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8戦全勝7KOのスーパーウエルター級(22歳)に注目だ!

林壮一ノンフィクションライター
Esther Lin/SHOWTIME

 第3ラウンド残り1分5秒、トラボン・マーシャルの狙い澄ました右がジャステイン・デローチの顎を打ち抜くと、29歳のベテラン選手は前のめりにキャンバスに沈んだ。

 デローチは起き上がったものの、ダメージを考慮したレフェリーが試合終了を宣言。メリーランド州出身のマーシャルは、2021年4月20日のデビュー以来、8連勝を飾った。ノックアウトを逃したのは1度きりである。

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 マーシャルのトランクスには「SNIPER(狙撃手)」なる文字が縫い付けられているが、言い得て妙、と感じる一発であった。

 マーシャルは身長、リーチ共に183cmと公表しているが、数字以上に長い腕を持っているような印象を受ける試合運びだった。

Esther Lin/SHOWTIME
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 マーシャルは、シングルマザーの母親に育てられた8人兄弟の長男で、母はもちろん、祖父母、叔父からの愛情を受けて育った。

 無敗の22歳は振り返る。

 「兄として、弟や妹の手本にならねばと、常に感じていた。何者かになること、それが可能であることを示すために、全力で生きてきたよ」

 彼は当初、フットボールとボクシングという2つのスポーツにエネルギーを注いでいた。

Esther Lin/SHOWTIME
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 「最初は自宅の地下室で、叔父や祖父と一緒にボクシングをやっていたんだ。それでボクシングに目覚めた。12歳のときに初めてジムに行った。叔父に連れられてシュガー・レイ・レナードが持っていたジムに行ったんだ。叔父とスパーリングをした以外、僕は何も経験がなかった。でも、通い始めて間もなく、著名なトレーナーであるエイドリアン・デイビスが経験のあるファイターを連れてきて、スパーリングをさせた。

 そこから、一歩一歩上がってきたよ。フットボールも好きだったが、家族の助言もあり、ボクシングに集中することにした。自分の能力を最も発揮できそうだったからね」

 確かに8勝目を挙げた右ストレートは見応え十分だった。どこまで上っていけるだろうか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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