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うちのチームは心理的安全性が高いのだろうかと疑問に思ったリーダーが持つべき7つの意識

曽和利光人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長
めっちゃ議論しました。(写真:アフロ)

◾️そもそも「心理的安全性」とは

「心理的安全性」(psychological safety)とは、ハーバード大学の組織行動学者エイミー・エドモンドソンが提唱した心理学用語で、「このチームは、ほかのメンバーが、自分が発言することを恥じたり、拒絶したり、罰を与えるようなことをしない確信が持て、対人リスクをとるのに安全な場所であるとの信念がメンバー間で共有された状態」を指します。

Googleのプロジェクト・アリストテレスという社内リサーチで、「心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低く、多様なアイデアをうまく利用でき、収益性が高く、マネジャーから評価される機会が2倍多い」と報告されたことで改めて脚光を浴びた概念です。

◾️「切磋琢磨」がないなら「心理的安全性」とは違う

さて、このような「確信が持てる」とか「信念」とか「メンバー間で共有」という定義から考えると、チームメンバーの一員であるご相談者自身が「ときどき不安になる」とおっしゃっている時点で、少し怪しい気がします。

また、「ぬるま湯」とはおそらくどんな稚拙なアイデアでも批判されない「ぬるい状態」ということでしょうが、心理的安全性の高いチームでは「切磋琢磨」のイメージで活発に議論がなされて、出されたアイデアに対して本質的で健全な批判がバンバン出てくるものです。

◾️「ぬるま湯」チームができるまで

エドモンドソンは心理的安全性を阻害する不安として、「無知だと思われる不安(Ignorant)」「無能だと思われる不安(Incompetent)」「邪魔をしていると思われる不安(Intrusive)」「ネガティブだと思われる不安(Negative)」の4つを挙げています。

そして、無知だと思われたくなければ質問をしなければよい。無能だと思われたくなければアイデアを出さなければよい。邪魔をしているとかネガティブだと思われたくなければ批判をしなければよい。

このような心理が働けば、心理的安全性の「ない」チーム、「ぬるま湯」なチームの出来上がりです。このような流れが思い当たるのであれば、それは心理的安全性とは真逆の状態です。

◾️「ストレートな批判」は日本人にとって高いハードル

そして実は、日本人は心理的安全性を獲得するのに不利な特性を持っています。それはネガティブフィードバックをストレートに伝えることが世界一嫌いということです。

エリン・メイヤー「異文化理解力」(英治出版)によると、日本は否定的なフィードバックに伝える際、世界でいちばん間接的に伝えることを好む国でした。

しかも、加えて、物事を話す際に、わかりやすく明快に話すのではなく、言外の含みを持たせて相手に空気を読んでもらい、あうんの呼吸で理解してもらうことを好む度合いも世界一とのことでした。

これでは切磋琢磨で健全に批判しにくいのも当然です。ものすごく実感があります(笑)。

◾️働き方改革、リモートワークがさらに壁となる

それでも、私のような昭和な日本人たちは、飲みニケーションだとか、長時間労働で一緒に時を過ごすとか、タバコ部屋の雑談だとかで、なんとか壁を乗り越えて、本音を語り、慮り、心理的安全性を作ってきました。

しかし、今は働き方改革で時短の時代となり(よいことですが)、リモートワークの浸透(これもよいことですが)で雑談もなくなり、そういう機会は少なくなりました。

オンラインコミュニケーションも今はまだテキスト、言語中心で、「言葉にしない」ことは存在しないことです。

これらは不可逆な進化ですから、この時代で日本人が心理的安全性を獲得するには新しい能力やスキルを身につけなければなりません。

◾️まずは個々人の「アサーティブネス」を身に付ける

それは、「アサーティブネス」と言われる「相手も尊重したうえで、率直に誠実に自分の要望や意見を相手に伝えるコミュニケーションスキル」です。

「アサーティブネス」とは直訳すれば「主張」ですが、日本語だときつい印象があるせいか(上述の国民性からでしょう)あえてそのまま英語で呼ばれています。

例えば、「事実を基づいて考え、話す」「説得をするのではなく、共感を得る」「命令をするのではなく、提案をする」「自分の気持ちを感情的にならずに正確に表現する」など、たくさんの細かいスキルの集合体が「アサーティブネス」のスキルです。

こういううまい主張スキルをまず身に付けるべきではないでしょうか。

◾️「うまく相手を批判する力」を磨きましょう

まとめますと、心理的安全性を実現するために必要なのは、空気を読んだり、協調したりすることが得意な日本人にとって容易な「ほかのメンバーを攻撃しない」ことばかり追求するのではなく(意識せずとも既に自然とやっているかもしれません)、逆説的に聞こえるかもしれませんが、自分の考えや意見をどんどん打ち出していくのを追求することではないでしょうか。

自分の意見をしっかりと言うことや、攻撃的にならないように相手の意見に健全な批判をすることに注力するということです。

これができればその後のお互いの意見を尊重することは得意なのですから、心理的安全性獲得への道は近づくことでしょう。

OCEANSにて20代のマネジメントに関する連載をしています。こちらもぜひご覧ください。

人事コンサルティング会社 株式会社人材研究所 代表取締役社長

愛知県豊田市生まれ、関西育ち。灘高等学校、京都大学教育学部教育心理学科。在学中は関西の大手進学塾にて数学講師。卒業後、リクルート、ライフネット生命などで採用や人事の責任者を務める。その後、人事コンサルティング会社人材研究所を設立。日系大手企業から外資系企業、メガベンチャー、老舗企業、中小・スタートアップ、官公庁等、多くの組織に向けて人事や採用についてのコンサルティングや研修、講演、執筆活動を行っている。著書に「人事と採用のセオリー」「人と組織のマネジメントバイアス」「できる人事とダメ人事の習慣」「コミュ障のための面接マニュアル」「悪人の作った会社はなぜ伸びるのか?」他。

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