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故郷での初防衛戦に向かう第64代日本ライト級チャンピオン

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口裕朗

 2023年4月26日、宇津木秀を3ラウンドでKOして日本ライト級王座を獲得した仲里周磨。沖縄にボクシングのチャンピオンベルトが渡るのは、周磨の実父であり、現在はトレーナーを務める繁が2002年5月18日にOPBF東洋太平洋スーパーバンタム級タイトルを奪取して以来のことだった。実に21年ぶりである。

 その仲里周磨の初防衛戦が決まった。12月24日に沖縄空手会館で催される。挑戦者は角海老宝石ジムの村上雄大。チャンピオンにとっては、文字通り凱旋試合だ。

 撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 ハードパンチャーとして鳴らし、世界タイトルに3度挑んだ父は先日の試合を振り返って言う。

 「12戦全勝10KOと宇津木選手は修羅場を潜っていましたし、攻撃力もディフェンス力も兼ね備えていましたから、難しい試合になると予想していました」

 初回、周磨は右ストレートをクリーンヒットし、チャンピオンをグラつかせる。

 「宇津木選手の距離を潰して、前に詰めて、超接近戦で戦うことをテーマとしていました。それから、腰を浮かさない事。相手より低く、とアドバイスしましたね」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 2回、反撃に出た宇津木のパンチで、周磨は右目の上をカットし、鮮血が滴る。2021年8月12日に周磨が吉野修一郎(三迫)に挑戦した折には、左目尻の負傷によりTKO負けした。後楽園ホールのファンで、その試合を思い起こした人は少なくなかったであろう。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「ポイントは取っていると思っていたので、焦りは無かったですね。翌3回にKO勝ちした時は、本当に嬉しかったです。インターバルに自分が息子にどんな言葉をかけたかは、まったく覚えていないんですよ」

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 繁は2005年4月29日、フランスでWBA世界スーパーバンタム級タイトルに挑んだ一戦を最後にリングを降りた。その2年後に地元、沖縄にボクシングジムを開く。周磨が5年生の時だ。

 通学途中にあったジムに息子が顔を出すようになり、中1でU15の全国大会で準優勝、中3では優勝。高校時代はインターハイでベスト8に入った。

撮影:山口裕朗
撮影:山口裕朗

 「当時、周磨はまだボクシングに対して気持ちが入っていませんでした。練習しなくても、そのくらいまではいけたんですよ。だから、浮ついていましたね。

 プロの厳しさを知って、2敗3分けと辛い思いもして、それを乗り越えて一皮剥けました。沖縄はボクシング熱が高いですが、なかなか東京まで行って生観戦する人は少ないです。クリスマスイブは、そういった方々に日本チャンピオンとなった息子の実力をご覧頂きたいですね」

 周磨はサンタクロースよりも一足早く、沖縄県民をワクワクさせてくれそうだ。仲里親子の戦いは続く。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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