戦。森保監督はメンバーを1人しか代えなかった。代えなければならないのに代えられなかった。代表監督としての資質に大いなる疑問を抱かずにいられない看破できないポイントになるが、それはともかく、そんな身動きができず固まってしまったかに見えた森保監督から唯一、交代を命じられた選手が南野だった。

 大会前、堂安律とともに南野は最大限もてはやされていた。西野ジャパンから森保ジャパンに切り替わるタイミングで代表チームに登場した南野は、5試合戦った親善試合にいずれも出場を果たし、そして4得点をマークした。中でも、ハイライトとなったウルグアイ戦では2得点を叩き出した。しかし、トルクメニスタン戦ではいいところなくベンチに下がった。頼りにならなそうなプレーを見せた。

 もう1人の注目選手、堂安も8年前の本田に迫るプレーができなかった。得点こそ記したが、チームをよい方向に導くプレーができたかといえばノーだ。本田との共通項は左利きという点だ。強引そうなプレーも類似する。上背こそ違いはあるが、両者は比較しやすい関係にある。それだけに差は目立った。一言でいえばワンパターン。堂安は相手から読まれやすい、非頭脳的な賢さに欠けるプレーをしてしまった。

ワンパターンな非頭脳的プレーに終始した堂安律
ワンパターンな非頭脳的プレーに終始した堂安律

 2011年アジアカップに臨んだザックジャパンには、さらに、当時ドルトムントで、飛ぶ鳥を落とす勢いにあった香川真司もいた。本田も09-10シーズンのチャンピオンズリーグで、CSKAモスクワの一員としてベスト8に進んでいるが、現在の南野(ザルツブルグ)、堂安(フローニンゲン)と、当時の香川、本田との間には、所属チームのレベルという点においても著しい開きがある。本田と香川の欧州内における評価は、すでにある程度、確定された状態にあったのだ。

 南野と堂安。チーム結成以来、5戦負けなしの森保ジャパンを象徴するこの2人だが、客観的に見て持ち上げられすぎ。当時の本田、香川のレベルにはない。さらに8年前には遠藤保仁がいた。現在の森保ジャパンで対比すべきは柴崎岳になるが、頼りがいのある選手に見えるのは、当時の遠藤だ。柴崎は所属チーム(ヘタフェ)で出場機会を得られていないこともあるのだろう。プレーに自信が漲っていない。ポジション的にもチームのヘソにならなければならない選手だが、それができていない。

頼みの綱である大迫勇也も……
頼みの綱である大迫勇也も……

 8年前との比較で、勝っているのは大迫勇也ぐらいになる。トルクメニスタン戦でも2ゴールをマーク。とりわけ、左の原口元気からパスを受けるや、中央で鮮やかなターンを披露した同点弾は、特別感を漂わせる高級なゴールだった。森保ジャパンは大迫でもっている。大迫頼みといっても言い過ぎではない。

 ところが、11日の練習で肝心の大迫が負傷。別メニューでの調整を強いられることになった。

 ここで問われるのは監督の力になるが、前述の通り森保監督はトルクメニスタン戦でメンバー交代を1人しか行わなかった。決勝戦まで7試合戦うつもりと言いながら選択肢、新たな可能性の追求を怠った。選手以上に頼りなく見える。ともするとバラ色に見えた世界は一転、暗雲が立ちこめた状態にある。次戦のオマーン戦には勝てるだろう。決勝トーナメント進出も楽々果たすだろうが、その先は危ない。このままでは7試合目を前に息切れする。簡単にはいかないと思う。

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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