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WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオンがKO防衛

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 20戦全勝13KOのWBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオン、オレクサンドル・ウシクと、19勝(18KO)1敗のWBAヘビー級レギュラー王者、ダニエル・デュボア戦がポーランドで行われた。統一チャンプは、右のリングシューズが黄色、左がブルーと、国旗カラーでロシアからの侵攻を受ける祖国への思いをアピールしていた。

 サウスポーのウシクは、初回から右の拳でフェイントをかけながら、距離を詰めていく。デュボアはガードの間から自身のジャブを刺し、外からは左フックを放った。

 手数は互角だったが、パワーはデュボアに分がある。

写真:ロイター/アフロ

 その後、ジャブでポイントを稼いだウシクだが、第5ラウンド20秒、デュボアの右ボディストレートをもらって尻餅をつく。が、レギュラー王者の真後ろにいたレフェリーはローブローとの判断を下した。そして、3冠チャンプには3分46秒の休憩が与えられた。

写真:ロイター/アフロ

 ファイト再開後、ウシクは足を使ってリングを回りながら、被弾を避ける。6回までは静かな戦いぶりだったが、7回からギアを上げ、猛然と打って出る。そして8ラウンド終了間際に2つのジャブからストレート、右フック、さらに左ストレート、フォローのショート左アッパーを浴びせデュボアからダウンを奪う。

 デュボアは辛うじてゴングに救われた。

写真:ロイター/アフロ

 第9ラウンド1分34秒、ウシクの狙い澄ました右フックがWBAレギュラー王者の顎を捉えると、デュボアはキャンバスに両膝をついた。そこでレフェリーが試合終了を宣言。公式ノックアウトタイムは、同回48秒。

 デュボアの打たれ弱さが目立つ試合だった。

写真:ロイター/アフロ

 「あれがローブローだとは思わなかった。今夜は騙され、勝利を逃した」と試合後にデュボアがコメントしたように、5ラウンドの攻防を巡って論争が沸き起こっている。「映像を見る限り、ローブローには見えなかった」という声も多い。

失意のデュボア
失意のデュボア写真:ロイター/アフロ

 ウシクはWBC王者のタイソン・フューリーとの対戦を渇望している。今回も、フューリーとの交渉が暗礁に乗り上げたからこそのデュボア戦であった。

写真:ロイター/アフロ

 ウクライナが平和を勝ち取るまで戦うーーと語ったウシクだが、どれだけ今日のウクライナ情勢に心を痛めているのか。

写真:ロイター/アフロ

 「タイソン・フューリー戦の準備は万端だ 。ただ、ヤツがそれを望むだろうか?私には分からない。でも、準備はできているよ」

 クルーザー級統一王者として最重量級に転向後、タイトルマッチでのノックアウト勝ちは、この夜が初めてであった。

 ウシクの願いは、隣国にどのように伝わるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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