前回コロンビア戦、「支配率で勝る日本」が惨敗した原因は改善されているか

2014年ブラジルW杯 日本 1-4 コロンビア(写真:ロイター/アフロ)

 コロンビアは4年前、日本がブラジルW杯グループリーグの3戦目に対戦した相手だ。1998年フランス大会から前回大会まで5大会連続で本大会に駒を進めている日本だが、その間、2度対戦しているのはクロアチア(1998年と2006年)のみ。今回で2度目となるコロンビアは、それ以来の再戦国となる。

 日本にとっては前回の最終戦と今回の初戦。4年を挟んだ”連戦”だ。W杯の90年近い歴史上でも、これは珍事と言っていいだろう。

 コロンビアの監督は4年前と同様、ホセ・ペケルマン。戦い方に大きな変化はないだろう。前回と同じパターンで敗れれば、日本は学習能力の低い愚かな国ということになる。コロンビア戦の敗戦はこの4年間、日本のモチベーションとして機能してきたのか。日本はキチンと悔しがり続けることができたのか。

 まずは前回、4年前の戦いを振り返ってみたい。

 前半、試合を押していたのは日本だった。前半17分、コロンビアにPKを許し、先制点を奪われるも、前半終了間際、岡崎慎司のゴールで同点とする。しかし、後半に入るや立て続けに失点。終わってみればスコアは1-4だった。

 1-4といえば、2006年ドイツW杯でブラジルに敗れたスコアと同じだ。日本が過去5大会で戦った17試合中、3点差負けは一番の大敗になる。だが、どちらが見るに耐えない惨憺たる内容だったかと言えば、ブラジル戦ではなくコロンビア戦だ。試合がもう5分あれば、1点どころか2点奪われていたとしてもおかしくない、まさに屈辱的大敗だった。試合の終え方として、それは最悪だった。

 しかし、日本はボール支配率で強者コロンビアを大きく上回った。56.7%対43.3%。おそらくこれは、W杯本大会で過去17戦した中で最高の数値だったと思われる。それでいてスコアは1-4。過去最悪の試合を展開した。この支配率とスコアの関係に、日本サッカーの問題点は隠されていた。

 キャプテンの長谷部誠は試合後「4点奪われましたが、我々らしい攻撃的なサッカーを最後まで展開することができた」と、胸を張った。清々しい表情が印象に残るが、彼に対するこちらの評価は、むしろ下がることになった。これは討ち死に覚悟の、無鉄砲な戦い方そのものだった。

 日本にはそのとき、ごくわずかながらベスト16入りの可能性があった。逆にコロンビアはすでにベスト16入りを決めていて、日本戦は事実上の消化試合だった。この精神的な差が、コロンビアを”受け”にまわらせた理由かもしれないが、日本はその流れにはまり込んでしまった。

 日本がボールを奪われる位置はけっして低くなかった。平均値で自軍ゴールから79.6mの高さを維持した。だが、安全か否かは単純に高さだけでは決まらない。内か外かも重要なポイントになる。安全なのは内より外。自軍ゴールからより遠くなるからだ。ライン際とド真ん中では、同じ高さならゆうに10m、2プレー分程度の差が生まれるとされる。

 コロンビア戦のザックジャパンが、ピッチを縦に4分割したときの中央(2つ分)のエリアで奪われた割合は70.4%に及んだ(外は29.6%)。

 ジーコ以降の日本代表歴代6チームを調べたとき、ボールを外で失う割合が最も高かったのはアギーレジャパン。内と外は、65.1%(内)対34.9%(外)の関係だった。ザックジャパンとの差は、それぞれおよそ5%強。

 この真ん中で奪われた割合から、攻め切った割合(相手のペナルティエリア内で奪われた割合)を引けば、”真ん中の中途半端な位置で奪われた割合”になる。ザックジャパンとアギーレジャパンをこの割合で比較すると、差はさらに拡大した。アギーレジャパンが33.8%なのに対し、コロンビア戦のザックジャパンは43.6%。真ん中の危ない位置で奪われる頻度が高いサッカーをした。

 以上のデータは、筆者の新刊『SOCCER GAME EVIDENCE 36.4%のゴールはサイドから生まれる』から引用したものだが、 ザックジャパンが、「攻め込んでは真ん中の危ない位置で奪われ、カウンターをくらう」を繰り返したことは、そこに記載されたデータから読み解くことができる。

 繰り返すが、その直後に就任したアギーレは、ボールを奪われることを半ば想定し、外を有効に使いながら用心深く攻めようとした。日本サッカーは、コロンビア戦の反省を活かし、いい方向に進むかと思われた。ところが、アギーレは八百長疑惑で解任の憂き目に遭い、そしてハリルジャパンが誕生した。

 ハリルジャパンのボール支配率は、歴代日本代表の中で最低の数値を示した。ザック時代には57.4%、アギーレ時代には61.5%まで達したその数値は、ハリル時代になると48.1%にまで急落。従来の座標軸上から外れたサッカーでハリルジャパンはW杯に臨もうとした。

 西野ジャパンは、3-4-2-1で戦ったガーナ戦では怪しいムードを漂わせたが、先のスイス戦、パラグアイ戦では、ザック~アギーレ系の路線に回帰したようなサッカーを見せた。

 ボールの”奪い方”もさることながら、前回コロンビア戦の教訓として活かすべきはボールの”奪われ方”だ。

 コロンビアを相手に、どこでどうボールを奪われるか。前回のコロンビア戦は、悔しがるべきポイント、すなわち改善点はハッキリしていた。そして、そこさえ直せば、もう少しいい勝負はできるという4年前に抱いたこちらの思いは、いまなお変わらない。

 奪われたら即、カウンターを浴びそうな、安易な中央攻めは禁物。奪われることを想定しながら、ボールを運んでいけるか否か。

 相手のレベルが高ければ高いほど、自軍から遠い距離で奪われても危なくなる。危ないポイントでボールを奪われる回数と失点は比例する。

 4年間を挟んだ”連戦”の、これが最大の観戦ポイントだと思う。計画的な奪われ方を追究しないと、時計の針は4年前に戻ってしまうのだ。日本サッカーの進歩を世界にアピールするためにも、西野ジャパンには、反省を活かした学習能力の高いサッカーを実践してほしいものである。

(集英社 webSportiva 6月18日掲載原稿)

スポーツライター、スタジアム評論家。静岡県出身。大学卒業後、取材活動をスタート。得意分野はサッカーで、FIFAW杯取材は、2018年ロシア大会で連続10回現地取材となる。五輪も夏冬併せ9度取材。モットーは「サッカーらしさ」の追求。著書に「ドーハ以後」(文藝春秋)、「4−2−3−1」「バルサ対マンU」(光文社)、「3−4−3」(集英社)、日本サッカー偏差値52(じっぴコンパクト新書)、「『負け』に向き合う勇気」(星海社新書)、「監督図鑑」(廣済堂出版)など。最新刊は、SOCCER GAME EVIDENCE 「36.4%のゴールはサイドから生まれる」(実業之日本社)

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