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冤罪か、クロか…表舞台から消えた23歳

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 昨年9月11日、ニューヨークの高級ホテルで、女性を暴行した罪で23歳のNBA選手が逮捕された。

 2019年にNBA入りし、ヒューストン・ロケッツに所属していたケビン・ポーター・ジュニアである。被害者とされたのは元WNBA選手で、当時、ポーターのガールフレンドだったカイスレ・ゴンドレジック。同件が公になった際、ゴンドレジックは首の椎骨を骨折し、右目の上に深い切り傷を負ったと伝えられたが、後に検察側がそのような事実は無いとした。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ニューヨーク警察の広報担当者は、暴行容疑の直後、ゴンドレジックが「顔の右側に裂傷を負い、首の痛みを訴えていた」と知らされたと述べた。そこで、彼女は検査のため病院に搬送された。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 しかし、ゴンドレジックはその後「彼は逮捕時に私を殴っていません。それは嘘です。裏付けるような怪我もありません。室内における私たちの口論は、10秒にも満たないものです。報道されているほどではなく、あっと言う間の逮捕でした」と語る。また、彼女の被害の詳細を公表する前に、検察が取り調べを行っていないことを付け加えた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 23歳のガードは無罪を主張しているが、事態を重く見たロケッツは、すぐにポーターをオクラホマシティ・サンダーにトレード。サンダー側は、即刻解雇する前提で、ロケッツの背番号3を受け入れた。

 いささかややこしいのだが、このトレードを説明すると次のようになる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ロケッツはミネソタ・ティンバーウルブズ経由で、2027年ドラフト2巡目指名権と、ミルウォーキー・バックス経由の2028年2巡目指名権をサンダーに譲る契約で、ビクター・オラディポとジェレマイア・ロビンソン・アールの2名を獲得。同契約によってサンダーはドラフト資産を集めることができる。そして、ポーターとの契約に残っている保証年俸1,690万ドルの支払いがサンダーに要求され、ロケッツは550万ドルの節約が可能となったのだ。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 単なる恋人同士の喧嘩が、大きな騒動に発展したーーという見方もあるが、まだ、真相は明らかにされていない。確かなのは、23歳の若者が仕事を失った事実である。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 ポーターは、2000年5月4日にワシントン州シアトルで誕生した。ポーター・シニアは1993年に14歳の少女を射殺し、過失致死罪で有罪判決を受けている。そして、後のNBA選手が4歳だった2004年に銃撃されて死亡した。ポーター・ジュニアは母の手によって育てられた。

 名門USC(南カリフォルニア大)で1年間プレーし、アーリーエントリーで2019年全体30位でコールされた。ポイントガードも、シューティングガードも兼任できる万能型として、ある程度の評価は得ていたのだが…。

 2020年11月15日にも、車内で銃器を不適切に扱った容疑で起訴された過去がある。その折、ポーターは4,000ドルの保釈金を支払って釈放されたが、私生活の乱れが問題視されていた。

 ポーターのNBA復帰は難しそうだ。彼は今後、どのように歩んでいくのか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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