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元WBCスーパーミドル級王者が故郷のリングで7回TKO勝ち

林壮一ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 24戦全勝21KOながら、体重オーバーでWBCスーパーミドル級タイトルを失った過去を持つデビッド・ベナビデスが6年ぶりに故郷、アリゾナ州フィニックスのリングに登場した。

 本来、ベナビデスは元IBF王者のホセ・ウスカテギと対戦する予定だったが、ウスカテギのステロイド使用が判明し、16勝(6KO)2敗1分けのケイロン・デイビスが代役に抜擢された。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 地元出身のスターを負けさせるわけにはいかない、というプロモーターの心理も分かるが、ベナビデスとデイビスは、とても同じ階級の選手には見えなかった。

 計量こそベナビデスが169パウンド、デイビスが167.45パウンドでパスしたが、元世界チャンプは身長、リーチ共に6センチのアドバンテージがあり、両者がリングに上がるとその差はもっと大きく感じられた。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 デイビスも気力で喰らい付くが、終始ベナビデスの距離でのファイトが展開された。

 元WBC王者は258の強打を放ち、137発をヒットした。4ラウンド終了以降、デイビスのセコンド陣はダメージを気遣っていたが、7回にタオルを投げ、試合を終了させた。

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 試合後、勝者は言った。

 「タフな試合になったが、終わりまでコンディション良く戦えた。デイビスがグロッキーなことは感じていた。俺にワンパンチでKOする力は無いが、全てのラウンドでポイントを取っていたと思う。そういう練習をしていたんだ。

 素晴らしい勝利だった。デイビスと彼のスタッフの勇気、戦う姿勢を心から称える。実にハートのある男だよ。だからこそ、ファンが喜ぶ試合になったよね」

(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions
(C)Ryan Hafey / Premier Boxing Champions

 無傷の25連勝(22KO)となり、WBC指名挑戦権を持つベナビデスは、当然のことながらサウル・”カネロ”・アルバレス戦が話題となる。

 「誰もが俺とカネロのファイトを見たいだろうよ。カネロが俺をどう評価していても、気にならない。でも、指名挑戦者であることは事実だ。俺との試合を実現させるべきだね。ま、ジャーモール・チャーロでも誰でもチャンスがあるなら俺は戦うよ」

 ベナビデスにとっては会心の勝利であったようだが、彼がカネロの牙城を崩すのは難しそうだ。それよりも、咬ませ犬としてリングに上がったデイビスの姿が痛々しく、何ともやり切れない気持ちにさせられた。

ノンフィクションライター/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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