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咬ませ犬の牙

林壮一ノンフィクションライター
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 プエルトリカンであるキャメロン・リベラ(29)が自身20戦目として、現地時間19日にリングに上がる。目下、戦績は9勝(6KO)6敗4分け。

 彼を知ったのは、2021年4月20日だった。リベラは、ロスアンジェルス、シュライン・エキスポセンターで組まれたスーパーミドル級6回戦に出場した。

 身長178センチのリベラは、自分よりも10センチ背の高いビューレイ・ブロックスの懐に入るべく、前進した。

 最終ラウンド、ブロックスはローブローで減点を告げられる。これによって、リベラは57-56、57-56、58-55と3-0の判定勝ちを収めた。

 明確な判定だったが、ブロックス側が再戦を要求。プロモーターもFOX TVもブロックスを後押しし、4カ月後、同じ6回戦でリターンマッチが決まる。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 ブロックスがリベンジに拘る一方、リベラのモチベーションは高くなかった。一度下した相手であっても、戦い方を熟知している訳ではない。

 燃え切らないまま6ラウンドが過ぎ、リベラの58-56、55-59、57-57という三者三様のドローに終わった。

Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions
Photo:Sean Michael Ham/TGB Promotions

 もし、リベラが力のあるプロモーターと契約し大事に育てられていたら、ブロックスとの第2戦は行われなかったであろう。とはいえ、6敗しているプエルトリカンが本土で優遇されることもない。言ってしまえば、咬ませ犬の臭いがした。

 この選手は、今後どんなリング生活を送るのだろうか……と感じていた矢先に決まった次戦である。相手は16勝(6KO)8敗のクリストファー・ブロッカー(30)。

 19日、リベラは何を見せるか? ホセ・トーレス、ヘクター・カマチョ、フェリックス・トリニダードらが見せ付けたプエルトリカンならではの飢えとハートの強さを、リングで表現してもらいたい。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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