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今季のNBAでは5名の黒人新監督が誕生。それぞれの活躍を期待!

林壮一ノンフィクションライター
1978年10月6日生まれの43歳(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 2021年7月21日にオーランド・マジックの監督に就任したジャマール・モズリー(43)。東地区15チーム中14位と苦しんでいるが、彼が監督として采配を振るう姿を目にすると、否が応でも時代の移り変わりを感じる。

 モズリーは現役時代、メキシコ、スペイン、フィンランド、韓国でプロ選手としてプレーした。2005年よりコーチングスタッフとなり、カーメロ・アンソニーが在籍していたデンバー・ナゲッツ、"KING"レブロン・ジェームズが去った後のクリーブランド・キャバリアーズ、ダーク・ノヴィツキーが柱だったダラス・マーベリックスでアシスタントコーチを経験。

 16年の下積みを経験し、満を持して指揮を執ることとなった。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 モズリーはコロラド大学在籍時に、母親から「指導者となった時の為に、リーダーシップが何であるかを学びなさい」と説かれた。マジックの新監督は、果たして自分がそのような仕事に就けるのかと疑問覚えながらも、献身的にコーチング論を身に付ける。

 その努力が、彼をNBA監督にまで持って行った。

写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 モズリーだけではない。NBAでは今シーズンから、彼を含めて5名の黒人監督が誕生している。ポートランド・トレイルブレイザーズのチャウンシー・ビラップス、ニューオーリンズ・ペリカンズのウィリー・グリーン、ボストン・セルティックスのイーメイ・ユドーカ、そして八村塁が所属するワシントン・ウィザーズのウェス・アンセルド・ジュニア。

ペリカンズのウィリー・グリーン
ペリカンズのウィリー・グリーン写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 グリーンは『ニューヨーク・タイムズ』の取材に応じ、「15年前だったら、我々は今の立場にいられなかった」と語った。

 NBAは世界最高のバスケットボールを披露する傍ら、Black Lives Matterにも積極的に参加し、社会への提言を続ける。

 トップ・バスケットボーラーが自身のルーツを大事にし、社会的弱者を慮る姿があるからこそ、リーグとして発展してきたのだ。

ブレイザーズのビラップス
ブレイザーズのビラップス写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ

 現在、30チーム中13名の黒人監督が指揮を執るNBA。プラス2名も所謂カラードである。つまり、半数が非白人監督で運営される時代となった。

 NBAプレイヤーの70パーセント以上が黒人選手であるのに対し、監督の座に就ける有色人種がついに半数となった。私の周囲では「遅過ぎた」と主張する人もいるが、まずは変化を喜びたい。

 第46代アメリカ合衆国大統領が誕生してから、初めての開幕となった今シーズン、新たな息吹を感じさせてくれそうだ。

ノンフィクションライター

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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