今は”梅雨末期”という防災意識を、九州では線状降水帯がいつ発生してもおかしくない環境場が続く
際立った暖湿気が九州を指向へ
今週の中頃にかけて、九州を中心に非常に大雨危険度の高い状態が続きます。まさに典型的な梅雨末期の集中豪雨型の気圧配置となりますので、先月下旬に記録的に早い梅雨明け発表(速報値)があったことは一度忘れて、今は梅雨末期であるという防災意識が必要です。
上図は、集中豪雨をもたらしかねない、水蒸気をたっぷりと含んだ際立った暖湿気(350K以上)の予想で、強い西風に乗り、東シナ海から九州方面に舌状に流れ込んでくる様子が分かります。
これは気象予報士ならば、おそらく誰もが感じるであろう危険な姿で、ちょっとした気流の収束や山沿いで上昇流が強まるなど、この暖湿気を上空へ持ち上げるわずかなきっかけが生じれば、猛烈な雨につながり、しかも上空の風に沿うように次々と積乱雲が線状に発生してもおかしくない状況になります。
線状降水帯発生環境6条件も揃う
上図は少々専門的なもので、線状降水帯発生環境の6条件(雲頂高度、水蒸気移流、上空の湿り、上昇流の強さなど)を計算したものですが、東シナ海から九州付近では広く6条件の環境場が続き、さらに日本の南海上から伊豆諸島付近へも6条件の合致場がのびている状況です。
この6条件が揃っているからといって、必ずしも線状降水帯が発生するわけではなく、むしろ発生しないことの方が圧倒的に多いのですが、線状降水帯が発生した場合はほとんどがこの6条件の環境場となっていますので、間違いなく危険度の高い領域だということができます。
先週の15日(金)には先月1日から運用が始まった線状降水帯予測が初めて九州北部と南部に対して出されましたが、結果として、16日(土)にかけて、線状降水帯の発生はありませんでした。
今週前半の大雨危険度は、この時以上となるおそれがあり、再び気象庁からは線状降水帯予測が出されてもおかしくない環境になるものと思われます。
総雨量は300ミリから500ミリ以上のおそれも
上図はコンピュータが計算したあす19日(火)18時までの24時間の最大雨量で、降水が強化された場合の計算となりますが、九州北部には紫色の300ミリ以上の所も出現しています。
このあと活発な雨雲が九州南部へ南下するため、あさって20日(水)にかけては、鹿児島県を中心に雨量がかなり増え、記録的な大雨となるポテンシャルも踏まえている状況です。
九州に限定した気象庁からの最大予想雨量では、あす19日(火)午前6時までの24時間に、九州南部250ミリ、九州北部200ミリ、さらにその後、あさって20日(水)午前6時まで24時間に、九州南部200ミリから300ミリ、九州北部100ミリから200ミリとなっており、総雨量は300ミリから500ミリ以上となってもおかしくないような予想です。
線状降水帯が発生するような場合は、さらに局地的に雨量が増えるおそれがあり、九州といえども、危険度が急激に高まり、大きな河川が一気に増水するような事態も考えられます。
今後気象庁から線状降水帯予測などが出される可能性も十分にあると思われますが、とにかく今週前半は梅雨明けしているということは一度忘れて、今は梅雨末期の大雨期なんだという防災意識を持ち、早め早めの避難行動をとっていただきたいと思います。