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メッシの行動を疑問視したボクシング界の4階級制覇王者、カネロ・アルバレス

林壮一ノンフィクションライター
(写真:ロイター/アフロ)

 11月26日、メキシコを2-0で下したアルゼンチン代表。先制点を挙げたのはサッカー界のスーパースター、リオネル・メッシだった。

 試合直後、喜びに浸るアルゼンチン代表の控室での様子がSNSで拡散されている。メッシがチームメイトと共にチャントを歌う姿、そして腰掛けているシーンが映っている。その際、メキシコの選手と交換したと思しき緑のユニフォームを、メッシが床に置き、左足でちょんと蹴る様が映像で確認できる。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 4階級を制し、現WBA/WBC/IBF/WBO統一スーパーミドル級チャンピオンであるサウル・アルバレスも、この動画を目にした。そして、祖国メキシコのユニフォームを足蹴にされたことに黙っていられず、Twitterでこの一件を呟いた。

 「メッシが床を我々のユニフォーム、国旗で拭いた姿を見たか?」

 「俺がアルゼンチンを敬うように、あんたもメキシコに敬意を払うべきだ。俺はアルゼンチンについて、どうのこうの語る気は無い。メッシの酷い行為について言及したい」

引退したアグエロ
引退したアグエロ写真:ロイター/アフロ

 波紋を広げつつあるカネロの呟きに、元アルゼンチン代表のセルヒオ・アグエロも、SNSで反応した。

 「ミスター・カネロ。お前さんはサッカー選手のロッカールームのことは知らないだろう。汗まみれのユニフォームは、試合後、床に置いておくものなんだ。メッシはスパイクを脱ごうとして偶然蹴る形になっただけさ」

マルティーノ監督
マルティーノ監督写真:ロイター/アフロ

 アルゼンチンとメキシコとのゲームは、激しい肉弾戦だった。メキシコ代表監督のヘラルド・マルティーノはアルゼンチン人であり、パラグアイ代表監督、FCバルセロナの監督、アルゼンチン代表監督などのキャリアを誇り、2019年よりメキシコ代表チームの指揮を執っている。つまり、メッシを指導した経験もある人なのだ。

 また、サッカー選手が敵チームの選手とユニフォームを交換する行為は、健闘を称えてのことだ。所謂"足蹴にした"とは意味合いが異なるであろう。

 とはいえ、メキシカンであることの誇りを前面に出して戦い続けるカネロの気持ちも分かる……。統一スーパーミドル級王者も、食い入るようにワールドカップを見ているのであろう。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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