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アルゼンチン人コーチが語る「三笘薫よ、日本不動の大エースとなれ!」

林壮一ノンフィクションライター
(写真:REX/アフロ)

 実兄のピチは、あのディエゴ・マラドーナと共にワールドユース東京大会(1979年)で世界一となった右ウイング。息子は、アトレチコ・マルテ(エルサルバドル1部リーグ)所属のエスクデロ競飛王。

 自身は、元アルゼンチンユース代表&ビーチサッカーアルゼンチン代表であるセルヒオ・エスクデロ。

 2019年末から、川越市のフットサル場で自らスクールを始め、今日、埼玉県のジュニアユース、トリコロールFCのコーチとして指揮を執る彼が、クロアチアに敗れたサムライブルーについて語った。

撮影:筆者
撮影:筆者

 予選リーグ敗退と予想した人が多かったなかで、ドイツ、スペインに勝ってグループ1位で決勝トーナメントに進出した点は、実に素晴らしかったです。

 でも、ベスト8入りするには、やっぱり経験が足りなかった。延長に入ってからは、三笘薫の突破からのシュートくらいしかチャンスが無かったですね。120分で勝とうというイメージも無かったんじゃないですか。PK戦で勝負という気持ちがあったように見えました。

写真:ロイター/アフロ

 また、点を取る顔ぶれもちょっといなかったかな。グループステージで良い内容で勝てても、その先まで戦い抜き、勝ち上がる力がまだ日本には無かったということです。クロアチアの方が一枚上でした。ルカ・モドリッチのような経験豊富な選手が日本にはまだいませんから、差が出て当然です。

 モドリッチは何年レアル・マドリードで活躍していますか? 日本も強くなりましたが、そこまでのレベルの選手はいないでしょう。こういう舞台では、やっぱり埋めがたい差になってしまうんです。

写真:ロイター/アフロ

 前田大然はガンガン前からプレスを掛けましたが、浅野拓磨はそういうタイプじゃない。なかなかボールを収められなかった。ドイツ戦では良かったけれど、クロアチアを相手にシュートを決める可能性も感じられませんでした。とはいえ、他に点を取れるFWもいないし、日本の限界を感じざるを得ませんでした。

 クロアチア戦で良かったのは、三笘薫と伊東純也ですよ。堂安律もスタメンよりは、途中からの方がいい仕事をしますね。遠藤航も効いていました。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 サムライブルーはPK戦を見越した練習はやっていたんでしょうか? 南米の各チームは、普通にPK対策もします。で、PKのスペシャリストを作ります。そういう流れになったら、試合終了直前にGKを変えることもします。

 3人が外して、GKも1本も止めなかった事実は、反省しなきゃいけません。強化試合のエルサルバドル戦で、シュミット・ダニエルは止めましたよね。

 一方のクロアチアは、PK戦の準備をしっかりやっていたんじゃないかな。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 三笘はビッグクラブから声が掛かるかもしれませんね。今回の負けを糧に、4年後に向けて大きくなってほしい選手です。ピッチの中でのプレーも、精神面でも、不動のエースになってほしい。

 ベスト8入りする強豪国には、エースとかストライカーとか、必ず大黒柱の存在があるでしょう。我が代表のメッシとか、ブラジルのネイマールとか、フランスのエムバぺとか。

写真:ロイター/アフロ

 三笘は悔し涙にくれていましたが、ジーコもプラティニもマラドーナもバッジオも、ワールドカップでPKを失敗しています。今大会ではレヴァンドフスキもメッシも外しているんです。三笘は走れるところまで走って、疲れ切っていたのでしょう。この経験をバネに、哀しみを乗り越えて、前を向くしかありません。切り替えて、次のワールドカップに向けて頑張ってください。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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