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「好奇心旺盛な人」は、創造的なのか〜生みの苦しみに耐えられる人が真に創造的なのではないか〜

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
新しいものが好きな人が新しいものを作れるわけではない(写真:アフロ)

■「好奇心旺盛」は社会的望ましさが高い

昨今、世の中はその創造性によって企業間の勝負が決まるようにどんどんなってきており、そのためか、知的な「好奇心」があることを求める人物要件として掲げている会社も大変多くなっています。

基本的に、「社会的望ましさ」の高い言葉と考えてよいと思われます。「好奇心」とは、「奇なるものを好む心」ですから、「珍しいことや未知のことなどに興味を持つ心」を指します。

創造性とは新しいことを生み出す力ですから、「好奇心」を持っている人は新しいこと≒今までに経験したことのない、珍しいこと、未知のことに興味を持つはずだということで、人物要件になっているのでしょう。

■創造とは多くの場合何かと何かの組み合わせ

創造とはよく「ゼロから1を生み出す」ようにも言われますが、本当のところは「既に存在しているもの同士の新しい組み合わせ」であることがほとんどです。

そう考えると、好奇心が旺盛で、その結果、多種多様な知識を持っている人は、その知識同士の「新しいつながり」を見つけるのも得意かもしれません(というよりも、多様な知識がなければ、その新しいつながりもないですよね)。

組織の創造力を高めたい企業にとっては、やはり好奇心を持った社員は期待の星に見えるのではないでしょうか。

■新しいもの好きが新しいものを作れるわけではない

ただ、ここに一つ問題があります。好奇心の旺盛な人は、もちろん上記のように、新しいことに強い関心を持つ傾向はありそうなのですが、新しいこととは創造性の「結果」であって、「結果」に興味を持って面白がる人が、それを生み出すことができるかどうかは別ということです。

誰にでも好きなミュージシャンがいると思いますが、ミュージシャンの作る楽曲を享受することと、その楽曲を作れるかどうかは全く違うことだと言えば、お分かりになっていただけると思います。ある領域のオタクで、それについてはどんな細かいことでも知っている人だからと言っても、その領域で何かを生み出せるわけではありません。

■真に創造性のある人とは、生みの苦しみに耐えられる人かも

別の観点で考えても、好奇心旺盛な人は、むしろ創造性が低い可能性があります。創造という行為は「生みの苦しみ」という言葉もあるように、長期間にわたる辛抱を必要とする場合もあります。一瞬のひらめきで何かが創造されたように思えても、多くの場合、その背景には長い間の深い思考などがあるものです。

一つのことを考えて考えて考え抜いて、初めてある時に思考がブレイクスルーするわけです。そう考えると、好奇心が旺盛な人は、いろいろなことに目移りして、一つのことを考え続けるのは苦手な場合もありそうです。

結局、好奇心も、それが創造性につながるかどうかは、一概には言えないということです。単に知識を享受する人なのか、生みだせる人なのかをきちんと見極めなくてはなりません。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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