Yahoo!ニュース

「俺が中心だ!」エゴイストは新チームで機能するか?

林壮一ノンフィクションライター
(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 トレードを切望し、ついにロスアンジェルス・クリッパーズ入りを果たしたジェームズ・ハーデン。LAに到着するやいなや、退団したばかりのフィラデルフィア・セブンティシクサーズを批判した。

 昨シーズン、リーグトップのアシスト数を記録し、1試合平均21得点を挙げたにもかかわらず、ハーデンは攻撃面での自分の役割は「鎖につながれているようなものだった」と主張。そして、「自分はシステムの一部というプレイヤーではない。俺がシステムを作るんだ」と述べた。

 確かに2012年から足掛け9シーズン在籍したヒューストン・ロケッツでは、それを叶えていたかもしれない。当時、彼はチーム内で最も優れた選手であり、まさに全盛期を迎えていた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 しかし、一人のベテランとして加わったフィラデルフィアでは、己の役割を理解し得なかった。昨季、シクサーズはNBAランキング3位のオフェンスを誇った。それが、ハーデンと2023年MVPのジョエル・エンビードに起因することに異論はない。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 11月2日、エンビードはハーデンの批判について、次のようにコメントした。

 「彼は本当に優れた選手であり、偉大なパサーだ。我々はあらゆる局面で彼にボールを回した。やり易いように仕事をさせたつもりだ。だから、仲間をフリーにするか、自分で周囲をケアするかを判断すべきだった」

 そしてシクサーズの大黒柱は結んだ。

 「お互いにファイナルに進出できることを願っているが、彼は負ける側にいて、我々は勝つ側にいる」

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 今回、ハーデンは望んでいたトレードを獲得した。が、カワイ・レナード、ポール・ジョージ、ラッセル・ウェストブルックらのスターが存するチームで、「俺がシステムの中心だ」という考えが通じるだろうか。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 特に同じガードであるウェストブルックとの共存は難しいように見える。クリッパーズの背番号0は、"KING"レブロン・ジェームズとチームメイトだったLAレイカーズ時代、「俺が」「俺が」というプレーでシュートを外しまくっていた。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 さて、ハーデンのクリッパーズ移籍は吉と出るか凶と出るか。このまま我儘を言い続けると居場所がなくなってしまうことに、ハーデンは気付かないのか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事