社内コミュニケーションを活性化すれば、組織問題は解決するのか?〜合わない人と話すのは苦痛でしかない〜

(写真:アフロ)

■コミュニケーションが活発でないと不安だが……

人事コンサルティングをさせていただいていると、多くの会社で経営者やマネジャーの皆さんが「もっと社内のコミュニケーションを活性化しなければ」という悩みを持っています。私も社長の端くれとして、その気持ちはよくわかります。社内で社員同士が活発にコミュニケーションを取り合っているのを見れば安心しますし、逆に社内がシーンとしてお互いに話しているような素振りが見えなければ不安になります。

しかし、そもそもコミュニケーションが活発でないとなぜいけないのでしょうか。本当にコミュニケーションの活性化は大切なのでしょうか。

■ピザパーティーをすればうまくいくか

社内のコミュニケーションは活性化すべきものである。一般的にはそう素朴に思われています。また、組織におけるいろいろな問題の原因はコミュニケーションの不活性にある。だから「話せばわかる・解決する」と考えています。それで、組織の問題に悩む経営者やマネジャーは、毎週金曜日の夕方からオフィスでピザを取ってパーティーを開く。あるいは、飲みニケーションや社員旅行などを行うのです。そうすることで、お互いの理解が進めば、組織の問題は解決していくのではないか。そう期待しているのです。

■合わない人とコミュニケーションを取るのは苦痛でしかない

しかし、私は必ずしもそうは思いません。仏教における四苦八苦の1つに「怨憎会苦(おんぞうえく)」というものがあります。これは「嫌いな人と会わなければならない苦しみ」のことですが、四苦八苦に取り上げられるくらい、自分と合わない人とコミュニケーションを取ることは苦痛なのです。それを何の工夫もせずに無理やり向き合わせて、話し合わせると、どうなるでしょうか。接点が増えるほどに不快さが増え、誤解も起こり、ますます問題が生じる可能性が高くなることもありそうです。何が何でも誰とでもコミュニケーション量が増える(=活性化)ほうがよいというわけではないのです。

■オープンなオフィスがよいわけでもない

また、コミュニケーションを活性化させようとして、間仕切り(パーティション)のないオープンなオフィスを作る会社が多いのですが、コントロールという観点からすればマイナス面もあります。実際、不意な雑談などで生産性が下がったり、視線のプライバシーがないことからストレスが増加したり、細菌感染などで体調を崩す確率が増えたりするなどの研究結果が報告されています。

逆にいえば、一見すると、コミュニケーションの活性化を阻害するような間仕切りを作ることで、生産性が向上することも大いにあるのです。無駄なコミュニケーション、不快なコミュニケーションが減るのですから、さもありなんです。

■コミュニケーションはコントロールするもの

このように、コミュニケーションとは単純に活性化させても、むしろ逆効果になる場合があるものです。ですから、お勧めはきちんとコントロールすることです。相性が合う人とは気楽にコミュニケーションが取れるようにし、合わない人とはあまりコミュニケーションを取らなくて済むようにするというのも1つの手です。

例えば、スキルセット的にはどうしても組んで仕事をしなくてはいけないが、性格的には合わない人たちがいた場合、同一チームにはしてもオフィスの座席は離れ離れにしておく、といったことをしてもよいのです。そうすれば、必要最小限のコミュニケーションで済み、相性が悪いことから生じる「事故」が起こる可能性が減ります。

■個性に合わせないコミュニケーションを活性化させるのは危険

きちんとコントロールをしないコミュニケーションをとにかく活性化するのは危険です。組織の問題を増幅してしまうおそれすらあります。パーソナリティを踏まえて、相性の良いチームを編成したり、座席を考えたりする。個性や価値観、志向を踏まえて、1 on 1のミーティングや評価のフィードバックを行う。社交性が高い集団であれば、ピザパーティーや運動会などのイベントソリューションを行う。そうでなければ、むやみにイベントは行わない。このように、メンバー個々人の個性に合わせてコミュニケーションを設計し、コントロールしなければなりません。

■組織や人を観察する精度を高める

そのためには前提として、自社の組織やそこにいる人々がどんな人なのかを、解像度高く、細やかに観察することが大切です。十把一絡げに捉えていてはいけません。しかも、人が人を観察するのは、様々な心理的バイアスがあるため、歪んで捉えてしまうこともあり難しいことです。

そのため、できることなら、パーソナリティテストや組織サーベイなどを用いてデータ化・可視化を行い、統計的に分析するといったことも重要です。そうすることによって初めて、この組織に必要なコミュニケーションがどのようなものかわかり、自信を持ってコミュニケーションを活性化できるのではないでしょうか。

HRZineより転載・改訂