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CBSが直近のパウンド・フォー・パウンドで最強としたのは、やはり井上尚弥

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口 裕朗

 数日前、米国の大手TV局CBSが昨年12月15日以来の<パウンド・フォー・パウンド・ランキング>を発表した。その折、同局が大きく報じたのは4月22日にライアン・ガルシアとの全勝対決を制したジャーボンテイ・デービスが、初めてトップ10入りしたことであった。同局はオフィシャルサイトで述べた。

 「ジャーボンテイ・"タンク"・デービスとそのチームは、近年、彼をボクシング界最大の興行収入を生むスターに育て上げた。ここに辿り着くまで時間がかかったが、ついに"タンク"は、パウンド・フォー・パウンドのトップファイターの1人に名を連ねた。長い間、批判も浴びてきたデービスだが、ようやく尊敬を得ることとなった。

 28歳のデービスは、4月にラスベガスで行われたPPVでの対決で、同じ無敗のライアン・ガルシアを7ラウンドにKOし、評論家たちが口を挟む余地が無いところまで己を高めた。

 デービスは、ボクシング界でも指折りの破壊的なパンチを持つノックアウトアーティストという評価を勝ち得た。パンチ力を披露しただけでなく、ボクシングIQの進化が、ガルシアを丸裸にしたのだ」

 Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 CBSが報じたPFPランキングで、初ノミネートのデービスは8位。同記事では、「デービスがパワーをどこまで発揮できるかは、進化し続ける彼自身にかかっている。仮にライト級での主要タイトルを保持していなくても、デービスはアリーナを満員にし、PPVが売れる選手だ。真の実力者であり続けている」と、手放しで称えている。

 とはいえ、個人的にはもっと早く、そして上位にリストアップされてもおかしくない選手だと感じる。

 さて、気になるPFPキングを、同局は今回も昨年末と同様に井上尚弥とした。8位となったデービスより上の1位から7位の顔ぶれに変動はなかった。

撮影:山口 裕朗
撮影:山口 裕朗

 2位はWBA/WBC/IBFウエルター級チャンピオン、エロール・スペンス・ジュニア、3位がWBO同級王者であるテレンス・クロフォード、4位にWBA/WBC/IBF/WBOスーパーミドル級チャンプのカネロ・アルバレス、5位がWBA/IBF/WBOヘビー級タイトルを保持するオレクサンドル・ウシク、6位がWBAライトヘビー級チャンプのディミトリー・ビボル、7位がWBCヘビー級王者のタイソン・フューリー。8位がジャーボンテイ・デービス、9位は先日、WBCライト級王座挑戦者決定戦で吉野修一郎を下した2階級制覇中のシャクール・スティーブンソン、そして10位が統一ライト級チャンピオンのデヴィン・ヘイニー。

 9位と10位は、デービスのランク入りによって一つずつ順位を下げ、昨年末に10位だったワシル・ロマチェンコはノミネートされなかった。

 怪我が無ければ、この5月7日に井上尚弥はステファン・フルトン・ジュニアとの一戦が催される筈だった。7月25日に仕切り直されたWBC/WBOスーパーバンタムタイトルマッチで、井上は更に評価を上げることであろう。CBSのボクシング取材部隊が、デービスvsガルシア以上に注目するファイトとなるか。

 

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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