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アルゼンチン人コーチが語る「ベスト8入り。メッシ最後のワールドカップ?!」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、アトレチコ・マルテ(エルサルバドル1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 2019年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、ベスト4を懸け、12月10日にオランダと対戦する祖国について語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 我がアルゼンチンは、オーストラリアを2-1で下してベスト8入りしましたが、終盤の失点は、いらなかったですね。流石に連戦の疲れがあるのかもしれません…。

 先日、ジーコの「言葉で集団を引っぱれないキャプテンはいらない」という発言がありましたが、メッシは口数は多くないけれど、プレーで、特に今回はゴールでチームを牽引しています。メキシコ戦に続いて、オーストラリア戦でも、圧巻のゴールを決めました。

写真:ロイター/アフロ

 アルゼンチンのFWは、このところ背番号9のフリアン・アルバレスが先発で、22番のラウタロ・マルティネスが控えに回っています。この2人は共にセンターフォワードですが、タイプが違うんです。

 アルバレスはハイプレスをして、ペナルティエリア外でポジションをとることが多い。マルティネスは、そんなにボールを追いかける訳じゃないけれど、プレッシャーが強く、頑強です。それで、ペナルティエリア内で仕事をします。

写真:ロイター/アフロ

 今は、ポーランド戦、オーストラリア戦と連続ゴールを挙げたアルバレスが、レギュラーを掴んだ感じですね。マルティネスは、ポジションを奪われたので焦っちゃってるように見えます。

 オーストラリア戦のメッシも「追加点を決めねば」と早目にシュート体勢に入って外したシーンがありました。代表として94ゴール。歴代ナンバーワンです。ワールドカップでの得点も9で、バティストゥータの10に迫ってきましたね。

 やっぱり、メッシがいるからここまで勝ち上がってきたと言っていいでしょう。精神的な支えになっていますよ。

写真:ロイター/アフロ

 ただ、ボランチの背番号7、ロドリゴ・デ・パウルの存在も欠かせません。アルゼンチン国内では、メッシの次のリーダーは彼だと語る人が多いです。ずっと試合に出続け、交代もしない。ケガもしない。彼の献身力は光ります。ディエゴ・シメオネ、ハビエル・マスチュラーノ、そして今はデ・パウル。ファイターであるボランチのバトンが続いているんですよ。

 力強いボランチで、相手の攻撃を止めていますが、オーストラリア戦の2点目も、デ・パウルの激しいプレッシングから生まれましたね。

写真:ロイター/アフロ

 GKのエミリアーノ・マルティネス、DFの19番、ニコラス・オタメンディ、ロドリゴ・デ・パウル、そしてリオネル・メッシの4人は今のところフル出場しています。フィールド選手の3人は、どこかで休むことも必要じゃないかな。

写真:ロイター/アフロ

 次の相手、オランダはオーストラリアと同じくらい高さのあるチームです。加えて、技術もある。FWにもスピードがあって、得点能力がある。両サイドバックが果敢にオーバーラップしてクロスを上げてきます。そのセンターリングはハイクオリティーです。アメリカ代表も、サイドを抉られて立て続けに失点して敗れましたよね。

写真:ロイター/アフロ

 オランダ代表はパスサッカーで、メッシやパウロ・ディバラのようなドリブルをする選手が見当たりません。ただ、ロングキックは脅威ですね。それを出させないようにしないと。両サイドバックのクロスも上げさせちゃいけません。

ワールドカップ初Vを飾った1978年大会の決勝
ワールドカップ初Vを飾った1978年大会の決勝写真:アフロ

 かつて、僕たちアルゼンチンのサッカーは、ボールを持ったら、まずドリブルでした。股抜きを狙ったり、足裏を使ったり。でも、1974年のワールドカップで準優勝したオランダのトータルフットボール、長短のパス、ダイレクトパス、全員攻撃、全員守備に刺激され、勉強しました。当時のオランダサッカーで、一番ビックリしたのは30mや40mのシュートをバンバン狙っていた点です。本当に真似しましたね。

 その成果が1978年のワールドカップに出せたと思っています。決勝は、ヨハン・クライフのいないオランダでしたけれど。

写真:ロイター/アフロ

 メッシがいつまで代表のユニフォームを着るか分かりませが、彼の存在そのものがアルゼンチンのアドバンテージですよ。オランダ戦はいい試合になるでしょう。そして、必ず僕らが勝ちます!

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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