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間もなくTipOff!「まだ足りない」鋼のメンタルが示すもの

林壮一ノンフィクションライター
昨年のオールスターでのリラード(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBAオールスターの前日に行われた3ポイントコンテストで、デイミアン・リラードが2年連続のVを果たした。

 勝利した彼は、いつものように右の人差し指で左手首を指し「デイム・タイム」とアピールした。このあたりに、クールなリラードらしさを感じた。

2021年のオールスターにて
2021年のオールスターにて写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 自身がオールスターに選出されるのは8度目だが、ミルウォーキー・バックスの一員としては初の出場となる。今シーズンの背番号0が目指してるのは、間違いなくNBAチャンピオンだ。デビューから11年在籍したポートランド・トレイルブレイザーズでも健闘していたが、いかんせん、チームメイトに同レベルの選手がいなかった。

 今季は、2024年のオールスターに一緒に出場するヤニス・アデトクンボをはじめとしたメンバーと共に、現在、東地区3位。首位であるボストン・セルティックスとは8.5ゲーム差だ。先日クリーブランド・キャバリアーズに2位の座を譲りはしたが、ブレイザーズ時代のリラードより、遥かに生き生きとプレーしている。

アデトクンボと
アデトクンボと写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 そんな背番号0は、オールスターゲームの前日に催された3Pコンテストでも、存在感を放ち、ジェイソン・カポノが連覇を達成した2007年&2008年以来の連覇を達成した。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 リラードは、2022年の3ポイントコンテストで優勝したカール=アンソニー・タウンズ、また、アトランタ・ホークスを引っ張るガード、トレイ・ヤングと最終ラウンドを争った。リラードは最後から2番目のラックで連続4本を決め、あと1本が必要な最終ラックまで小走りで進むと、冷静に勝負を決めた。

 「最終ラックに到達したとき、正確な得点は分からなかった。何本かミスをした折、観客席のファンが、オーッ、オーと声を上げているのが聞こえた。彼らがそれを何度も繰り返したので、自分がまだ生き残っていると確信した。もう負けたって状況なら、ファンは黙っていただろうから。

 また2本、外してしまったが、直ぐに次の1球を掴んだ。勝つためにはこのゴールが必要だと理解したよ」

 優勝を飾った後、リラードはそう振り返った。

71得点したゲームの後で
71得点したゲームの後で写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 彼は、昨年の2月26日に1試合で71得点の離れ業をやってのけた際にも、飄々と、かつ自然体でプレーしていた。今回も、そのシーンが思い浮かんだ。

 リラードという選手は、どんな時も「Not Enough(まだ足りない)」と、次を見据える強靭なメンタルを持つ。

 さて、今夜の宴では、どんなプレーを見せるか。今季の後半戦、そしてPlayoffでの大活躍も期待したい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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