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7月18日に初防衛戦を控えた日本バンタム級チャンプ

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
撮影:筆者

 2024年4月2日に杉本太一を5ラウンドKOで下し、第76代日本バンタム級チャンピオンとなった富施郁哉。7月18日の初防衛戦を控え、調整を続けている。

 挑戦者の増田陸は、2023年5月20日に対戦し、7回でストップされた相手である。同ファイト時の富施は、ファーストラウンドにダウンを取られ、ペースを掴めないまま敗者となった。直前まで、中谷潤人戦に向けてキャンプを張っていたアンドリュー・モロニ―のスパーリングパートナーに抜擢され、ラスベガスで汗を流していた。

 モロニ―はオーソドックス、増田はサウスポー。対策の失敗だったのではないか? と問うと富施は答えた。

 「ハワイ経由で帰国する予定だったのですが、乗り継ぎがうまくいかず、計量の4日前に日本に到着する慌しさでした。でも、敗因はそこじゃないです。プロ3戦目だった増田に関する情報量が少な過ぎ、底力が分からなかったんですよ。

 世界戦を争うモロニ―とスパーを重ねた自信が、過信になってしまったかなと反省しています。不用意に懐に入ったところで喰らってしまいました。もっと慎重にやるべきでしたね」

撮影:筆者
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 1998年7月10日生まれの富施は、水戸桜ノ牧高等学校常北校に入学後、ボクシング部に入部する。

 「お祖父ちゃんも、お父さんも大のボクシング好きで勧められました。小学1年から中学3年まで、空手をやっていたんです。それと並行して小学生時代はリトルリーグ、中学では陸上部にも属していました。

 多少、戦いの勘はあったものの、空手は寸止めでしたから打ち方が違うので戸惑いましたね。空手の頃からサウスポーの方がしっくりきたんで、ずっとサウスポーですね」

 同じ学年は富施も入れて2名。2年生、3年生も一人ずつという少人数の部だった。

 「顧問の先生が毎週末スパーリングの相手を探して、遠征に連れて行ってくれました。そのお陰で、高1の新人戦では茨城県で2位、2年次のインターハイ予選、関東予選ではどちらも県で優勝できたんです」

 高2の3月に出場した選抜大会では、準優勝。決勝で富施を下して日本一となったのは、後にアマチュアで10冠を達成する今永虎雅だった。

 「全国で2位になりましたから、早くプロに転向しようと通信制の高校に編入し、ヨネクラジムに入門したんです。デビューから2戦は、ヨネクラの選手として戦っています」

撮影:筆者
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 2017年8月、ボクシング界をリードしたヨネクラジムの閉鎖を機に、ワタナベジムに移籍し、キャリアを積んできた。

 前回の増田戦を含めて3度の黒星を喫しながら、この4月に日本バンタム級タイトルを手にしたのだ。 

 「KO勝ちでしたし、杉本戦は会心の勝利でした。今までやってきたことが、実を結んだなと」

撮影:筆者
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 難敵である増田へのリベンジを果たすべく、富施は自身を追い込む日々だ。

 「挑戦者はサウスポーですからクロスレンジの対応をテーマに、日本スーパーフライ級王者の高山涼深さんとのスパーリングを重ねています。ぶっ倒して勝ちますよ!」

 7月18日、日本バンタム級王者はどんな戦いを見せるか。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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