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NBAオールスターの先発にドンチッチ、ポール、ブッカーではなくモラントを選んだ理由

杉浦大介スポーツライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 現地1月27日、NBAは同2月20日に開催されるオールスターゲームに出場するスターター(先発メンバー)を発表した。スターターの10人(フロントコートから3人、ガードから2人)はファン、選手、メディアの投票で決められ、ファン投票は50%、選手とメディアはそれぞれ25%の比重で計算される。

 今回のメディア投票にはアメリカとカナダ及びグローバルのメディア関係者約100人が参加。私もメディアパネリストの一人として、両カンファレンスのスターター5人ずつを選出した。投票結果、選考過程をオープンにするアメリカの通例にならい、ここで自身の選出理由を説明していきたい。

 第2回はウェスタン・カンファレンス編―――。

 第1回 ヤングか、ラビーンか NBAオールスターの投票権を得た私が頭を悩ませた最後の1人

【ウェスタン・カンファレンス】

筆者が投票したスタメン5人

フロントコート

レブロン・ジェームズ(ロサンジェルス・レイカーズ)

ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)

ルディ・ゴベア(ユタ・ジャズ)

ガード

ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

ジャ・モラント(フェニックス・サンズ)

 まず最初に「鉄板」の選手から挙げておくと、ガード部門のカリー、フロントコート部門のレブロンとヨキッチは説明の必要はないだろう。

 3人ともそれぞれ強豪チームの看板を張るスーパースターたちであり、今季も揃って素晴らしい成績を残してきた。中でもヨキッチは少々地味ながら、MVPを初受賞した昨季よりも質の高いプレーをしているという声もある。

 案の定、最終結果を見ると、この3人には投票した98人のメディアのすべてが票を投じている(イースタン・カンファレンスのケビン・デュラント、ジョエル・エンビード、ヤニス・アデトクンボも同じくメディアの得票率は100%)。

ヨキッチ(背番号15)、レブロンの選出は文句なし
ヨキッチ(背番号15)、レブロンの選出は文句なし写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 残るガード1人、フロントコート1人に関しては、多少思案する必要はあったものの、最終的にはそれほど難しい選考ではなかったというのが正直なところではある。本来は群雄割拠のはずのガード部門でも、今年はモラント以外の選出を考えることはできなかった。

 今季最大のライジングスターとなかった感のあるグリズリーズの核弾頭は、リーグで4人しかマークしていない平均25-6-6(得点-リバウンド-アシスト)をクリア。毎晩のようにダイナミックなハイライトを演出し、チームをカンファレンス3位にまで押し上げる推進力となった。小規模マーケットチームのグリズリーズを全米的な注目チームにしたその功績は計り知れない。

 もちろん他にも候補がいないわけではなく、ダラス・マーベリックス(マブス)で絶対的な存在になったルカ・ドンチッチ、昨季ウェスタンを制したフェニックス・サンズで両輪を形成するクリス・ポール、デビン・ブッカーも十分に“夢の球宴”のスタメンに値する。

 ドンチッチの平均アシスト、リバウンドはモラントを大きく上回っている。加えてドンチッチ抜きの日のマブスは6勝9敗、モラント不在時のグリズリーズは11勝2敗と、チームにおける不可欠度はマブスの天才児が上かもしれないことを指し示すデータもある。また、今季もリーグ最高勝率を残すサンズの2大エースももちろん評価は高く、中でも平均アシストでリーグ1位、スティールでは同3位のポールのフロアリーダーぶりは感謝されて然るべきだろう。

ポール、ブッカー(背番号1)といった好選手がいるにもかかわらず、リーグ最高勝率のサンズから1人も選出されないのはおかしいという意見も正当なものに思える
ポール、ブッカー(背番号1)といった好選手がいるにもかかわらず、リーグ最高勝率のサンズから1人も選出されないのはおかしいという意見も正当なものに思える写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ただ・・・・・・それでもやはり今季はモラントの衝撃が大きく、その価値の高さはメディア、ファンだけでなく、選手間投票でもカリーに次ぐ2位の票を集めたことが示している。

 時に数字を超えたインパクトを生み出す選手が現れるもの。今季はグリズリーズの背番号12がそれにあたる。オールスター本戦でも、モラントがお茶の間のファンの度肝を抜くようなビッグプレーを連発しても驚くべきではない。

 ポール・ジョージ、カワイ・レナード(ともにロサンジェルス・クリッパーズ)、アンソニー・デービス(ロサンジェルス・レイカーズ)といった常連がそれぞれ故障で脱落した今季、フロントコートの3番手は、ゴベアの鉄壁の守備と向上して久しいオフェンスのバランスの良さを買った。

 ウェスタン4位のジャズ内でもゴベアの重要度は明白であり、平均16.0得点、15.1リバウンド、2.3ブロックと数字も見事。ウォリアーズの“ディフェンスの司令塔”であるドレイモンド・グリーン、ミネソタ・ティンバーウルヴズの向上の一因となったカール・アンソニー・タウンズも良いが、総合的にはゴベアが上だろう。

 ご存知の通り、実際にはゴベアではなく、ファン投票で多くの票を集めたアンドリュー・ウィギンスがフロントコートの一角としてスタメン入りしたことが大きなニュースになった。ウォリアーズ移籍後に大きく向上したウィギンスの初のオールスター出場自体は特に異論はない。本来であれば、清涼剤的なストーリーになるはずだった。それが予想外の形でスタメン入りしたために、一部から揶揄される結果になったのは少々残念ではある。

ウィギンスの球宴スタメン選出は最大のサプライズでだった
ウィギンスの球宴スタメン選出は最大のサプライズでだった写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

実際に選出された5人

フロントコート

レブロン・ジェームズ(ロサンジェルス・レイカーズ)

ニコラ・ヨキッチ(デンバー・ナゲッツ)

アンドリュー・ウィギンズ(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

ガード

ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)

ジャ・モラント(フェニックス・サンズ)

スポーツライター

東京都出身。高校球児からアマボクサーを経て、フリーランスのスポーツライターに転身。現在はニューヨーク在住で、MLB、NBA、ボクシングを中心に精力的に取材活動を行う。『日本経済新聞』『スポーツニッポン』『スポーツナビ』『スポルティーバ』『Number』『スポーツ・コミュニケーションズ』『スラッガー』『ダンクシュート』『ボクシングマガジン』等の多数の媒体に記事、コラムを寄稿している

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