Yahoo!ニュース

元WBCスーパーミドル級チャンプ、元WBAスーパーライト級暫定王者の兄弟が揃ってファイト

林壮一ノンフィクションライター
父を真ん中に向かって左が弟 Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 11月13日に試合を控える元WBCスーパーミドル級タイトルのデビッド・ベナビデス(24)と、その実兄の元WBAスーパーライト級暫定王者、ホセ・ベナビデス(29)が先日、練習を公開した。

 この兄弟は、共に体重オーバーで自身の価値を下げた経験があるが、今回の試合は故郷、アリゾナ州フィニックスで催されるため、地元の温かい声援を武器に出来そうだ。

左が前座に出場する兄、右がメインイベンターの弟 Photo:Esther Lin/SHOWTIME
左が前座に出場する兄、右がメインイベンターの弟 Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 2人の父であり、トレーナーも務めるホセ・ベナビデス・シニアは言う。

 「今、デビッドは非常にいい状態にある。毎試合、強さと円熟味が増している。11月13日は、目覚ましい進歩を御覧頂けるだろう。フィニックスで2人の息子をトレーニングし、かつ大試合の舞台に上がれるなんて、ちょっと言葉では表現できないね。夢が実現したなぁと、ワクワクしている。

 私自身、トレーナーとして選手と一緒に成長しなければならない。彼らが幼かった頃から、その思考を止めたことはない。可能な限り連日、学習し、出来うる全てのサポートをしてきた。

 ホセが銃撃事件の被害者となってから、ここまで回復したことを心から誇りに思っている。今、ホセは本当にハードに練習している。彼はメンタルもフィジカルも強い。私もけっして息子への指導を諦めはしない。私たちは地元のファンに喜んで頂けるよう、全てを捧げているところだ」

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 13日にメインイベンターを務める弟のデビッドも語った。

 「今回のキャンプは、全て順調に進んでいる。スパーリングは一日に12~13ラウンドこなし、かつ6~7マイル走り込んでいる。非常に激しいメニューを消化中だよ。試合当日が楽しみでならない。

 対戦相手のホセ・ウスカテギはタフだし、元IBFスーパーミドル級チャンプだから、リスペクトしている。死に物狂いで勝ちにくるだろうな。彼に勝利すれば、より大きなステージに上がれるだろう。今はウスカテギに集中しているけれど、近い将来、カネロvs.カレブ・プラント戦の勝者への挑戦が具体化すると信じている。俺にとって、13日はビッグマッチに向けてのテストでもあるんだ。

 俺の方がウスカテギよりもベターなファイターだ。技術でもパワーでもスピードでも優っている。そして、より飢えている。KO勝ちして、最高の夜にしたいね」

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 「カネロvs.プラント戦は、両者が多くのモノを見せるだろう。それだけに、彼らは大きなプレッシャーを感じている筈だ。現WBCミドル級王者のジャーモール・チャーロも加えたトップファイターたちの戦いに、俺も絡んでいきたい。

 俺とカネロの試合が決まれば、スーパーミドル級のメガ・ファイトになるよ。でも今は、目の前の試合のことだけを考えないとね。

 プロになってもう8年が過ぎた。キャリア最大の試合がやりたい!と思いながらずっと戦ってきた。やっと故郷で、そんなファイトが決まった。これまでにない、最高の俺をお見せする。そして、スーパーミドル級最強が俺であることを証明してみせるよ。

 フィニックスの多くの住民が、この試合に心を躍らせている。故郷のリングに上がるのは、俺も本当に嬉しい。タイミングもパーフェクトだし、キャリア最大の一戦と呼んでいい。まぁ、期待してくれよ」

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 デビッドの前座に出場する兄、ホセも話した。

 「弟のアンダーカードでカムバック、しかも故郷での試合とはすばらしい機会だね。色んな人が自分を支えてくれた。ファンに喜びを届けたい。彼らにリングに立つ姿を見せられることに、幸福を覚える」

 目下27勝(18KO)1敗のホセは、2016年8月に愛犬を散歩中に銃弾を浴び、選手生命の危機に立たされた。治療とリハビリを続け、2018年2月にカムバック。復帰3戦目の2018年10月13日に、テレンス・クロフォードの持つWBOウェルター級タイトルに挑戦するが最終ラウンドTKOで敗れた。

 「俺には休養が必要だった。心を落ち着かせる時間を要した。その後、戦い続けたいという気持ちが湧き上がり、激しいトレーニングをこなした。今は、スーパーウエルター級でトップに立ちたいと思っている。

 なかなかカムバックできなかったが、その分、しっかりと練習した。その時間が俺を強くしたよ。ずっと飢えていた。13日、俺は自分の全てを懸けて野獣になる。楽しみにしてくれ」

Photo:Esther Lin/SHOWTIME
Photo:Esther Lin/SHOWTIME

 「我がファミリーは素敵なチームだ。何もないところから出発し、毎日、ボクシングを学習しながらここまで辿り着いた。その過程で、家族の絆が非常に強固なものとなったんだ。

 今回の相手、フランシスコ・エマニュエル・トーレスについては知識がない。正直、まったく気にしていない。どんな相手でも、自分の仕事をするだけだ。自分の試合が終わり次第、弟のサポートに回るよ。自分が戦えるってことを示さないとな」

 11月13日、ベナビデス家はいかなる戦いを見せるか。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

林壮一の最近の記事