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22カ月ぶりのリベンジ

林壮一ノンフィクションライター
Esther Lin/SHOWTIME

 2016年に開催されたリオ五輪にウズベキスタン代表のミドル級選手として出場し、銀メダルを獲得したベクテミール・メリクジエフ。カリフォルニア州に居を構え、米国でプロ生活を送っている。

 祖国を離れ、デビュー以来7連勝してアメリカのファンにもその名を覚えられつつあった2021年6月、安牌だった筈のガブリエル・ロサドに3ラウンドでノックアウトされ、初黒星。

 その後、再起戦を含めて4連勝を飾り、WBO8位にランクされたものの、メリクジエフの胸の痞えが消えることはなかった。

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 このほど、メリクジエフは22カ月ぶりのリターンマッチに漕ぎ着ける。雪辱に燃えるウズベキスタン人サウスポーは、序盤からアグレッシブな姿勢を崩さず、3名のジャッジすべてが99-91と採点する内容で判定勝ちを収めた。

 勝利の後、メリクジエフは振り返った。

 「初戦では、ロサドを舐めていた。今回はキャンプで己を鍛え上げ、スキルを披露して、可能な限りロサドにダメージを与えることを課題としたんだ」

Esther Lin/SHOWTIME
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 そして付け加えた。

 「これは望んでいた試合だった。大きな舞台でリベンジの機会を得た。非常に喜ばしいことだ」

 オリンピック銀メダリストの世界ランカーとはいえ、まだ無冠のウズベキスタン人ファイターが、ノンタイトル戦で自分の望む相手との再戦が用意されるというのは、プロモーターの擁護があってのことだ。

Esther Lin/SHOWTIME
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 そうーーーー。メリクジエフが契約しているのはゴールデンボーイ・プロモーション。同社のボスである元世界王者のオスカー・デラホーヤは、銀メダリストを迎え入れた際、語ったものだ。

 「ベクテミール・メリクジエフをプロモートすることに、我々は心を躍らせている。彼は本物の野獣であり、強く、タフなファイターなうえ、ハンドスピードもステップも速い。誰もが注目する168パウンドのトップ選手になるだろう」

写真:ロイター/アフロ

 デラホーヤが売り出したライアン・ガルシアは実力以上に評価され、スターの座を手に入れた。が、大一番ではやはり勝てなかった。果たして、メリクジエフはどんな道を歩むのか。

 

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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