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不動産トラブルに見舞われたNBAの新星

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 NBAで最も有望な若手スターの一人、オクラホマシティ・サンダーのシェイ・ギルジャス=アレクサンダーが、800万ドルで住居を購入した。自身を「仮想通貨王」と呼ぶエイデン・プレテルスキーなる人物が住んでいた、カナダ・オンタリオ州の豪邸である。

 しかし、引っ越し直後から、見知らぬ男たちが入れ代わり立ち代わり、玄関先に現れ、プレテルスキーの居場所を訊ねてくる。不審に思ったアレクサンダーは、直ぐに前住人の経歴を調べた。すると、この家には素性の分からない訪問者が何人も来ており、その中には家を焼き払うと脅した人間が含まれていた事実を知る。

 本件は、ギルジャス=アレクサンダーのガールフレンドが、望まない訪問者を警察に通報したからこそ、明らかになった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 プレテルスキーは、仮想通貨市場で利益を求める投資家から4000万ドル以上を受け取った"24歳の神童"として、2022年から注目を集めていた。が、投資家たちは後に、プレテルスキーがプライベートジェットや高級車のコレクションなどと共にインスタグラムで派手な生活を報告していたこと、そして、騙されたのだと気付かされる。

 やがてプレテルスキーの破産により、この24歳は、受け取った資金のほんの一部を投資に回し、4000万ドルの半分近くを個人的に消費していたことが明らかになる。

 一部の投資家が損失を取り戻そうとするなか、プレテルスキーは数日間にわたって拉致され、殴打され、返金を要求される。一連の事件により、5人の男が逮捕、起訴された。

写真:ロイター/アフロ

 ギルジャス=アレクサンダーは、プレテルスキーに関わる人々による脅迫や訪問の履歴を、売り手が開示しなかったことは不正だとして、売却の取り消しを求めて訴訟を起こした。NBAの新星は、仮に全容を知っていれば、購入しなかったと主張し、ほんの数日暮らしただけで、この家を離れている。

 とはいえ、売り手側は虚偽表示を否定し、プレテルスキーが去った後、脅迫ではない訪問が4回あったと述べた。彼らは、訪問によってその家が不適格になったり、危険になったりするわけではないので、記録を開示する義務など無かったと語っている。

 今回の訴訟は、不動産取引における情報公開の重要性が注目されている。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 2018年に全体11位でドラフトされ、ロスアンジェルス・クリッパーズで1年、オクラホマシティ・サンダーで5年目を迎えた背番号2は、コートでのみならず、法廷でのファイトも強いられている。

 果たして、訴訟はプレーに影響を及ぼすのだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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