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14戦全勝10KOのスーパーウエルター級

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Kate Frese/HBSE

 身長175センチ、リーチ178センチとスーパーウエルター級では決して恵まれた体躯ではないが、デビュー以来14戦全勝10KOと快進撃を続けるジョエイ・スペンサーが注目を集めている。ミシガン州出身のスペンサーは、先日も5回KO勝ちを飾って、存在感を示した。

Photo:Kate Frese/HBSE
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 構えはフリッカーだが、ジャブを多用するわけではない。同じミシガン州出身のフリッカーの名手、トーマス・"ヒットマン"・ハーンズの戦い方とはまるで違う。クロスレンジでの打ち合いを好み、力を込めた左フック、ボディアッパーを振るっていく。相手をなぎ倒すようなスタイルの選手だ。

Photo:Kate Frese/HBSE
Photo:Kate Frese/HBSE

 昨年のクリスマスに行われたリンバース・ポンセ戦も、第5ラウンドに左フックをヒットしてダメージを与えると、透かさず右ストレート、左フック、右ショートフックの連打で、同1分24秒でKO勝ちを収めた。

Photo:Kate Frese/HBSE
Photo:Kate Frese/HBSE

 勢いのあるスペンサーは言った。

 「ポンセも作戦を立てていたようだし、勝ちにきたけれど、自分の方が鋭い動きが出来たね。今回の勝利は、これまでの経験が糧となった。やってきた練習通りのパンチでフィニッシュした」

Photo:Kate Frese/HBSE
Photo:Kate Frese/HBSE

 19歳で結婚し、今年、父親になる予定のスペンサーはまだ21歳。アマチュア時代に9度ナショナルチャンピオンとなっている。世界王座獲得を目指しながら、目下ボクシングだけで稼ぐ。SNSで若いファンから支持され、彼らを相手に販売中のオリジナルグッズも人気だという。

 アメリカ社会において、この階級の"ホワイトホープ"は話題になりやすい。

 スーパーウエルター級といえば、WBA/WBC/IBF王者のジャーメル・チャーロと、WBOチャンピオンのブライアン・カルロス・カスターノのリターンマッチの動向が気になる。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20210720-00248587

 両者に絡むためにも、スペンサーはもう2年くらいキャリアを積む必要がありそうだ。果たして、どこまで上っていけるだろうか。ミシガン州に、ハーンズ以来のボクシング熱を呼び起こすことが出来るか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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