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世界ヘビー級王者が語った「全勝対決で敗れた若き世界ランカーのこれから」

林壮一ノンフィクションライター
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 4月22日にジャーボンテイ・"タンク"・デービスに敗れ、キャリア初の黒星を喫したライアン・ガルシアについて、元世界ヘビー級チャンピオン、ティム・ウィザスプーンが論じた。

 拙著『マイノリティーの拳』で記したように、2度最重量級の世界タイトルを手にしたティムは、45歳にしてIBF9位にランクされていた男である。ドン・キングによる奴隷契約に泣かされたが、卓越したディフェンス力があったからこそ、その年齢にして世界十傑に入ることが出来た。

写真:REX/アフロ

 ティムは語った。

 「ライアン・ガルシアは24歳だろう。まだいくらでも伸びるよ。本人は左フックに自信を持っているようだし、いいモノを持っている。才能もある。ただ、28戦全勝26KO(試合時)のジャーボンテイ・"タンク"・デービスへの対策が十分じゃなかったな。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 デービスは実力派のサウスポー。体も強い。そして、ガルシアよりもかなり背が低く攻撃も多彩だ。そういう相手に自分のベストパンチである左フックを当てたいのなら、もっと顎を引いてガードを高くし、距離を詰めてくるところに渾身の一発を合わせなければ。ガルシアは腰も高かった。

 タンクの左ストレートは脅威だ。でも、それを右のグローブで受けて左フックを放つ練習が必要だった。その際、左肩を入れた状態で、自身の右でタンクの左ストレートを受けるんだよ。即、左フックを打ち込めるようにさ。そういった策がまるで見られなかった。俺はガルシアのトレーナーであるジョー・グーセンには敬意を払うが、おそらく誰も教えてやらなかったんじゃないか。

Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 ガルシアのジャブもまったく有効じゃなかった。サウスポー対策が出来ていないよ。前足を外側に出して右から入るのが鉄則なのに、そういう動きがなかっただろう。当たらないジャブを出していたら、タンクの思う壺だ。

 もし、俺のところにくるなら、格段に伸ばせると思うんだがな。若いんだし、輝かしい未来を自分で作ってほしいよ」

 確かにガルシアのコーナーにティムが付けば、面白い。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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