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ついに今夜ゴング! 「井上vs.ドネアII」を元WBAスーパーバンタム級チャンプが予想

林壮一ノンフィクションライター
撮影:山口 裕朗

 WBA/IBFバンタム級チャンピオン、井上尚弥vs.WBC同級王者、ノニト・ドネアIIが迫ってきた。今夜「さいたまスーパーアリーナ」でゴングが鳴る。

 WBA/WBC/IBF統一バンタム級タイトルマッチの会場である「さいたまスーパーアリーナ」から、南に3.2キロの地に建つ「Sugar Fit Boxing Gym」のオーナーは、元WBAスーパーバンタム級チャンプの下田昭文(37)だ。彼は2019年11月20日、JR北浦和駅前に(住所:さいたま市浦和区北浦和3-8ー2)このジムをオープンした。

撮影:筆者
撮影:筆者

 その下田に<井上vs.ドネアII>を占ってもらった。

 「第1戦、僕は井上選手が圧倒すると予想していました。でも、ファーストヒットがドネアの左ジャブだったんですよね。『この試合は、いつもの井上の試合とは違った展開になるかもしれない』と思いました。

 井上はフットワークが素晴らしいし、いつも鋭く、速い攻撃で相手を仕留めます。あの試合でも、初回にある程度の手応えを掴んだように感じました。でも、翌2ラウンドでドネアが左フックを当てましたよね。あんなに打たれる井上は初めて見ました。

撮影:筆者
撮影:筆者

 ドネアは上体を柔らかく使って、内側に内側に、ギリギリで相手のパンチを躱していきます。2013年4月13日のWBA/WBOスーパーバンタム級王座統一戦で、ギレルモ・リゴンドーに判定負けした試合、そして、2014年10月18日のWBAフェザー級タイトルマッチで6回KO負けを喰らったニコラス・ウォータース戦から多くを学んだんじゃないですかね。

 紙一重で相手の攻撃を躱し、いつも狙っている姿勢が感じられます。パンチをもらっても、上手くいなしますよね。自分は、あの2敗がドネアを大きく成長させたと思っています。西岡利晃さんと戦った時のドネアとは比較にならない程、強くなっていますよ。

2012年10月13日、西岡戦のドネア
2012年10月13日、西岡戦のドネア写真:ロイター/アフロ

 ドネアのような出来上がった選手が、世界戦レベルで躓くと、天から地に落ちてそのまま終わってしまうケースが多いです。それが一般的ですよね。でもドネアは、負けを力に変えて復活したんです。なかなか無いことですよ。マニー・パッキャオだって黒星を喫した後、復調するのに時間が掛りましたものね。

 ドネアは井上選手に負けて、直ぐ次で自分の良さを出してタイトルを獲った。ちょっとそんな例は、見当たりません。世界レベルまでいって、負けて成長するって本当に難しい事です。ドネアにはそういう不気味な怖さがあります。

撮影:筆者 ジムの会員さんたちと。
撮影:筆者 ジムの会員さんたちと。

 とはいえ、自分はやはり井上が有利だと思いますね。若さを武器に、ドネア以上に仕上げてリングに上がるんじゃないでしょうか。

 ドネアはプレッシャーが強いので、井上の懐に入ったら調子付きます。特に今回は物凄く強気ですから、適応力の高さを示しそうですね。"井上の一発をもらわずに倒す"という意識じゃないかな。

 井上はスピードもあるし、切れ味が鋭いので、両者がカウンターを狙った距離の取り合いになりそうですね。一瞬一瞬、ハイレベルな技術を見せ合うでしょう。アウトボクシングに徹すれば、捌けるようにも思えます。柔のドネア、剛の井上といった印象です。

 井上がボディーを効かせて、中盤以降にKOするんじゃないかなと……期待を込めて予想します。井上が勝利するカギは、ボディーブローになるように感じますね。井上は今でも十分凄い選手ですが、世界のスーパースターとなって、日本のボクシング界をもっともっと盛り上げてもらいたいです」

 最後に下田は微笑んだ。

 「ウチのジムは、さいたまスーパーアリーナから2駅しか離れていません。お時間に余裕のある方は、是非、お立ち寄りください!」

 今夜、さいたま市は熱い熱い夜となりそうだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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