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ボクシングの街だったデトロイトは活気を取り戻せるか

林壮一ノンフィクションライター
7.3メートルもあるジョー・ルイスの拳像(写真:ロイター/アフロ)

 2月20日、ミシガン州デトロイトのウェイン州立フィールドハウスで「ビッグタイム・ボクシングUSA」という名の興行が打たれる。サリタ・プロモーションズが主催だ。同イベントの模様はDAZNでライブ配信される。試合に先立ち、出場選手たちの公開練習が行われた。

Terrell Groggins/Salita Promotions  ミット打ちするハリントン
Terrell Groggins/Salita Promotions  ミット打ちするハリントン

 ダウンタウン・ボクシングジムにおいて行われた公開練習には、デトロイト出身のマーロン・ハリントン、グランドラピッズを故郷とするジョシュア・ペイガン、リンカーンパーク在住のドウェイン・テイラー、ディアボーン生まれのダベル・スミス、ポンティアックで育ったカメラン・パンキーらが参加した。

Terrell Groggins/Salita Promotions  メインイベンターに選ばれたハリントン 
Terrell Groggins/Salita Promotions  メインイベンターに選ばれたハリントン 

 メインイベントを務めるハリントンは、USBAスーパーウエルター級チャンピオンのアードリアル・ホームズ・ジュニアと対戦し、ペイガンとテイラーはライト級8回戦、スミスはミドル級6回戦、パンキーはオープニングに出場することとなった。

ハーンズも会場に姿を見せるか
ハーンズも会場に姿を見せるか写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 デトロイトといえば、1980年代の中量級スーパースターであるトーマス・“ヒットマン”・ハーンズが活躍した場所だ。

自身を慕う選手にバンテージを巻くスチュワード
自身を慕う選手にバンテージを巻くスチュワード写真:ロイター/アフロ

 ヒットマンが汗を流したクロンク・ジムには、WBCウエルター級チャンピオンとなったミルトン・マクローリー、WBCスーパーウエルター級王座に就いたデュアン・トーマス、1984年のロス五輪のウエルター級で金メダリストとなり、プロでもWBA同級タイトルを2度獲得したマーク・ブリ―ランド、同じくロス五輪で金メダルを得、プロ転向後にIBFミドル級王者となったフランク・テイト、1983年にローマで開かれた世界選手権で銀メダルを取ったリッキー・ウォーマックなど、名選手たちが集い、鎬を削った。

 トップ選手たちを指導したのは、エマニュエル・スチュワードである。その後も名を成した数々のファイターが、入れ代わり立ち代わりにスチュワードにコーチを依頼した。

スチュワードは、多くの選手に指導を依頼された。写真はレノックス・ルイスのキャンプ時
スチュワードは、多くの選手に指導を依頼された。写真はレノックス・ルイスのキャンプ時写真:ロイター/アフロ

 ご存知のように、デトロイトではフォード社が1903年に、GM社が1908年に誕生している。アメリカ合衆国の自動車産業をリードしたことから、モーターシティとも呼ばれる。

 ダウンタウンには世界ヘビー級タイトル25度の防衛を誇るジョー・ルイスの拳が、7.3メートルもの巨大な石像として飾られており、ボクシング史を語るうえで切っても切り離せない地だ。

Terrell Groggins/Salita Promotions 今でも飢えた若者はいる
Terrell Groggins/Salita Promotions 今でも飢えた若者はいる

 米国自動車業界が不況のあおりを受けて久しい。ゴーストタウン化するデトロイトを、ボクシングイベントは活気付けられるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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