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無敗対決を制した37歳の元暫定WBAウエルター級チャンプ

林壮一ノンフィクションライター
Amanda Westcott/SHOWTIME

 5勝(4KO)1分けのベネズエラ人ファイター、ガブリエル・マエストレと8戦全勝7KOのトラヴォン・マーシャルの一戦は、見応え十分だった。

 メリーランド州出身の22歳、マーシャルの相手に選ばれたマエストレは37歳。成長著しい新鋭アメリカンに、2度五輪に出場した元暫定世界チャンプのベテランをぶつけ、更なる飛躍を期するーーープロモーターとSHOWTIMEのそんな思いが見て取れた。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 ところが、22歳の若者にとってマエストレは大きな壁であった。2ラウンド1分50秒、ハンマーのような右を叩きつけ、さらにフォローの左フックをヒットしてダウンを奪う。ロープの間から、マーシャルの体が飛び出すほどの倒れ方だった。

 プロ生活初のダウンを喫したマーシャルは、呆然とした表情で立ち上がる。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 経験豊富なマエストレは、22歳に回復の時間を与えない。コーナーに詰めて連打し、きっちりと獲物を仕留めた。ノックアウトタイムは、同ラウンド2分6秒。ロンドン、リオデジャネイロと2度のオリンピックを経験した37歳にとって、マーシャルは、美味しい相手だった。

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 勝者は語った。

 「こんな形でのノックアウトは予想していなかった。トラヴォンに右を当てる練習はしていたけれどね。私を支えてくれたチームに心から感謝する。この勝利をベネズエラに捧げたい。そして、ダメージを負ったトラヴォンが、少しでも早く元気になることを願う。

 正直、タフで若い彼がこんなに早く倒れるなんて思っていなかったよ。試合開始から、おどおどしていて、打ち合うことを嫌がっているみたいだった。私の右が全てを決めたな」

Amanda Westcott/SHOWTIME
Amanda Westcott/SHOWTIME

 2021年8月7日に暫定WBAウエルター級王座に就きながらも、判定を巡って物議が起こり、結局タイトルを剥奪されたマエストレ。現在はWBA同級7位にランクされる。

 流石にテレンス・クロフォードと比べるのはマエストレにとって酷だが、存在感を十二分に示すKO勝ちであった。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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