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世界チャンプだった父の背を追う2人の息子

林壮一ノンフィクションライター
父、コンスタンチン・チュー(写真:ロイター/アフロ)

 11月22日、元WBA/WBC/IBFスーパーライト級王者のコンスタンチン・チューの息子、ニキータがディラン・ビッグスに5回KO勝ちを収め、オーストリアのナショナルチャンピオンとなった。クラスは父より2階級重いスーパーウエルター。4歳上の兄、ティムと同じだ。

 兄のティムは10月にWBOスーパーウエルター級チャンプとなり、24戦全勝17KOをマークしている。今回の勝利により、ニキータもデビュー以来の戦績を、8戦全勝(6KO)とした。言うまでもないが、25歳の新チャンピオンは、オーストラリアのボクシング界で最も有名な一家の一員である。

140Pで一時代を築いた父
140Pで一時代を築いた父写真:ロイター/アフロ

 サウスポーのニキータは、今回のファイトの初回37秒で、ビッグスの右ストレートを喰らって腰からダウンした。

 逆転KOを飾ったものの、元世界王者のショーン・ポーターからは、「名前ほどの実力者ではない」と論じられている。

 また、あるプロモーターは、モハメド・アリの孫、ニコ・アリ・ウォルシュ(23)との対戦に触手を伸ばしている。

写真:ロイター/アフロ

 旧ソビエト連邦出身でバルセロナ五輪後に、オーストラリアを舞台にプロに転向した父は、シドニーの中心街から車で南に30分の場所に自分のジムを建てた。

 近郊に住む若い選手たち何人もが育ったが、現在、ティムとニキータは、そこで練習を重ねている。そしてジムの経営者でもある。父が母国ロシアに戻ったため、今日、息子たちはオーストラリアにファミリーネームを残そうと奮闘中だ。

写真:ロイター/アフロ

 以前はジムの壁、ほぼ全てが父の古いポスターで覆われていたが、多少模様替えがなされた。

 WBOスーパーウエルター級王者は言う。

 「これからは新しい時代だ。俺とニキータは、若者、大人、ボクシングをまったく味わったことのない人々がジムに入会してくれるように働かねばならない。そのためにも、影響力のある人間にならなければ。父の功績を守り、同時に、新しい世代のためのものを作っているところだよ」

 ファイターとしてはもちろん、ジムのオーナーとして兄弟の戦いは続く。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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