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「梅雨空」戻る前に「猛暑」のおそれ

杉江勇次気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

猛暑の兆し?

この夏は全国的に厳しい暑さとなることが予想されていますが、その気になる兆候が少し現れてきたようです。それは南シナ海やフィリピン周辺の海水温の上昇。先月5月の海水温の平年偏差をみてみると、赤い○の中、南シナ海やフィリピン周辺で海水温が平年より高くなっているのが分かります。

2013年5月の海水温
2013年5月の海水温

海水温が高くなると、その周辺で上昇気流が盛んになり、対流が活発な状態となります。そして、この上昇した空気が北側にあたる中国大陸や日本付近に下降し、高気圧を強める結果、猛暑となることが多いのです。3年前の2010年、日本付近が記録的な大猛暑に見舞われた際も、この周辺の海水温は高いまま経過しました。2010年7月の海水温の平年偏差をみると、広範囲で高くなっているのが分かります。

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一方、青い○で囲んだ太平洋東部赤道域に注目してみると、平年より海水温の低い海域が広がってきました。このような状態が顕著になると、ラニーニャ現象と呼ばれるようになり、この現象は、特に日本に猛暑をもたらす大きな要因とされています。ラニーニャ現象が発生すると、以下のようなメカニズムで日本付近の高気圧が強まり、結果として猛暑になりやすくなります。

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2010年の大猛暑の時はラニーニャ現象も発生し、日本付近の太平洋高気圧を一段と強めました。現在、気象庁からはラニーニャ現象が発生しているという発表はありませんが、太平洋東部赤道域の海水温が平年より低くなってきているのは確かで、今後も推移を見守る必要があるでしょう。気象庁からは6月10日に最新の監視情報が発表されます。

来週は早々と猛暑到来か?

ところで、大猛暑となった2010年の気温推移をみてみると、5月までは寒暖の変化が大きかったものの、海水温偏差の大きくなった6月以降は、平年より高い状態が続き、記録的な大猛暑となりました。

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そして、今年も5月までは2010年と同じように寒暖差の大きな経過をたどっています。では、今後どうなるのか?目先、来週はかなりの高温となる可能性が出てきています。フィリピン周辺の海水温の上昇に一因があるとはまだ断定は出来ませんが、来週、日本付近で一気に高気圧が強まり、梅雨空が戻る前に、かなりの暑さがやってくる可能性があります。(図中のHは上空高気圧の中心を現します。)

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今年、これまでに30℃を超える真夏日はかなりの地点で出現しているのですが、更に広範囲でしかもこれまで以上の高温となる可能性もありそうです。場合によっては35℃以上の猛暑日地点が続出するというおそれもあります。早々に梅雨入りの発表があった今季ですが、本格的な梅雨空となるのは、来週の猛暑が終わってからとなるかもしれません。

(上図は気象庁発表資料に加工了承済み)

気象解説者/気象予報士/ウェザーマップ所属

人の生活と気象情報というのは切っても切れない関係にあると思います。特に近年は突発的な大雨が増えるなど、気象情報の重要性が更に増してきているのではないでしょうか? 私は1995年に気象予報士を取得しましたが、その後培った経験や知識を交えながら、よりためになる気象情報を発信していきたいと思います。災害につながるような荒天情報はもちろん、桜や紅葉など、レジャーに関わる情報もお伝えしたいと思っています。

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