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アルゼンチン人コーチが語る「準決勝はブラジルよりもクロアチアの方が戦いやすい」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、アトレチコ・マルテ(エルサルバドル1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 2019年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、オランダを下し準決勝でクロアチアと対戦する祖国について語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 準々決勝は本当にハラハラしました。リオネル・メッシの絶妙なパスで、右のサイドバック、ナウエル・モリーナが先制。その後もメッシがPKを決め、2-0でリードしていたところまでは良かったです。逃げ切れるだろうなと思っていました。

写真:森田直樹/アフロスポーツ

 でも、後半33分にオランダが197cmのボウト・ベグホルストを投入してパワープレーを選択しましたね。オランダは本来のパスサッカーを捨てた訳ですが、彼の高さは脅威でした。

 案の定38分にベグホルストのヘディングで1点を返されました。それでも僕は、何とかなると信じていました……ロスタイムにセットプレーで再びベグホルストがゴールして2-2になった時は、正直どうなるかと思いました。同時に、あのプレーは敵ながらあっぱれでしたね。

写真:ロイター/アフロ

 結局、イエローカードが17枚、試合後にレッドカードが1枚と、荒れたゲームになりました。アルゼンチンの背番号5、レアンドロ・パレデスが勢い余ってボールをオランダベンチに蹴り込み、小競り合いが起きたシーンもありましたよね。

写真:ロイター/アフロ

 とはいえ、それがアルゼンチン人なんですよ。たとえレッドカードが出ても、闘志を前面に出すことで、チームに火が灯る。戦うんだという一体感が生まれる。

 そうやって延長戦を迎えた時、アルゼンチンは冷静さを取り戻していたでしょう。そして、PKで勝つことが出来ました。

 試合後もインタビューを受けていたメッシがベグホルストに「何、こっちを見ているんだ馬鹿野郎」と発言し、物議を醸していますが、お互いに罵声を浴びせ合っていたからこそです。<戦争>ですから、仕方ないと僕は思いますね。

写真:ロイター/アフロ

 次に対戦するクロアチアは、4年前のロシア・ワールドカップのグループステージで負けた相手です。0-3の完敗でした。ルカ・モドリッチは言うまでもなく素晴らしい選手。

 でも、延長120分を2戦続けてやっていて、疲れているでしょう。永遠のライバルであるブラジルよりも戦いやすいと思います。敗れはしましたが、ブラジルは強く、可能なら避けたかった。ネイマールは「最後のワールドカップだ」なんて言っていましたが、またやりたくなるでしょう。メッシもそうでしたよね。

 クロアチアはディフェンスが光りますが、きっと我々が勝ちますよ。楽しみにしていてください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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